また悲しい訃報、ファンだった俳優・川津祐介さんが逝去されました。

慶応大在学中に木下恵介監督「この天の虹」(1958年・松竹)でデビュー。

語り継がれる松竹の大島渚監督、桑野みゆきと共演の「青春残酷物語」(1960年)は劇場で観ましたが、あまり記憶に残っていません。

川津祐介の映画作品では大映の増村保造監督「赤い天使」(1966年)、「でんきくらげ」(1970年)が好きです。

 

さて、有名なテレビ映画「ザ・ガードマン」(1965年~1971年)のカッコいい荒木隊員役・川津祐介さんですが、

私のお薦めは「スパイキャッチャーJ3」(1965年)のヒーロー、コードネームJ3こと、壇俊介(だんしゅんすけ)です。

当時は007シリーズ「007サンダーボール作戦(1965年・テレンス・ヤング監督)」が公開され、スパイ映画が大流行でしたが、子ども心には「スパイキャッチャーJ3」の方が面白かった。

 

「スパイキャッチャーJ3」 は、1965年10月からNET(現・テレビ朝日)系で放送された東映東京制作所の第一回作品(全26話・30分番組)の特撮を駆使したスパイアクションテレビ映画。

シニア世代の思い出を、ご一緒にどうぞ。

 

<オープニング>

ナレーション(田川恒夫):

「ニューヨーク、世界の平和を象徴するこの建物の中に、そんなオフィスがあることを知る者は少ない。

その名をThe Undercover Line of International Police 略してTULIP (チューリップ)と言う。

この組織は世界各地に広がっていて、そこに働く人々は俗にスパイキャッチャーと呼ばれている。

これは国際謀略犯罪グループTIGER (タイガー)と対決する日本支部の腕利きJ3・壇俊介の活躍の物語である。」

冒頭、J3(川津祐介)がカッコよく降りてきます。

左下の車は、撮影のために輸入したJ3の愛車“シボレー・コルベット・スティングレイ”

CGなど無い時代、毎回奇抜な特撮映像が楽しく、新鮮に映りました。

凝った特撮映像撮影で、製作予算オーバーだったそうです。

 

タイトルに叶修二が歌う主題歌が被る。

「スパイキャッチャーJ3」((作詞:水木かおる、作曲:伊部晴美)

♪S P Y スパイ!

 キャッチ キャッチ キャッチ

 冷たく光る TULIP (チューリップ)の眼 J3

 ナイスガイ J3

 ナイスガイ J3

 キャッチ キャッチ キャッチ キャッチ

 スパイキャッチャーJ3

叶修二は遠藤実の門下生で、1970年日本万国博覧会のテーマソング「世界の国からこんにちは」のグラモフォン版の歌唱を務めています。

原作はSF・推理作家の都筑道夫で脚本も書いています。

<TULIP日本支部・J3(壇俊介) 主演:川津祐介>

 

J3は走行中にTIGER一味に襲われますが、J3の愛車(エアカー)が空を飛び、TIGERの車は同士討ちで大破する、オープニングの特撮シーン。

 

 

 

 

 

現在、空飛ぶ自動車の未来を目指し、世界で電動の小型航空機(eVTOL)の開発が進んでいるそうですが、「スパイキャッチャーJ3」では57年も前にJ3・壇俊介の愛車“シボレー・コルベット・スティングレイ”が空を飛んでいました。

また、万年筆型催眠銃、ライターカメラ、ペンダント型無線マイク、カメラ付き口紅、当時は実用化されていなかった自動車電話も登場、楽しい秘密兵器がたくさん登場します。

J3:「 TULIP J3から TULIP J1へ 定時連絡です。」

 

<「SOS ポラリス潜水艦 前篇」(第1話)>

原作・脚本:都筑道夫  監督:若林幹

出港したはずの原子力潜水艦モービーディック号が突然消息を絶った。

その知らせを受けたTULIP日本支部は、J3・壇俊介(川津祐介)に調査を命じた。

<TULIP日本支部長・J1  丹波哲郎>

 

<TULIP日本支部・J2  江原真二郎>

 

怪電波によってモービーディック号がTIGERに奪われた事を知ったJ3は、エアカーを海上に走らせ、異様な拡声器を釣り上げようとしたが、特ダネを狙う女キャメラマン(宮園純子)を助ける羽目になった。

 

 

 

<第1話のゲスト・女キャメラマンの宮園純子>

 

尾行用電波発信機の電波をキャッチし、ある高台の家に辿り着いたJ3と女キャメラマンには、すでにTIGERの魔の手が伸びていた。

 

 

<TIGERの手下に八名信夫>

 

 

 

<特撮は上村貞夫>

後篇へ続く

 

<「SOS ポラリス潜水艦 後篇」>

TIGERの一味に捕まりアジトに監禁されたJ3・壇俊介。数々の拷問を受けながらも、辛くも女キャメラマンとともに脱出。数々の証拠からモービーディックはTIGERに奪われていないと判断したJ3はエアカーを走らせ、海上でTIGERの潜水艦とエアカーのバトルが始まる!

 

 

「SOS ポラリス潜水艦」衝撃の結末はDVDでお確かめください。

 

「スパイキャッチャーJ3」全26話放送リスト

1.SOS ポラリス潜水艦・前編 <DVDで視聴可能>

2.SOS ポラリス潜水艦・後編<DVDで視聴可能>

3.SOS 火山トンネル・前編

4.SOS 火山トンネル・後編<DVDで視聴可能>

5.SOS 大金塊・前編

6.SOS 大金塊・後編

7.SOS 原子力センター・前編

8.SOS 原子力センター・後編

9.SOS ダムサイト・前編

10.SOS ダムサイト・後編

11.SOS 超特急・前編

12.SOS 超特急・後編

13.SOS 死刑実験室・前編

14.SOS 死刑実験室・後編

15.SOS 秘密指令・前編

16.SOS 秘密指令・後編

17.SOS 誘拐作戦・前編

18.SOS 誘拐作戦・後編

19.SOS 暗殺計画・前編

20.SOS 暗殺計画・後編

21.SOS 追跡命令・前編

22、SOS 追跡命令・後編

23.SOS 危機一発・前編<DVDで視聴可能>

24.SOS 危機一発・後編<DVDで視聴可能>

25.SOS 絶体絶命・前編

26.SOS 絶体絶命・後編

 

全26話で現存しているのは、

「SOS ポラリス潜水艦・前編・後編」

「SOS 火山トンネル・後編」

及び劇場版として再編集された「SOS 危機一発」のみで、

DVD化され、東映チャンネル(CS)で放送されています。

 

東映はTV映画を大量に製作しており、DVDで2次使用など考えられない時代、モノクロ・ポジフィルムは、第1話を残して処分してしまったようです。

当時、リアルタイムで全話2度(本放送・再放送)観ましたが、内容はうる覚えです。

東映の倉庫にネガフィルムが残っているはず。東映さん、早く発見して下さい!

 

原作:都筑道夫      企画:近藤照男

監督:小林恒夫、深作欣二、若林幹、山田稔、加島昭、

撮影:飯村雅彦 他

特殊撮影:上村貞夫、矢島信男(東映特殊技術部)

J3・ 壇俊介:川津祐介

J1(日本支部長):丹波哲郎   

J2:江原真二郎

由美(女性部員・J2の妹):梓英子

タイガー:大平透

ゲスト:宮園純子、城野ゆき、根岸明美、八名信夫、室田日出男

南廣、佐々木孝丸、金子光伸、岡野耕作、ピーター・ウイリアムス

 

TV視聴時「SOS 火山トンネル」を最初に観たと思っていましたが、記録では「SOS ポラリス潜水艦」が第1話だったようです。

 

「スパイキャッチャーJ3」でゲスト出演した金子光伸が、小林恒夫監督から推薦されて、TV特撮映画「悪魔くん」に主演しています。相棒の悪魔メフィスト役は東映のベテラン俳優・吉田義夫。

<東映TV特撮映画「悪魔くん」(1966年)より 吉田義夫と金子光伸>

 

 

ポジフィルムが現存している

<「SOS 火山トンネル 後編」ゲストと特撮シーン>

原作・脚本:都筑道夫  監督:小林恒夫

 

<ピーター・ウイリアムス、南廣、川津祐介>

 

<佐々木孝丸、高見理沙>

 

 

 

 

 

ポジフィルムが現存している

<劇場版「SOS危機一発」ゲストと特撮シーン>

原作:都筑道夫  脚本:池田雄一、播磨幸治    監督:加島昭

劇場版と言っても第23話と第24話(SOS 危機一発)の再編集版です。1966年劇場公開。

北大西洋ミサイル基地の機密地図を奪った謎の男が、日本の海上で競売するとの噂がたち、それを狙って世界中のスパイが集まって来た。チューリップのメンバーは機密地図を奪い返すが……。

 

<TULIP日本支部のオフィスで 川津祐介、江原真二郎、城野ゆき>

 

<謎の奇術師 室田日出男>

 

<実はTIGER一味 根岸明美>

 

 

 

<特撮は東映特撮を担った矢島信男>

 

矢島信男著「東映特撮物語矢島信男伝」より抜粋

「スパイキャッチャーJ3」はタイトルを見ると、はじめは上村貞夫さんが特撮担当で、途中から僕の名前になる。テレビ作品で名前が出たのは初めてかもしれない。空を飛び、潜水艦にもなる水陸両用のスポーツカーが特撮の見せ場だ。浮上するカットではミニチュアの車からガスが噴き出る。車のフレームを切ってガスを送り込む仕掛けだ。

潜水艦のミニチュア特撮もある。試行錯誤の時代ですよ。

主役のスパイは川津祐介さん。川津さんのお兄さんは松竹の監督だった川頭義郎さん。

丹波哲郎さんも出ている。お得意の死後の世界の話を、延々と聞かされたことがあるね。

<J3の愛車(シボレー・コルベット・スティングレイ)がジェット噴射して宙を飛ぶ>

 

<「SOS ポラリス潜水艦」J3壇俊介=川津祐介  左はゲスト出演の宮園純子>

 

<TULIP日本支部長・J1 丹波哲郎>

 

和製スパイアクション「スパイキャッチャーJ3」は、後に「キイハンター」へと続く東映アクションドラマの原点となりました。「キイハンター」のプロデューサーは、「スパイキャッチャーJ3」と同じ近藤照男、原案は都筑道夫。

 

「スパイキャッチャーJ3」東映最新の特撮技術で、007シリーズを凌ぐような映画を製作して欲しい! J3・壇俊介役には・・・

 

「スパイキャッチャーJ3」漫画版(堀江卓)も楽しい。

都筑道夫の原作を、堀江卓が漫画化。

堀江卓は昭和に活躍した漫画家で、昭和32年から連載した「矢車剣之助」はテレビドラマ化されて代表作となりました。

 

 

 

 

 

川津祐介の出演作品を撮影した“森喜弘(キャメラマン)”の談話

川津祐介さん、懐かしいなあ。彼は非常に生真面目な方でね。折った紙が曲がってても嫌なような(笑)。それで、僕は「木乃伊(みいら)の恋」の後も「メガロマン」とか「ワイルド7」の隊長とかでお付き合いがあって、助手席に乗ってもあの当時から「森さん、ちゃんとシートベルトして下さい」って言ってましたよ、法制化される前から(笑)。そして、魔法瓶からの温かいコーヒーがたまらなくて・・・。真剣で熱意があってね。そして、付き合いが深くなるほど味があり、どんどん面白くなる人です。「ホコリが欲しい」なんて監督が言うと、自分の出番がない時など、率先してスタッフとホコリを立てたり、人よけや車止めなどを協力してくれました。それと、奥さんが作った朝飯を差し入れで持ってきてくれるんですが、それが、また美味しくてね。

<1973年TV放送「木乃伊の恋」(鈴木清順監督、撮影は森喜弘)>

 

 

1972年TV放送「ワイルド7」(長谷部安春監督、撮影は森喜弘,

 川津祐介と小野進也(右)>

 

「ザ・ガードマン」

大映TV映画「ザ・ガードマン」(1965年~1971年)で、川津祐介は荒木隊員役。

PTAから「子供に見せたくない番組」と抗議があがるも、最高視聴率40.5%を記録し、「ガードマン」という言葉が世の中に定着した。

6年9か月(全350話)の長寿番組となったガードマンのメンバー中、川津祐介が一番カッコ良かった。

 

懐かしい川津祐介さん、書きだすと限がありません。

俳優・川津祐介さん2月26日、慢性心不全で逝去。86歳。

合掌

文中、敬称略としました。ご容赦ください。