これだけ言えばピンと来る方も多いことと思う。
今回紹介する「椿山課長の七日間」は、
「鉄道員(ぽっぽや)」「地下鉄に乗って」の浅田次郎の原作を
「子ぎつねヘレン」の河野圭太が映画化したファンタジー作品である。
【あらすじ】
椿山和昭(西田敏行)はデパートの洋服売り場で働くサラリーマン。
ある日、いつものように忙しく働く椿山を突然の目眩が襲い、
それきりあっさりとこの世を去ってしまう。原因は脳溢血であった。
椿山が目を覚ましたのは、天国と地獄の中間地点である「中陰役所」。
中陰役所の指導員、マヤ(和久井映見)の説明によると、
やり残したことのある者は、三日間だけ現世に甦ることが出来ると言う。
甦りにおける約束事は「正体を明かさないこと」。
愛する家族や友人に会うため、それでも椿山は甦りを希望。
念願叶い、現世に帰って来た椿山が鏡を見ると、
絶世の美女(伊東美咲)として生まれ変わっていた。
「黄泉がえり」の大ヒット以降、
「天国の本屋」「この胸いっぱいの愛を」「いま、会いにゆきます」
「神はサイコロを振らない」など、ここ数年の邦画界やドラマ界では
死者の甦りを扱ったファンタジーが多数製作されている。
甦り期間の制限や、正体がバレてはいけないという約束事も含め、
本作も基本的には従来の枠を借りたありがちな話なのだが、
西田敏行の名人芸により、「笑って泣ける喜劇」へと昇華している。
伊東美咲や成宮寛貴の起用は、
「釣りバカ日誌」路線に走り過ぎないためのストッパーといったところか。
椿山が知る数々の「隠された真実」は、
知らずにおいた方が幸せだったのではと思うことも多く、
観ていて気の毒にすらなってくるのだが、
では、何も知らないままの方が良かったのかと言われると・・・私ならどうだろう。
舞い戻ったことを後悔し、さっさとマヤ(和久井映見)に
呼び戻してもらうような気がする。
時に怒り、時に嘆きながらも「愛する者達の幸せ」を最優先して
丸ごと受け止めていく椿山の男っぷりが最大の見所だ。
物語の大半を伊東美咲が引っ張っていくにも関わらず、
観客が見ているのは伊東美咲の背後に潜む西田敏行の影であり、
この二人羽織システムのおかげで、
伊東美咲の芝居の下手さが上手く隠されている。
伊東美咲にしてみれば、これ以上幸運なことは無かろう。
「14歳の母」の志田未来と「ALWAYS 三丁目の夕日」
「花田少年史」の須賀健太コンビも相性が良く、
國村隼や余貴美子などのベテラン勢も皆それぞれに良い味を出していた。
今回、特に光っていたのが成宮寛貴。
ヘアスタイリストとして転生した元ヤクザの親分、というキャラクターを
違和感なく好演している。
正直言ってもっとヤワなイメージがあったのだが、かなり意外であった。
同じ日に死んだ3人のエピソードが都合良くリンクし過ぎな点や、
重大な事実をいともあっさり受け入れてしまう陽介(須賀健太)等に
若干の違和感を感じないでもないが、
「松竹らしいベタな喜劇」ということでまぁ良しとしよう。
大絶賛されるほどの傑作ではないが、愛すべき佳作といったところ。
少なくとも、同じ松竹×浅田次郎コンビの「地下鉄に乗って」よりは楽しめる。
最後にひとつだけ。
タイトルは「椿山課長の七日間」なのだが、
椿山は死後四日が経過して中陰役所に辿り着く。
甦り期間は死んだ日から数えて七日間なので、実質三日しかない。
初七日だからとマヤは言っていたが、
ならば「椿山課長の三日間」で良かったのでは。
原作を読めば分かるのであろうか。謎だ。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:椿山課長の七日間
配給:松竹
公開日:2006年11月18日
監督:河野圭太
出演:西田敏行、伊東美咲、成宮寛貴、志田未来、他
公式サイト:http://www.tsubakiyama.jp/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ここからはサイバーバズの依頼によるおまけを。
「椿山課長の七日間」の公開を記念して製作された
バイラルムービーを紹介しておこう。
はっきり言って出来は今ひとつ。
映画本編はこれより遥かに面白いので、このムービーで判断されぬよう。
●バイラルムービーはこちら