シンキ・オブ・ザ・デッド その2 | イモの妄想神姫日記的なもの

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基本的にいろんなものと神姫を絡ませてます

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~~中央交差点~~

 

 車数台が信号待ちの状態のまま動かなくなっている大きな交差点。ここが街の中心のようだった。

 

 ネロはスーパーマーケットからここまで逃げてきていた。

 ゾンビを二体引き連れて。

 

「一体はいいですよ。逃げてる最中についてきたんですもん、わかりますよ」

 

 瓦礫と横転したバスで行き止まりとなってしまい、追い込まれた形になってしまうネロ。

 

「でもそこぉっ! スーパーからずっと追っかけて来るってなんなんですかその根性ぉ!」

 

 涙目でゾンビの一体を指さす。

 確かにスーパーマーケットからの結構な距離、速くはないとはいえネロを執拗に追いかけまわしていたゾンビであった。

 

「こうなったら……」

 

 瓦礫にまぎれてチェーンソーが落ちているのが目に入る。

 実によくチェーンソーが落ちている街だ。ゲームの仕様上仕方がないのかもしれないが。

 

「でぇっどらいじんぐ!」

 

 チェーンソーを引き抜くと、すぐに起動。ゾンビ二体を両断する。

 

「はぁーっはぁーっ、今のは中々にやばかったですよ」

 

 ぶしゅーっと音を立てて煙を吐き出すチェーンソーを投げ捨て、膝をつくネロ。

 

「ネロさーん、大丈夫ですかー!」

 

 呼び声と共に丁度ネロが来たのと同じ方向からジルが走ってくる。ゾンビ2体を引き連れて。

 

「うわーっと折角倒したのにまたこれですかー!」

 

 慌てて瓦礫とバスの袋小路から飛び出すネロ。

 

「すみません! 逃げきれなくて!」

 

「こんなにゾンビいるんじゃ仕方ありませんけどねぇ」

 

 二人は交差点の中央に駆けこむ。

 

「む、キミ達は……」

「おっと、皆集まっちゃったね」

「くっ……ここに来る以外の道は全部封鎖されていたんですもの。

仕方ありませんわ」

 

 中央には既にチアキ、クイル、アイムがいた。

 全員手に武器は無く、焦燥感のある顔だ。

 実際それぞれがゾンビに追われていたため、既にゆっくりと包囲されつつあった。

 

 低いうめき声がジルとネロの背後から響き、やむなく絶体絶命の状況に合流する。

 

「い、いよいよまずくなってきましたねぇ」

「ここにいる全員で参加者は全員ですか?」

 

ジルがネロ、チアキ、アイム、クイルの顔を順に見わたす。

 

「あ。ようやく他の方を見つけました。おーい」

 

 飛鳥型が混戦の中、走ってくる。

 

「初めまして、戦闘機型の飛鳥と申します。名前…ですか?  はい、ありますよ。

ですが秘密ですよろしくお願いします」

 

飛鳥は倒れ込んできたゾンビをさっと避ける、ふらついたゾンビは目の前にいたアイムの元へ。

 

「こっちはその辺のゾンビ。よろしくお願いします」

 

「わたくしに押し付けないでいただけますかしら!?」

 

 アイムは噛みつきをすんでのところで避けると足払いで転倒させ、ゾンビから離れる。

 

 これで参加者全員がゾンビの包囲網の中に集まったこととなる。

 

「おっとっと、よくよく見れば皆さん随分とゾンビ連れてますね。

一旦あそこのレストランにでも立てこもるというのはどうでしょうか。これもこの手の映画の鉄則ですし」

 

「それいいね採用。とりあえず引っ込まないと、ここでボクら皆まとめてゲームオーバーだよ!」

 

「この手の映画では立てこもりすぎるとどうなるのかもご存知ではなくて?」

 

「ネロさん的にはとにかく今をなんとかしてからそういうの考えればいいんじゃないかなって!」

 

「情報整理の場も必要だしな。私は乗った。まあ後はどうやって行くか、だが」

 

 ジルはピックアップトラックの荷台に置かれていたチェーンソーを見つけると、すぐに確保。ブゥーンと、回転刃を唸らす。

 

「それなら私が援護します! みんな行って!」

 

 

~~レストラン~~

 

 六人は息も絶え絶えにレストランに駆けこむ。

殿を務めていたジルが駆け込むのをみて、ネロは扉を勢いよく閉めた。

 

「はぁ……はぁ……なんでテーマパーク一発目がホラーなんでしょうね」

 

「なんか、すまん。間違いなくマスターの趣味だ……」

 

 こめかみを抑えるチアキ。

 

「……さて、情報共有といこうか。今の私たちは逃げる以前に生き残れるかすらわからないからな」

 

 レストランの椅子を各々持ち出し、座り込む。アイムを除いて。

 

「気持ちはわかりますけど、そう易々と対戦相手となれ会うつもりはありませんわ」

 

「でも、協力しないとそもそもここからでれませんよ」

 

 ジルは声を張り上げる。

 

「フン、そんなこといっても結局わたくしたちは敵同……」

 

「いいから協力、してくださいね」

 

 ジルは笑顔でピストルを突きつけた。

 

「協力じゃなくて恐喝ですわよコレ!?」

 

 ぽろっとアイムの懐から新品のピストルが落ちる。

 

「……あれ、アイムさんからアイテムが落ちて……?」

 

 と、同時にジルの銃も煙をあげて壊れてしまった。

 

「ジルさんの銃も壊れましたわ……。ゾンビを倒す以外にそういう使い方もできるということですわね……」

 

 ゲームシステムに搭載されたガチな恐喝機能であった。

 

「他の人からもアイテムが奪えるってこと?」

 

「成程。足を引っ張れるんですね。覚えました」

 

「す、すみません。まさかこんなことになるとは思ってなくて……、こ、これお返しします……あれ?」

 

「奪ったアイテムなんですから、返せない仕組みになっているんでしょう。

そもそもアイテムのやり取り自体気軽にできるものではないでしょうし。

……わかりましたわ。仕方ありません。私も協力しましょう」

 

 全員がレストランの椅子やテーブル、各々好きなように腰を落ち着けた。

 

「それで、制限時間ってあとどのくらいなの? ボクら今街の中心っぽいけど」

 

クイルの声を呼び声に、皆壁に貼られていた街の地図を見る。

 

「……残り半分ってところですね。共有できそうな部分だけは共有しちゃいましょう」

 

 飛鳥さんはテーブル上のペーパーナプキンをくるくるとねじって人型にすると、小さなゾンビに見立て、立たせる。

 

「共有……えーっと、私が最初にあったゾンビなんですけど、ネロさんしか狙っていませんでした。

私の方が近かったのに、そのまま目の前を通りすぎちゃったんですよ。

まるで目に入っていなかったみたいに」

 

「ターゲットにできるのは一人までということですかね。……いや、それだとなんで私狙われたのってなっちゃうんですけど」

 

 ジルとネロはスーパーマーケットでのゾンビ初遭遇のことを語った。

 

「最初に目が合ったとか?」

 

「生まれたての鳥じゃないですかヤダー!」

 

「いえ……でも当たらずとも遠からずかもしれませんわ。飛鳥さんについてきたゾンビ、彼女が避けたタイミングに丁度わたくしと目が合ったのですけれど、そのタイミングからわたくしを狙うようになった気がしますわ」

 

「本当に申し訳ない……。です」

 

 真顔でしれっと言う飛鳥さん。

 

「悪びれてませんわねぇっ!?」

 

「話を戻すぞ。ルールその2、武器はゾンビを倒すと壊れるみたいだ。

撃退に使ったチェーンソーはわかりやすく煙吐いて壊れたぞ」

 

「あっ、それボクも。ピストルが煙あげて使い物にならなくなっちゃったの。

ピストルなのに電化製品よろしく煙だよ?」

 

 チアキとクイルはそれぞれのスタート地点で武器を使った時のことを話す。

 

「さっきの感じだと他の人に使っても壊れるみたいですね。ピストル以外も他の人に使えるかはわかりませんけど。

……それより、肝心な部分がわからないままですね……。脱出経路、です」

 

 ジルは壁に貼ってあった地図を剥すとテーブル上に広げる。

 

「大通り、というか多分街の外周は全部封鎖されていると思いますよ。病院から逃げたときに真っ先にそっちの方目指しましたけど、全部バリケードで塞がれてました。

抜けていいならがんばりましたけど、普通に考えればルール的に侵入不可ってことですよね。プレイエリアの外です的な」

 

 飛鳥さんはどこからか取り出したマジックで地図上の大きな道にペケマークをつけていく。

 

「ええ、わたくしが目指した道も似たような感じでしたし、多分そういうことだと思いますわ。それで、こうして集まってしまったと」

 

 アイムは街の中心地である交差点を指さす。

 

「え? 詰んでません?」

 

「陸路がダメなら別の方法があるでしょう。警察署の上、ヘリありましたよね」

 

 飛鳥さんが指を顎に沿えて記憶をたどる。どうやら走ってくる途中で見たらしい。

 

「え、気づかなかった」

 

「というかこの状況で良く見れましたわね、貴女」

 

 エントランスとはいえ警察署にいたクイルとアイムが驚く中、チアキは地図上の警察署の位置を確認する。

 

「目指すは、ヘリか」

 

「陸路も全部確認したわけじゃないので、一応可能性としては残っていますけど」

 

「警察署は中にゾンビいっぱいいたしね。ヘリにたどり着くまでにやられるってこともあるかもしれないけど、映画とかゲーム的にもヘリを目指すのが正解っぽいかな」

 

 飛鳥さんとクイルが情報を補足した。

 

「うーんと、それじゃあ情報共有はここまでですかね」

 

 ネロがよいしょと腰を持ち上げる。

 

「ええ、では、恨みっこ無しでいきましょう」

 

 短い休戦状態は終わり、神姫達は再び街からの脱出を目指す。

 

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