昭和40年代のTVヒーロー番組は、特撮を多用した作品が多くなっています。

「宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ」(30分・全24話)は、「ウルトラマン」の後番組。TBSタケダアワー枠(武田薬品1社提供の時間帯)で昭和42年4月~9月放映の、東映(東京撮影所)が製作した日本初のカラーTV特撮スペースオペラ。

「ウルトラQ」「ウルトラマン」の円谷特撮の後番組とあって、東映のスタッフはシナリオ監修にSFの大御所、都筑道夫、光瀬龍を迎え、音楽を冨田勲に依頼するなど、並々ならぬ意欲だったそうです。

 

<オープニングタイトル>

迫力ある、室田日出男のナレーションで「キャプテンウルトラ」の物語は始まる。

ナレーション:「21世紀後半 人類はついに宇宙開拓時代を迎えたが 宇宙に進出する人々を襲う 未知の危険は多かった これは 愛機シュピーゲル号とともに 宇宙の平和を守るために活躍する キャプテン ウルトラの 物語である」

 

レギュラーメンバー

・キャプテン:中田博久宇宙パトロール隊長)

  後半掲載の中田博久スペシャルインタビュー」を参照下さい。  

 

・アカネ隊員:城野ゆき(パイオニアスクールの教官で宇宙物理学者)

・ジョー:小林稔侍(地球人に拾われて育てられたキケロ星人)

・ケンジ隊員:安中滋(パイオニアスクールの生徒で好奇心旺盛)

・ロボットハック:佐川二郎(500万馬力のロボット)

<小林稔侍・城野ゆき・中田博久・安中滋・ロボットハック(佐川二郎)

 

<ロボットハック・城野ゆき・中田博久>

 

・ムナトモ博士:伊沢一郎(シルバースターの長官で科学者)

 東映TVドラマ「特別機動捜査隊」でベテラン関根部長刑事役として約9年間番組末期まで活躍した。83歳没。

<伊沢一郎(中央)>

 

前半12話は宇宙人との戦いを描いた「バンデル星人編」、後半12話は毎回怪獣が登場する「怪獣ぞくぞく編」

 

当時、第1話「バンデル星人襲来す」(脚本・高久進  監督・佐藤肇)をリアルタイムで観て、その完成度の高さにビックリしたのを覚えています。

 

<キャプテンウルトラ・スチール写真集>

<バンデル星人>

 

 

 

 

監督は、佐藤肇、加島昭、竹本弘一、山田稔、田口勝彦、富田義治が交代で担当。

脚本は高久進、長田紀生、辻真先ほかで、長田は主題歌の作詞も手掛けています。

特殊技術は矢島信男、小川康男、上村貞夫。

 

<バンデル星人編>

1話・ バンデル星人襲来す

佐藤肇監督 高久進脚本

第2 話・宇宙ステーション危機一発

佐藤肇監督 長田紀生脚本

第3 話・磁石怪獣ガルバンあらわる

加島昭監督 高久進脚本

第4 話・原始怪獣ブルコングあらわる

加島昭監督 長田紀生脚本

第5 話・バンデル巨人あらわる!!  

竹本弘一監督  高久進脚本

第6話・怪兵器ゲバードあらわる

山田稔監督 石津嵐・山田稔脚本

第7 話・原始怪獣ブルコングの逆襲

 山田稔監督 長田紀生脚本

第8 話・二大怪獣 火星都市にあらわる

加島昭監督 高久進脚本

第9 話・怪生物バンデルエッグあらわる

加島昭監督  鈴木良武・伊東恒久脚本

第10 話・スパイロケット ワルダーあらわる!!

竹本弘一監督  辻真先脚本

第11 話・四次元衛星ノズラーあらわる

田口勝彦監督 長田紀生脚本

第12 話・バンデル星人を撃滅せよ

竹本弘一 監督 高久進脚本

<怪獣ぞくぞく編>

第13話・まぼろし怪獣ゴースラーあらわる!!

佐藤肇監督  大津皓一脚本

第14 話・金属人間メタリノームあらわる!!

佐藤肇監督  加井嘉脚本

第15 話・コメット怪獣ジャイアンあらわる

竹本弘一監督 長田紀生・山崎充朗脚本

第16 話・雷雨怪獣アメゴンあらわる!!

田口勝彦監督 高久進脚本

第17 話・合成怪獣バクトンあらわる!!

田口勝彦 監督 井口達・山崎充朗脚本

第18話・ゆうれい怪獣キュドラあらわる

富田義治監督 長田紀生脚本

第19 話・神話怪獣ウルゴンあらわる!!

富田義治監督 金子武郎脚本

第20 話・スペクトル怪獣シャモラーあらわる!!

田口勝彦監督 高久進脚本

第21 話・電波怪物ラジゴン星人あらわる!!

田口勝彦監督 井口達脚本

第22 話・怪獣軍団あらわる!

!山田稔監督  高久進脚本

第23 話・くたばれ怪獣軍団!!

山田稔監督 高久進脚本

第24 話・行け!キャプテン 宇宙をこえて

佐藤肇監督  加井嘉脚本

 

佐藤肇(監督)は「散歩する霊柩車」(昭和39年)、「海底大戦争」(昭和41年)などSF・ホラー映画で人気を博した。昭和43年・松竹製作の怪奇特撮映画「吸血鬼ゴケミドロ」は映画監督のクエンティン・タランティーノが絶賛している。1995年没。

 

山田稔(監督)は、東映の「仮面ライダーシリーズ」「スーパー戦隊シリーズ」などの特撮ドラマを多く手掛けた監督。山田に助監督で就いた堀長文は「子供もので分かりやすい画を撮らせたら山田監督の右に出るものはいない」と山田を評しています。69歳没。

 

田口勝彦(監督)は昭和41年「悪魔くん」で監督デビュー。初期の「仮面ライダーシリーズ」や「スーパー戦隊シリーズ」の監督として同シリーズを支えた。89歳没。

 

 

<中田博久スペシャルインタビュー>

「特撮ヒーローBESTマガジン」から、キャプテン役の中田博久スペシャルインタビューを掲載します。撮影当時の苦労が偲ばれます。

 

―中田さんのデビューは日活だったんですか?

中田:たまたま父親(俳優の中田弘二)の友人に日活に連れていかれまして・・・「南海の狼火」と言う映画ですが、当時はまだ高校3年生でした。その後、日活は辞めたんですが、俳優の道は捨てきれずに東映に入り直しました。ちょうど宣弘社からテレビの「怪人四十面相」に明智小五郎役で出ないかとの話がありました。けっこう激しいアクションがあって大変でした。

―映画会社を替わって、すぐにテレビドラマの主役ですか?

中田:ラッキーでした。その直後に劇場版「黄金バット」に出演しました。

―「黄金バット」の公開後に「キャプテンウルトラ」の放映がスタートします。

中田:東映もテレビの特撮番組に参入するので、その主人公をやってくれと言われました。円谷プロ「ウルトラマン」の後番組で、変身はないから素顔の演技をアピールできる。ただ、宇宙遊泳はあるからという程度の話でしたね。

 

―「キャプテンウルトラ」の舞台は宇宙なので、撮影はオールスタジオですか?

中田:はい、ロケは一度も無かったですね。砂漠の星という事で鳥取砂丘や、箱根の地獄谷はどうかと提案したんですが、ロケとなると、宇宙空間のホリゾントが使えないので・・・。

 

―スタジオ撮影の大変なところは?

中田:ライトの光量が半端じゃなかった。大きなライトをいくつも使うので、現場はもう耐えられないくらいの暑さでした。いちばん大変だったのは怪獣などの着ぐるみに入っていた人たちですよ。

 

―ピアノ線は宇宙遊泳の必需品ですか?

中田:今みたいにCG合成なんて便利なものは無かったので、すべて生身の人間がピアノ線で吊られました(笑)。ピアノ線が当たる腹には、痛いので鉄板を入れるんです。ピアノ線は一度切断すると強度が落ちるんで、出番を待つ間は脚立の上に座ったままです。スタッフが差し出すバケツの中に用を足し、食事も脚立の上で済ませました。

 

―共演者で印象深いのは?

中田:ジョー役の小林稔侍さんですね。メンバーの中で一番出世したでしょう。昔の印象は面白くて好青年という感じだった。アカネ隊員役の城野ゆきさんとか、ハック役の佐川二郎さんとか、レギュラー陣はみんな仲が良かったですよ。番組宣伝でよく地方に行ったんで、夜は一緒に飲みに行ったものです。

 

小林稔侍>

―シュピーゲル号は飛行中に合体しますが、操縦の演技は難しかったんですか?

中田:操縦は簡単です。ハンドル風に作られた木の棒が1本あるだけで、メカニック的な仕掛けはありませんでした。シュピーゲル号の内部には機器類が沢山ありますが、実はその多くが木にペンキを塗ったものです。美術部の職人技ですね。

 

<シュピーゲル号>

 

余談ですが、キャプテンの中田博久夫人は、東映の「警視庁物語」やTV映画で活躍した新井茂子さん。プロ根性のある女優さんでファンでした。

<新井茂子>

 

懐かしいTVドラマが観られる、良い時代になりました。