
(C)2009「釣りキチ三平」製作委員会
まだまだ続く実写化ブーム。
次なる作品は、70~80年代にかけて大人気を博した矢口高雄の「釣りキチ三平」。
何を隠そう、私もこの作品を読んで、ほんの一瞬だけ釣りにハマったクチだ。
●YouTube:「釣りキチ三平 予告編」
田舎の村で祖父・一平と穏やかな生活をおくっている少年・三平。
釣り好きが原因で父親を亡くした三平だったが
一平の指導のおかげで今や天才的な釣り名人としての頭角を現し始めていた。
ある日、夏休みに入り、ますます釣り三昧の日々を過ごす三平のもとに
東京から姉・愛子がやって来た。
まともな教育も受けず、田舎で釣りばかりしていては
人生を踏み誤ると心配した愛子は、三平を東京へ連れて行くために会いに来たらしい。
頑に拒む三平だったが、一平は、「夜泣き谷の怪物を釣り上げることが出来れば
何も言わず東京へ戻れ、出来なかった場合は好きにしろ」と賭けを申し出る。
果たして三平は、1メートル以上もあるという岩魚を釣り上げることが
出来るのだろうか。
主演は「花田少年史」「ALWAYS 三丁目の夕日」の須賀健太。
共演には「イエスタデイズ」の塚本高史、「252 生存者あり」の香椎由宇、
「ちりとてちん」の渡瀬恒彦など。
監督は「おくりびと」でオスカーを受賞した滝田洋二郎。
原作を手元に置いているわけではないので詳しくは知らないのだが
本作の登場人物で最も大きなウエイトを占めているのは、
須賀健太の演じる三平ではなく、香椎由宇の演じる三平の姉・愛子である。
原作では魚紳にプロポーズされる役所の愛子が本作では三平の姉として登場し、
三平と最も近しい間柄であったユリ(ユリッペ)は、
お飾り程度の端役として、数シーンだけ登場する冷遇ぶりとなっている。
ストーリーは、三平の父・平が亡くなる前に話していた伝説の大岩魚
「夜泣谷の怪物」を釣り上げるまでと、三平の姉・愛子の自分探しの旅の二層構造。
原作のアレンジとしては割と良くある手法なのだが、
本作の場合、二層がバラバラに独立したまま進行するのが気になった。
しかも、本来はサブであるはずの愛子のストーリーが前面に押し出され、
肝心の夜泣き谷に到着しても、怪物の存在はそっちのけで
登場人物全員がそれぞれに自分語りを始めてしまう始末。
後半の荒唐無稽な釣りのシーンと、愛子の自分探しの旅とが
一本の道に集約することはなく、まるで別々の映画
(例:「かもめ食堂」と「ミスター味っ子」)をザッピングしながら
観ているような気分になってしまった。
映画全体のバランスを破壊してまで扱いを大きくした愛子のストーリーも、
都会の生活に疲れた女性がふらりと田舎にやって来て、
最初はその不便さに文句を言いつつも、美味い食べ物や素朴な人柄、
大自然の景観に触れて感化されてしまうという非常にベタなもの。
こういう題材自体は否定しないし、需要もあるとは思うのだが
2時間程度にまとめなければならない映画に盛り込む必要があったのかは疑問だ。
最大の見所である「夜泣き谷の怪物」との対決シーンは
試写室に苦笑が巻き起こるほどの無茶苦茶ぶり。
技術力が無いのか、単に手を抜いたのか、ウリのひとつとなっていた
白組のVFXが驚くほどクオリティが低く、偽物丸出しの怪魚と闘う三平の姿は
まるで「まんが日本昔ばなし」のオープニングのよう。
釣り糸の処理は「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」クラスの出来なので
序盤の釣り大会などはなかなか華麗な竿さばきを楽しめたのだが、
こと魚(水中))に関してはどのシーンもダメ過ぎである。
とても「K-20 怪人二十面相伝」と同じ会社とは思えない。
「釣りキチ三平」ならば釣りのシーンこそが命なはずで、
ここまで酷いなら白組にダメ出しをして作り直させた方が良かったのではないか。
キャストに関しては、魚紳(塚本高史)が少々若過ぎるのが気にはなったものの
須賀健太や渡瀬恒彦は許容範囲内で、シリーズ化も狙えそうな雰囲気。
松竹の「釣りバカ日誌」シリーズが、キャストの高齢化で
いつ終わってもおかしくない状況になって来ているので、
平均年齢の若い本作が東映を代表するシリーズとして育ってくれることを期待したい。
▼関連商品
■DVD:「釣りキチ三平 完全保存版DVD-BOX上巻
矢口高雄 書き下ろし手ぬぐい付き クーラーBOX入り」
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映画の公開に合わせて発売されるアニメ版のDVDボックス。
上下巻に分けての発売で、それぞれ3000セットの限定生産。
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タイトル:釣りキチ三平
配給:東映
公開日:2009年3月20日
監督:滝田洋二郎
キャスト:須賀健太、渡瀬恒彦、香椎由宇、塚本高史、他
公式サイト:http://www.san-pei.com/
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