「ナショナルキッド」当時、夢中で観ていました。
知る人も少なくなったでしょうね、東映初の本格SF特撮TV映画です。
<本編はモノクロ映像です>
ナショナルキッドは記録によると昭和35年8月4日から昭和36年4月27日まで日本教育テレビ(NET)で放送されています。
現在のテレビ朝日(首都圏)です。
日本教育テレビ(NET)は昭和34年2月1日放送スタート、民放初の教育テレビ局として教育番組だけでなく、「ローハイド」(最高視聴率43.4%)、「ララミー牧場」(最高視聴率43.7%)などの外国ドラマも放送していました。
ナショナルキッドは原版が存在しており、東映チャンネル(CS)で全話放送、DVDも発売されています。
第1部「インカ族の来襲」(全13回)
第2部「海底魔王ネルコン」(全9話)
第3部「地底魔城」(全8話)
第4部「謎の宇宙少年」(全9話)
の全4部作(39話)。
今回は<第2部>「海底魔王ネルコン」をご紹介します。
投稿の内容はほんの一部です。
機会がありましたら是非本編をご覧ください。結構楽しめます。
【オープニング】
オープニング映像では、ナショナルの電飾広告塔をバックに空を飛ぶナショナルキッドの姿が使われ、タイトルロゴも当時のナショナルロゴと同じ書体。
「ナショナル」こと松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)が、子供たちに科学に対する興味を持たせたいとの方針で、破格の予算を投じた単独スポンサーでした。
ナレーション:「無敵の超人 正義の味方 その人の名は ナショナルキッド」
★第2部「海底魔王ネルコン」★
第1部で宇宙からの侵略者インカ金星人を撃破したナショナルキッドの新たな敵は、深海の底から地上人類に宣戦布告する海底人シーラカンス。
魔王ネルコンが繰り出す怪魚型戦艦ギルトールや怪魚人軍団を相手にナショナルキッドが活躍します。
【サブタイトル】
第一回 深海観測艇バチスカーフの遭難
第二回 怪魚シーラカンスの謎
第三回 真田博士の正体
第四回 大臣襲撃計画
第五回 尚子の死刑台
第七回 太平洋標流記
第九回 海底火山大爆発
【原作・脚本】
貴瀬川実(原作)と谷井敬(脚本)は、新東宝で活躍した大貫正義のペンネームで同一人物。
【特撮スタッフ】
下記の画像が特撮スタッフのメンバー。
ミニチュア特撮の描写など、当時のテレビ特撮のレベルを超えた本格的な特撮が画面を彩りました。
【出演者】
【小嶋一郎】
主人公・旗竜作(小嶋一郎)は世界的権威の科学者の孫で、旗竜作研究所長。ピンチになると遊星人「ナショナルキッド」に変身する空飛ぶスーパーヒーロー。
旗竜作役の小嶋一郎は昭和33年の東映ニューフェイスの第5期で、同期に梅宮辰夫、八代万智子、滝川潤などがいます。ナショナルキッド主演のほか、長寿TVドラマ「特別機動捜査隊」に村上刑事役で準レギュラー出演。
東映の名物シリーズ「警視庁物語」に4回出演、うち1回は犯人役でした。
<小嶋一郎(旗竜作=ナショナルキッド)>
小畑尚子(志村妙子=太地喜和子)は旗竜作研究所の助手で愛称は「チャコ」。
小畑尚子役の志村妙子は昭和34年の東映ニューフェイスの第6期で、同期に千葉真一、亀石征一郎、新井茂子などがいます。「ナショナルキッド」出演時は高校生でした。セリフや演技が上手く、さすが後の大女優です。昭和38年に東映を離れ、本名の太地喜和子で活躍。「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」ではキネマ旬報ベストテン2位で助演女優賞を、報知映画賞でも助演女優賞を受賞しています。昭和35年の「新・七色仮面 毒蜘蛛に手を出すな」(千葉真一主演)では太地喜和子の名で出演しているので使い分けていたのでしょう。平成4年に自動車事故により死去、48歳没。
【少年探偵グループ】
少年探偵グループは旗竜作研究所で暮らしている戦災孤児で、子供ながらに事件に関わっていく。福島卓(小畑尚子の弟・幸男)、木村英世(武部友宏)、岡田みどり(山口京子)、清水徹(大谷蔵三)・原一夫(吾郎)兄弟の5人。
<岡田みどり、福島卓、原一夫、志村妙子、清水徹、木村英世>
京子:「これからチャコ姉ちゃんが すごいお魚の料理をするわよ」
尚子:「見てらっしゃい 私の腕前」
吾郎:「わー 大きな魚だな」
【監督】
監督の小池淳は、昭和25年に新東宝へ助監督として入社。昭和35年に東映テレビプロと契約、「ナショナルキッド」(海底魔王ネルコン)で監督デビュー。第1部(インカ族の来襲)では特撮監督を務めた。
助監督は関川秀雄に師事した永野靖忠で、昭和38年にTV「特別機動捜査隊」(第80話・帰らざる海)で監督デビュー。「特別機動捜査隊」をはじめ「鉄道公安36号」「七つの顔の男」「非情のライセンス」など懐かしい東映のTV映画で手腕を振るった。
【ストーリー・特撮】
旗竜作(小嶋一郎)、永野博士(斎藤紫香)などと一緒に、海の中を探検する潜水艦バチスカーフに乗っている少年探偵グループは、窓の外に出現した海底人の怪魚型戦艦ギルトールを見つけるが・・・
友宏:「先生 妙な魚がいましたよ 口が大きくて 目玉が光ってました」
旗竜作:「どれどれ」
<小嶋一郎(旗竜作)>
旗竜作:「友宏君 見間違えじゃないかい?」
友宏:「本当に見たんですよ ねえ」
京子:「私も見たわ このバチスカーフの倍の大きさだったわ」
旗竜作:「考えられないな 永野博士 如何ですか」
<斎藤紫香(永野博士)、久保春ニ(川村博士)>
永野博士:「さあねえ こんな深さじゃ クジラじゃないだろうし」
川村博士:「もしかすると 新しい発見かも知れないねぇ」
斎藤紫香扮する博士、第1部では「水野博士」だったが、第2部以降は「永野博士」に役名が変更されている。
【斎藤紫香】
水野博士(斎藤紫香)は様々な発明でキッドを救う老化学者。斎藤紫香は博士や科学者役などが記憶にある俳優、温厚で知られたそうです。
無声活動大写真からの人で、戦後は大映から東映に移籍、映画・テレビ番組も併せ135本の作品に出演しています。昭和37年の「南太平洋波高し」(渡辺邦男監督)を最後に引退している。
久保春ニ扮する川村博士は海洋研究の第一人者。永野博士と共に海底人から命を狙われる。久保春ニは「三百六十五夜」「憲兵とバラバラ死美人」など新東宝で活躍した俳優。
潜水艦バチスカーフが行方不明になった。旗竜作、高倉警部らが、潜水艦バチスカーフを探している調査船を、海底人の怪魚型戦艦ギルトールが襲う。
【ナショナルキッド登場シーン】
調査船の船員:「船長大変です 変な波で船が流されてます」
船長:「あっ あれは何だ!」
海底人の怪魚型戦艦ギルトール登場。
絵のような画像ですが実写です。
ギルトールは海底人の怪魚型潜水艇。深度10,000メートルから一気に浮上して津波を起こす。
そこにナショナルキッドが登場。
<岩上瑛(土居警部補)、河合絃司(高倉警部)>
高倉警部:「おーっ キッドだ ナショナルキッドだ」
【河合絃司】
山田博士誘拐事件の捜査をする高倉警部(河合絃司)は、旗竜作(小嶋一郎)に全幅の信頼を置いている。河合絃司は、今井正監督「真昼の暗黒」(昭和31年)に映画初出演し、翌年東映東京撮影所の専属となっている。刑事役の印象が強い。脇役として「飢餓海峡」「網走番外地シリーズ」など220本の映画に出演。TVにも「ジャイアントロボ」「Gメン'75」など多数出演。「ナショナルキッド」のナレーターも務めている。
岩上瑛も「特別機動捜査隊」荒牧刑事役でお馴染みの俳優さん。
ナショナルキッドのエロルヤ光線銃が、潜水艇ギルトールの行く手を阻み、調査船は難を逃れます。
エロルヤ光線銃がナショナルの懐中電灯と同じ形であるなど、かなり徹底したスポンサーとのタイアップ。
キッドの飛行シーンなどで、当時としては高度な特撮技術が使われており、同じヒーローものの「スーパー・ジャイアンツ」(新東宝)より精度が向上しています。
キッドのエロルヤ光線銃により海水が舞い上がる、特撮陣の力が入ったシーン。
絵のような画像ですが実写です。
海底人シーラカンスは、古代魚シーラカンスが人間のように進化したもので、海底都市を築いている。人語を話し、人間に化けることが出来る。
不気味な真田博士(片山滉)、正体は海底人フィッシュ1号。
<片山滉(真田博士)、海底人シーラカンス>
【片山滉】
片山滉は東映「警視庁物語」シリーズに鑑識職員役で15回出演した常連。
「ナショナルキッド」には不気味な悪役で全4部に違う役で出演した。
潮健児の自伝「星を喰った男」によると、片山は女子高校の先生もやっていた知識人で本当のインテリ役者だったそうです。昭和53年に自動車事故で、惜しくも急逝されました。
<片山滉(「警視庁物語」シリーズより)>
白い三角頭巾をかぶった怪人物。潜水艇ギルトールで地上を征服しようとする。
命令に背いた海底人を熱線銃で処刑するなど残忍冷酷な人物。
その正体は意外な人物だった。
<海底魔王ネルコン>
海底人シーラカンスは、普段は黒い三角頭巾を着ている。最終回ではついに冷酷なネルコンに対して反旗を翻す。
【小池淳監督・談】
小池:「ナショナルキッドは強いんだから勝つに決まってるんで、あまりキッドの擬斗(戦うシーン)は入れず、ハラハラする画面を作りました。」
<「第五回 尚子の死刑台」より>
ナレーション:「絶体絶命 身動きが出来ぬチャコ(尚子)の頭上に 電気のこぎりの歯は光る ナショナルキッドがドアを開ければ 電気のこぎりが動き出すのだ」
海底人:「可哀そうだが ナショナルキッドが助けに来ても ドアを開ければ電源が入って お前は真っ二つだ」
キッド:「チャコちゃん いま助けてあげます」
<志村妙子(尚子)>
尚子:「・・・」
<「第八回 呪いの幽霊船」より>
ネルコン:「旗竜作よ 君の命が燃え尽きるときが 日本総攻撃の合図なのだ」
船底の火薬に火が回り、海底人の幽霊船は旗竜作もろとも大爆発!!
ラスト、キッドとネルコンの対決
<「第九回 海底火山大爆発」より>
キッド:「ネルコン その覆面を取りなさい 私はあなたが誰だか知っている」
ネルコン:「ウームッ おのれっ!」
キッド:「おとなしい海底人を騙して地球攻撃を企んだあなたは 海底人ではなく この地上の人間のはずだ」
ネルコン:「だまれ だまれ このギルトールは海底火山に突っ込んで 地球もろとも大爆発するのだ!」
魔王ネルコン最後のあがき、海底人の怪魚型戦艦ギルトールは、海底火山めがけて突進します。
大団円は是非、本編でお楽しみください。
【オフショット・スナップ】
【「ナショナルキッド」主題歌】
作詞:大貫正義 作曲:佐野雅美
合唱:ビクター児童合唱団
🎵雲か嵐か稲妻か
平和を愛する人のため
両手(もろて)を高く さしのべて
宇宙にはばたく快男児
オー その名はキッド
エイ ナショナルキッド
僕らのキッド (キッド)
ナショナルキッド
****************
【ナショナルキッド続編の製作】
第2部「海底魔王ネルコン」は全13回の予定でスタートしたが、放送中の第1部「インカ族の来襲」の視聴率が振るわず、撮影中にスポンサーから打ち切り通告、全9回に縮小された。ところが第2部から視聴率が良くなり出演俳優を一部交代(旗竜作:巽秀太郎)して第4部まで製作されている。
また、第4部まで製作されたのは、次回作の「少年ケニヤ」のアフリカロケが遅れた影響もあると言われている。
<山川ワタル「少年ケニヤ」より>
「少年ケニヤ」(東映・仲木睦監督)は昭和36年5月「ナショナルキッド」の後番組として松下電器一社のスポンサーで放送された。製作費はナショナルキッドを上回る一本当たり130万円だったと言う。最近、全41話分のポジフィルムが発見され、DVD化された。
★第3部「地底魔城」(全8話)★
地底王国の総裁ヘルシュタイン(松山浩二)は、地下資源が枯渇したため、考古学者の黒岩博士(片山滉)と手を結び、地上を征服しようとする。
<巽秀太郎(旗竜作)、志村妙子(小畑尚子)>
地の底から宇宙の果てまで自由に移動する地底人の「地底戦艦」は、バリアーを張って敵の攻撃を防ぎ、上部から破壊光線を出す。
<地底戦艦>
第1部インカ金星人隊長アウラ役の野川美子が、地底人アンナ役で出演。
<松山浩二(ヘルシュタイン)、野川美子(地底人アンナ)>
****************
★第4部「謎の宇宙少年」(全9話)★
凶悪なザロック人(片山滉、松山浩二、月村圭子)の怪獣ギャプラが東京で暴れまわる。
平和愛好家のマゼラン遊星の使者・大空太郎(松川清)が登場。
<ザロック人(月村圭子、松山浩二、片山滉)>
ナショナルキッドは悪役の衣装や特殊メイクも楽しい。
ザロック人は鼻が高い特殊メイク。
美人の月村圭子(ザロック人グレーテ役)もこの通り。
<月村圭子(ザロック人グレーテ)>
<ザロック遊星の生物・怪獣ギャプラ>
【エピローグ】
<「謎の宇宙少年 第9回」より>
事件が解決し、地球に平和が甦ったのを見とどけた旗竜作は、ナショナルキッドの姿に変身して少年たちの前から宇宙へと去る。
<巽秀太郎(旗竜作)>
旗竜作:「僕がいなくなっても 平和を愛する気持ちを失くさないでください」
<志村妙子=太地喜和子(尚子)>
尚子:「先生 どこかに行かれるんですか?」
旗竜作:「遠く三万光年の 僕の生まれ故郷 アンドロメダへ」
旗竜作がナショナルキッドに変身する。
子供達:「あっ キッドのおじさん」
旗竜作:「そうです 僕がナショナルキッドだったんです」
大空へ飛び去るナショナルキッド。
子供達:「せんせぇ~ 竜作せんせぇ~!」
文中、敬称略としました。ご容赦ください。
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