鬼太郎6期がネットでも配信すると決まり、今まで見れなかったので嬉しいのですが、まだ実感が湧いておりません。
闇の中のジェイでございます。本日も何とか更新できました。
第3話が「妖怪城」ということで今回は「たんたん坊」、「二口女」、「かまいたち」の3体を紹介。
「たんたん坊」、「二口女」、「かまいたち」はいずれも1966年10月9日『少年マガジン』に掲載された「墓場の鬼太郎 妖怪城」にて登場。アニメでは1期、3期、4期、5期に登場しているが、1期では登場する妖怪の名前が替えられており、5期ではかまいたちのみ、ぬらりひょんの手下として「たんたん坊」や「二口女」より先に登場し、「妖怪城」の話でぬらりひょんと共に「たんたん坊」らと合流した。原作でも1986年5月に掲載された「新編ゲゲゲの鬼太郎 妖怪万年竹」にてかまいたちのみ、鬼太郎たちの仲間として再登場している。
「たんたん坊」は鬼太郎作品では妖怪城の主として登場するが、「たんたん坊」という名前の妖怪は今のところ見当たらない。そのため、鬼太郎作品内のみの名前のようだ。
水木先生の妖怪事典系の著作ではビジュアルがよく似た妖怪で「大かむろ」というのが載っている。雨戸のあたりで音がしたため、障子を開けると大きな顔のお化けがニューッと現れる。これを大かむろと言い、狸が化けたものなのだという。
大かむろにしてもたんたん坊にしてもビジュアルは速水春暁斎画『絵本小夜時雨』四之目録にある「古狸人を驚」の挿絵を元にしている。
東のとある大名にお仕えしている三原軍右衛門という者がいた。ある時、居間の向こうの障子に、月に照らされ立って踊る狸の影が映った。軍右衛門が障子を開いてみると数丈もある大入道の首が三原を見て紅色の舌を出して笑っていた。軍右衛門がこの様子に驚いて昏倒すると、大入道は煙のように消え失せてしまったという。
狸の大入道の挿絵は十返舎一九著、勝川春章・春英画の『怪談百鬼図会』や『異魔話武可誌』、『列国怪談聞書帖』に載っている「びいがん御坊」の絵に似ている。こちらも古狸が化けたもので、濡れ衣で殺された弭已介牟(びいがん)という僧の霊の姿で現われ往来の人々を驚かした。
狸が関係しているため、「たんたん坊」という名前は武器である痰の他に「たんたん狸」のフレーズも意識したネーミングなのかもしれない。
ちなみに「大かむろ」も大元の出典はわかっていない。水木先生が初めて大かむろの絵と文章を公開したのは1969年2月1日『少年画報―2月号』に掲載された「日本の妖怪カラー画報No.3」(「妖怪城」が1966年だったので3年後)。おゝかむろという字を間違えたのか「おっかむろ」という名前で載っている。「大かむろ」が雨戸の外であったのに対し、「おっかむろ」は物置や暗い部屋とさらに屋内に現われる妖怪となっている。この時からすでに狸が化けたものという解説が入っている。
では、大かむろは水木先生が初なのかというと実はその3年前に「大かむろ」は紹介されている。1966年11月に出た『別冊少女フレンド』「あなたのそばにいる日本の妖怪特集」という記事に【おおかむろ 夜中に音もなく雨戸をすっとあけ、大きな首をぬっとつきだす。ねている人をじいっとうかがったあと、するどいつめでひきさいてしまう。頭はぺろりとはげあがり、ひびのはいった目をもっている。】と書かれ、挿絵は『絵本小夜時雨』を元にした絵となっている。
幕張本郷猛氏らのインタビューにより、この記事は斎藤守弘氏が書いたことが明らかとなっている。この記事には斎藤守弘氏の創作が多分に含まれており、「おおかむろ」の絵以外の要素(名前や解説文)も斎藤守弘氏の創作である可能性は充分あり得る。
ちなみにWikipedia等で大かむろの出現地域を徳島県や佐渡島と紹介する記事があるが、これは『水木しげるの妖怪事典』などに書かれた【狸の本場は四国の徳島と佐渡ヶ島だが】という文章によるもの。大かむろの出現地域、伝承場所は実際のところ、わかっていない。
「二口女」は桃山人著、竹原春泉画の『絵本百物語』に載っている妖怪。千葉のとある継母が先妻の子に食べ物を与えず飢え死にさせた。その子供の四十九日目に薪を割っていた男が誤って、斧を妻の後頭部に当ててしまった。頭の傷口は癒えずに唇のようになり、骨は歯のように、肉もつき上がって舌のようになった。耐えがたいほど傷口は痛み、食べ物を入れた時だけ苦痛が和らいだ。この口からひそひそと声が聞こえるので聞き耳をたてると「私の心得違いにより、先妻の子を殺してしまった。過ちだった、過ちだった。」と言っていた。こういった頭脳唇(ふたくち)は自らの悪心によって引き起こる病であるという。
文章は上記のとおりであるが、挿絵に添えられた文には髪の端が蛇となって食べ物を口に運んだり、もしくは何日も食べ物を与えないで苦しめたりしたという。
二口女の解説で『絵本百物語』と一緒に昔話の事例を二口女として紹介する記事もあるが、こちらは「食わず女房」や「口無し女房」、もしくは「蜘蛛女房」などと呼ばれるもので、口も後頭部ではなく、頭上、頭頂部に口があるとされることが多い。絵にした時のビジュアルが似ているせいか、大変混同されやすいが、昔話の方は正体が人ではなく、鬼や山姥、大蛇、蜘蛛とされているので、以上により「二口女」と「食わず女房」は似て非なるものと見た方が良いだろう。昔話ではもう一つの口に手でもって握り飯を放り込むので、「妖怪城」に出てくる二口女のモチーフは『絵本百物語』の方が濃厚のようだ。
「かまいたち」はなにかに物理的に当たったわけでもないのに突発的に切り傷ができる現象で、各地で人ならざるものの仕業であると伝えられている。鼬などの獣の仕業とするのが一般的だが、ここでは鬼太郎作品に合わせ、獣以外で「かまいたち」と呼ばれる事例を紹介する。
岩手県九戸郡軽米町では6月1日に桑の木に登ると山の神によってけがをしたり、カマイタチにあったりするという。
新潟県では24つある越後七不思議の一つ。伊夜日子から国上山へ越す途中にあるという黒坂(黒滝城跡附近か)では躓くと必ず鎌鼬に遭うといい、古い暦を焼いて傷口に貼れば効くという。また、神社の境内を通り過ぎる者にも切り傷ができることがある。これは鬼神の刃に触れたためにそうなるのだという説があり、故に「構い太刀」と表記する。
富山県砺波市では魔の人、荒神様とも呼ばれるテンゴサマが剣術の稽古をしているところに当たると怪我をするという。
岐阜県高山市丹生川でいうカマイタチは三人連れの神によって引き起こされるという。姿は目に見えず、一番目の神が人を倒し、二番目の神が刃物で傷をつけ、三番目の神が薬をつけて去るのだとされる。
事例の多い「かまいたち」だが、大分県内ではあまり聞くことはない。別府市では何かの拍子に傷を負うことを「カマイタチに切られた」としている
「かまいたち」だが、鳥山石燕も葛飾北斎も手先が鎌になった鼬として描いている。しかし、水木作品ではなぜか短髪でおちょぼ口の人型の妖怪として描かれている。「妖怪城」に出てくる「たんたん坊」にしても「二口女」にしてビジュアルの元になった絵が存在するので、「かまいたち」も何か元の絵がありそうなことが窺える。イラストレーターである氷厘亭氷泉氏曰く江馬務の『日本妖怪変化史』に「たんたん坊」の元絵である「狸の化けもの」の絵も『絵本百物語』の「二口女」の絵もあり、その絵と続けて「轆轤首」と「すっぽんの化けもの」の絵が掲載されていることから「すっぽんの化けもの」から「かまいたち」を描いたのではないかという説を(冗談ぽく)唱えている。
参考文献
アミューズメント出版部編『アニメ版ゲゲゲの鬼太郎妖怪事典』株式会社講談社2010年7月12日
『水木しげるvs京極夏彦「ゲゲゲの鬼太郎解体新書」』株式会社講談社1998年3月13日
水木しげる『ゲゲゲの鬼太郎⑤―豆腐小僧』中央公論新社2007年6月25日
水木しげる『水木しげるの妖怪事典』株式会社東京堂出版1981年8月30日
近藤瑞木『百鬼繚乱―江戸怪談・妖怪絵本集成』株式会社国書刊行会2002年7月30日
水木しげる『水木しげる漫画大全集補巻2媒体別妖怪画報集Ⅱ』株式会社講談社2016年12月2日
「あなたのそばにいる日本の妖怪特集」『別冊少女フレンド』2巻9号株式会社講談社1966年11月
棚橋正博『十返舎一九集』株式会社国書刊行会1997年9月15日
竹原春泉『桃山人夜話~絵本百物語~』株式会社角川書店2006年7月25日
稲田浩二 大島建彦 川端豊彦 福田晃 三原幸久『日本昔話事典』1977年12月20日株式会社弘文堂
監修者:荒木常能 訳者:磯辺定治『現代語訳 北越奇談』株式会社野島出版1999年12月11日
柳田国男『山村生活の研究』株式会社国書刊行会1975年6月30日
財団法人民俗学研究所『改訂 綜合日本民俗語彙 第一巻 ア―キ』株式会社平凡社1955年6月30日
『別府市誌』別府市役所 別府市長 脇屋長可1985年3月8日
監修者:小松和彦『日本怪異妖怪大事典』株式会社東京堂出版2013年7月20日
「怪異・妖怪伝承データベース」
江馬務『日本妖怪変化史』中央公論新社1976年7月10日
氷厘亭氷泉2018年1月16日のツイート




