カケラとカケラ。映画「世界にひとつのプレイブック」 | 忍之閻魔帳

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そろそろ発表の近づいてきたオスカーでは
予想もしない作品がショーレースを騒がせることがある。
巨額の製作費を投じた大作・感動作が
それぞれのプライドを賭けてオスカー像を狙う中、
舞台袖でにっこり笑っているような、そんな作品。
近年のノミネート作品では

2004年「サイドウェイ」
2006年「リトル・ミス・サンシャイン」
2010年「キッズ・オールライト」

この辺りが該当するだろうか。
そして、今年のオスカーで台風の目となっているのが
22日より公開される「世界にひとつのプレイブック」である。
なんといっても一番の話題は、オスカーの中でも特に競争率の高い
主要8部門全てにノミネートされていることだ。

・作品賞
・監督賞(デヴィッド・O・ラッセル)
・主演男優賞(ブラッドリー・クーパー)
・主演女優賞(ジェニファー・ローレンス)
・助演男優賞(ロバート・デ・ニーロ)
・助演女優賞(ジャッキー・ウィーヴァー)
・脚色賞(デヴィッド・O・ラッセル)
・編集賞(クリスピン・ストラザーズ/ジェイ・キャシディ)

既に発表を終えているLA批評家協会賞、ゴールデン・グローブ賞で
主演女優賞を獲得したジェニファー・ローレンスは
オスカーでも「ゼロ・ダーク・サーティ」のジェシカ・チャステインと並ぶ
最有力候補とされている。

そんな本作は、欠けた部分を補い合って生きる人々を描いたハートフルなドラマ。
監督は「ザ・ファイター」でオスカーにノミネートされたデヴィッド・O・ラッセル。
主演は「ハングオーバー!!」シリーズのブラッドリー・クーパーと
「ハンガー・ゲーム」「ボディハント」のジェニファー・ローレンス。
共演はロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィーヴァー、
「ラッシュアワー3」以来5年振りのスクリーン復帰となるクリス・タッカーなど。
音楽が素晴らしいと思ったら、なんとダニー・エルフマンであった。納得。
ダンス大会のドレスが特に目を引く衣装は「アーティスト」のマーク・ブリッジス。



主人公の二人はどちらも双極性障害を抱えている。
パット(ブラッドリー・クーパー)は妻の不貞をきっかけに
感情の抑制が利かなくなり、精神病院へ入院させられている。
映画ではパットが退院するところから始まるのだが
復縁どころか妻からは接近禁止令が出されており
父と母の暮らす実家に戻って、まずは社会復帰を目指すことに。
片やティファニー(ジェニファー・ローレンス)はというと
こちらも不慮の事故で夫を亡くして以来、哀しみと自責の念で心を病んでしまい
勤めている会社の男性社員全員と関係を持ってしまうなど
常に不安定な状態で生活を送っている。
そんな二人が共通の友人を介して出会い、目標(ダンス大会出場)を共有することで
少しずつ距離を縮めてゆく。

発表済みの放送映画批評家協会賞では、本作はコメディ部門に属していた。
(作品賞、アンサンブル演技賞、主演男優賞、主演女優賞の4部門制覇)
と言っても、双極性障害を抱えたキャラクターを笑い者にしているわけではなく
「時に持て余してしまうが、それ以上に愛すべき人物」として描かれている。
夜中に騒ぎ立てるパットや浮き沈みの激しいティファニーの言動が
不思議なほど不愉快に見えないのは、二人を見守る周囲の人々の視線が
とてつもなく温かいからだ。
「また始まったよ」と思いながらも、絶対にその手を離さない。
家族も友人も警察も、自らを制御できずに苦しんでいる彼等のことを
完全には無理でも、少しでも理解しようと努めてくれている。
こんな恵まれた環境は滅多にないのだろうが、パットとティファニーには
周囲が努力してくれるだけの魅力が備わっており
それが登場人物だけでなく観客にも伝わることで、
この映画はようやく安心して笑うことが出来るのである。
賞レースではジェニファー・ローレンスばかりが目立っているが
ブラッドリー・クーパーの目線の泳ぎ方や躁状態の芝居は相当に勉強したはず。
私としては、本作の二人がオスカーの主演をW受賞しても全く異論はない。

体が健康でも、心が不健康でも、人は皆どこかが足りない。
最初から足りないのか、何かきっかけがあって欠けたのか
人によって事情は違えど、傷ついた人間にも誰かの傷を癒やす力はある。
「誰かに助けて欲しい」は「誰かを助けたい」と実は似ていて
誰かを助けることが、最終的に自分自身を癒すことにも繋がるのかも知れない。
失った心のカケラとカケラを埋め合った時、人はまた恋をする。

取り立てて大きな事件が起こるでもなし、オチの付け方もベタそのものではあるが
こんな作品に光が当たるのならば、作品賞の枠を拡大したことに意味はあったな。

映画「世界にひとつのプレイブック」は22日より公開。




発売中■CD:「Silver Linings Playbook」
発売中■BOOK:「世界にひとつのプレイブック 集英社文庫」

映画のサウンドトラックCDと原作本。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:世界にひとつのプレイブック
    原題:SILVER LININGS PLAYBOOK
    配給:ギャガ
   公開日:2013年2月22日
    監督:デヴィッド・O・ラッセル
   出演者:ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、他
 公式サイト:http://playbook.gaga.ne.jp
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



【関連作として過去の紹介記事を再掲「ザ・ファイター」】


発売中■Blu-ray:「ザ・ファイター コレクターズ・エディション」

オスカーにノミネートされたデヴィッド・O・ラッセルの前作。
主演のマーク・ウォールバーグこそ無冠だったものの
クリスチャン・ベイルが助演男優賞、メリッサ・レオが助演女優賞をWで獲得し、
同じくエイミー・アダムスも助演にノミネートされるなど魅力的な役者が揃っている。

貧乏のくせに子だくさんで、ろくな稼ぎ手がいない家族。
そこに生まれた大スターの兄ディッキー(クリスチャン・ベイル)は
栄光を手にしたのも束の間、薬物に手を出してあっという間の転落人生まっしぐら。
残された弟ミッキー(マーク・ウォールバーグ)は、
マネージャーの母と6人の姉妹達を養うために
金額優先で組まれた試合に出ては、黒星が増えていく生活を送っている。
そこに現れたひとりの女性(エイミー・アダムス)が家族の元を離れることを進言し、
事態は上手く回り始めたかのように見えたが、稼ぎ頭を泥棒猫に盗られたと思った母親達が
素直に引き下がるわけもなく・・・というお話。

貧乏、ドラッグ、転落、復活という構成はこの手の映画の定番なので
ストーリー自体は「またか」というものなのだが、
あぶなっかしいけれどどこか憎み切れない兄を演じたクリスチャン・ベイルや、
拝金主義のステージママを演じたメリッサ・レオのインパクトが凄まじく、
役者の力でグイグイと観客を引っ張っていく。

恋人のシャーリーン(エイミー・アダムス)は
トラブルメーカーの兄や稼ぎにぶら下がって寄生するしか能のない母親や姉妹達と
縁を切るべきだと主張するが、ミッキーは頭の半分で理解しながらも
残り半分では「やはり家族が必要だ」という思いを捨て切れない。
傍から見ればマイナスにしか見えない関係が
当人にとっては命綱になっていたりすることは確かにあって、
この映画は、家族というコミュニティが持つ微妙なニュアンスを良く描いている。
本日紹介した「世界にひとつのプレイブック」は家族が主人公を見捨てない物語。
こちらは、主人公が家族を見捨てない物語と言える。

私的には、これまで清楚なイメージの強かったエイミー・アダムスが
メリッサ・レオを向こうに回して啖呵をきったり、
髪の毛を掴み合っての大乱闘を繰り広げるのがとても新鮮だった。
同時に少し寂しくなった。ファンだったのに、嗚呼。



▼新作Blu-ray/DVD情報


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05月24日発売■Blu-ray:「悪の教典 スタンダード・エディション」
05月24日発売■DVD:「悪の教典 エクセレント・エディション」
05月24日発売■DVD:「悪の教典 スタンダード・エディション」