映画「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」 | 忍之閻魔帳

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ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない
(C) 2009 ブラック会社限界対策委員会

いきなりだが「ブラック会社」度チェック。
以下の質問のうち、あなたの勤める会社がいくつ該当するか考えてみて欲しい。

□就業規則があるにも関わらず、残業が当たり前。
□何日も徹夜が続くことがある。
□社内に情緒不安定な社員がいる。
□必要経費が一切認められない。
□同僚のスキルが異常なほど低い。
□ノルマがきつい。無理なスケジュールが当たり前になっている。
□給料が安い上に、残業代が出ない。
□会社の飲み会が荒れる。
□昼食をとれない日が多い。
□上司の命令は絶対。部下が自分の意見をまったく言えない。
□学歴不問、未経験者OK、フリーター歓迎で求人広告を出している。
□従業員の出入りが激しい。
□休日返上は当たり前、有給休暇が取りにくい雰囲気がある。
□上層部が仕事に無関心で、能天気なほど明るい。
□採用されてからの試用期間が異常に長い。(通常は3ヶ月程度)
□社内で不純な異性交遊が多い。(不倫など)
□週1回で「こんな会社、辞めてやる」と思う。
□自分の会社を他人に薦められない。

では回答。

■0個・・・ブラック度0%
ホワイトです。今の職場を大切にして、仕事に励みましょう。

■1-3個・・・ブラック度20%
ほぼホワイトです。まだ健全なので、安心して働きましょう。

■4-9個・・・ブラック度40%
グレーです。黒くならないように、会社の動向に注意。

■10-13個・・・ブラック度60%
黒に近いグレーです。仕事内容が収入に満足してればガマン。

■14-16個・・・ブラック度80%
ほぼ黒いです。現実的に転職を考え始めましょう。

■17-18個・・・ブラック度100%
真っ黒です!危険なので、一刻も早い退職をオススメします。


今回は、ブラック度100%の会社に就職してしまった主人公が
過酷な状況下で必死に明るい未来を目指して奮闘するワーキング・エンターテイメント
「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」を紹介。



高校を中退してからの8年間、職にも就かず、
両親の収入を頼りにニート生活を続けてきた大根田真男(通称:マ男)。
「私が死んだらどうすんの」と将来を心配する母親の不安は、まもなく的中した。
母親が事故死してしまったのだ。
しかも、働く気持ちが芽生え始めていた真男のスーツを買いに出掛けた帰りに。
母の願いを叶えるべく。何社も面接を受けてついに合格したのは
大企業の下請けを主な仕事とするIT企業「黒井システム株式会社」。
新たな職場と仕事に意欲を燃やす真男だったが、
そこは、魑魅魍魎が蠢くブラック会社だった。

原作は、2ちゃんねる発のエピソードを書籍化した同名本。
主演は「ホームレス中学生」の小池徹平。
黒井株式会社の先輩達には、「ドロップ」の品川祐、
「山のあなた 徳市の恋」「カフーを待ちわびて」のマイコ、
「悪夢のエレベーター」の池田鉄洋、「キラー・ヴァージンロード」の田中圭、
「ハッピーフライト」の田辺誠一など。
脚本は「ROOKIES 卒業」のいずみ吉紘、監督は「キサラギ」「守護天使」の佐藤祐市。


元のスレッドも原作も未読なので、どの程度原作に忠実なのかは分からないのだが
「キサラギ」「守護天使」に続く本作で、佐藤監督が好む題材というのは良く分かった。
「キサラギ」はアイドルオタク達、「守護天使」はモテない中年男、
そして本作では高校中退の引きこもりニート。
全ての作品に共通しているのは、社会から少しだけ弾かれてしまった登場人物達が
現実と向き合い、懸命にもがき、時に友人達の力を借りて一歩抜け出すまでを描いている。
古い考えの大人達からは「この軟弱者」で切り捨てられてしまいそうな若者達に
エールを送り続けることが、佐藤監督の映画作りなのかも知れない。

作りとしては「守護天使」よりも「キサラギ」に近く
黒井株式会社という限定された空間で展開するワンシチュエーションドラマである。
キャラの立て方や会話の運び方がいかにも舞台劇といった感じで
上手くいけば「キサラギ」の再来もあったと思うのだが
残念ながら本作は「キサラギ」ほどの爽快感が無い。
これは、序盤の「溜め」と後半の「爆発」の配分が、圧倒的に「溜め」に傾いていること、
「爆発」の威力が思いの外低いことが原因ではないか。

全く関連性のない映画を引き合いに出してしまうと
例えば「ドッグヴィル」などの場合、ニコール・キッドマンは
虐げられて、虐げられて、虐げられた挙げ句にラストで大爆発を起こす。
全体の9割を占める「溜め」が、ラストの数分で全てひっくり返されてしまう。
ギリギリまでしなった弓から、ビュンと音をたてて勢い良く矢が放たれるような快感。
本作にはそれが欠けている。

これは、小池徹平というタレントが持つ好感度とも密接な関係があるように思う。
(彼の演技力の話ではない。むしろ演技はそうとう頑張っている)
彼の持つ子鹿のようなオーラが、彼をいじめ抜く先輩達を皆問答無用で悪役にしてしまい、
愛嬌の付け入る隙を与えないのだ。
また、僅かな隙を見つけて滑り込ませるほどの技術を、
品川を始めとする黒井株式会社の面々も持っておらず、
笑いとイライラのバランスが崩れてしまった。
例えばお調子者の井出を鈴木浩介(「ライアーゲーム」の福永役)が
お局様の瀬古をふせえり(三木聡監督作品の常連)が演じていたりすれば
不快指数を減らして笑いに転嫁することもきっと出来たはず。
先輩達が撒き散らす不快感を中和するには、田辺誠一ひとりでは荷が重過ぎる。
いっそ主人公が相方のウエンツなら、どれだけいじめられても大丈夫そうとも思うが
ウエンツにはこんな繊細な役は無理であろうし、難しいところである。

同じく2ちゃんねる発で映画化された「電車男」との大きな違いは
「電車男」の主人公を助けるのが、顔も知らないネット住人達であるのに対し、
本作で主人公をサポートするのは、彼の身近にいる人間だということ。
もちろん、「電車男」と同じようにスレッドを立てて
相談したり愚痴ったりもしているが、レスをつけた人達を顔の見える善人として実体化せず
ネットの向こうで愚痴を聞いてくれる誰か、という立場から出て来ない。
道を切り拓くのは、結局自分の力だけが頼りなのだという強さが真男にはある。

怠けた代償はデカいけれど、きちんと払い終えることが出来れば
いつでも人生は動き始める。遅過ぎるということはない。
小さくて非力な真男が見せるラストの笑顔は、
少し饒舌過ぎる台詞よりも雄弁にそこのこと物語っている。

なお、本作の公式ブログは何とアメブロ内で運営中
興味のある方は是非こちらもチェックを。



▼関連作・関連商品

2010年02月03日発売■DVD:「守護天使」
2008年01月09日発売■DVD:「キサラギ スタンダード・エディション」

【紹介記事】ちょっと太めのウルトラマン。映画「守護天使」
【紹介記事】密室劇の新たなる達人現る。映画「キサラギ」

佐藤祐市監督の2作。
「守護天使」は来年2月にDVDの発売が決定。
「キサラギの」の冠が取れるまで、まだしばらく苦労すると思う。

09月29日発売■BOOK:「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」
11月11日発売■CD:「ストロベリー / TOKYO MOOD PUNKS」
11月18日発売■CD:「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない OST」