第一部第一話「始まり」1
浮遊国際都市「リンドヴルム」及び7つの浮遊学園都市
これらは悪魔襲来に対応すべく15年前に作られた人工島だ。
20年前突如として世界各地に現れたゲートを介して悪魔たちがこの世界に侵攻してきた。
当時の最新技術を用いて人間たちは応戦したが、悪魔たちが持つ「魔力」の前には役に立たなかった。人間は為すすべなく悪魔たちに襲われ、悪魔たちが現れてそんなに時間が立たないうちにその時の人口の5分の3が死亡または行方不明になったと言われている。
このまま人間は絶滅するのか、そんな絶望的な考えが頭の中をよぎる中、一つの希望が浮かびあがる。それは悪魔たちを同じ「魔力」を持った少女たちの出現だった。
世界各地で現れ始めた魔力持ちの少女達。なぜ彼女たちが魔力を使えるようになったのかは今もなお不明のままだが、それは当時の人たちにとって希望の力となった。
魔力持ちの少女たちは世界各地で悪魔と戦い、次々と撃破または撤退させていく。
次第に魔力持ちの少女達も増え、最終的には激戦の後、悪魔たちを最初現れたゲートの付近まで追い返すことに成功するが、その戦いにおいて少女たちの半数が死亡、または行方不明となった。
ゲート付近まで追い詰められた悪魔たちはゲートを守るように城砦を建造し始める。
建造している最中に少女たちによる妨害を行ったが疲弊した彼女たちでは妨害しきれず、城砦の建造を許してしまう。
少女達には城砦を監視する体制と、今も現れ続ける後輩たちを育成するための場所が必要だった。
そして建造されたのが浮遊国際都市「リンドヴルム」及び7つの浮遊学園都市というわけだ。
少女たちの中でもリーダー格だった8人はそれぞれ浮遊国際都市と浮遊学園都市の代表につき、体制を整え始まる。それが今から15年前の話。
そして今ではリンドヴルムは人口100万人を超える都市に発展し、学園も悪魔たちと戦う技術を教える騎士科と騎士をサポートする技術を教える後方支援科を設立し多くの学生を抱えることとなる。
建造15年の節目を迎えたこの島で騒がれている一つの話題がある。
それは男の魔力持ちが現れた、というものである。
最初の魔力持ちが現れてから今まで魔力持ちは思春期真っ只中の少女か思春期にさしかかった少女にしか現れていない。男の魔力持ちが現れたなど前例がなく、それゆえに島全体を騒がせているのだ。
それともう一つ騒がれている理由がある。それは彼はどの学園に入るのだろうか?という事だ。
魔力持ちは必ず騎士科に入る事を義務付けられている。
将来騎士団に入る入らないにせよ、身に宿る魔力の扱い方を学ばないといけないからだ。
それゆえ彼も騎士科に入る事を義務付けられているのだが、そこで少し問題が出た。
それは騎士科の校舎と騎士科の現状にある。
騎士科の校舎は元々魔力持ちは女しかいなかったため、男が使うように設計されていない。
更に今現在騎士科は女の花園と化している。
そのなかに男を一人だけ入れても大丈夫なのだろうか、何か問題を起こしたりはしないだろうか、など意見が上がっており、学園の生徒からも反発の意見が出ている。
彼をどうするべきか、そのことを決める代表者会議が今日も行われていた。
出席しているのはリンドヴルムと7つの学園の代表者
リンドヴルム社および都市代表 ミレイユ・スタッカート
第一学園「エキドナ」代表 柊マスミ
第二学園「ヴァースキ」代表 コノエ・御国・アルデアート
第三学園「ファフニール」代表 李文縁
第四学園「ザッハーク」代表 ミレイナ
第五学園「ニーズヘッグ」代表 木葉坂ホノメ
第六学園「ヤトガミ」代表 夜刀神ミサキ
第七学園「ラーフ」代表 如月ココハ
がリンドヴルム社の大会議室に集まっていた。
会議室にある大型スクリーンには彼、黒城カナタの情報が映し出されていた。
「うーん…どうするかやね~、彼を。どう思う?マスミ?」
李文縁はスクリーンを見ながら退屈そうに手元の書類を見ながら隣に座っている女性に聞いた。
「私としては彼の人柄を見て判断したいのですが」
「それは問題ないわ、私が見てそう判断しました。」
と、ミレイユが笑顔を浮かべながら答えた。
「直接お会いになられたのですか?ミレイユさん?」
「えぇ、一応このリンドヴルム上では私が彼の書類上では母親になることにしましたし、そのために顔を合わせておかないといけまえんでしたし。」
「ミレイユさんがそういうのなら彼の人柄に問題はないね。問題は彼をどの学園に入れるかなんだけど…」
と夜刀神が苦笑いをする。
代表者達の頭を悩ませているのがそこだ。
どの学園に彼を入れるのが一番いいのか、そこを悩んでいる。
学則だけから考えるのであれば一番適しているのは第七学園「ラーフ」だ。
だが、だからと言って簡単に決めてしまうわけにもいかない。
彼をその学園に入れるだけの理由がなければ生徒たちから批判の声が上がるのは予想がつく、学園には有名企業の令嬢さんなどもいる。最悪の場合学園の機能不全に陥ることもあり得る。
リンドヴルム全体を支える会社の社長のミレイユの決定なら誰も文句は言わないだろうが、それにしても決断するまでに至った理由がいる。
会議室全体がしーんと静まり返ってしばらくした時だった。
あっと、コノエ・御国・アルデアートが声を上げた。
「どうしたんや?」
「こんなのはいかがでしょう?」
コノエはそういうと立ち上がり備え付けのホワイトボードに文字を書きだした。
書かれた内容はこうだ。
1入りたい学園は彼に決めさせる。
2ただし、それの学園に入学させる条件を付ける。
3その条件は彼が選んだ学園の生徒及び教師から選出、最終的に決定するのは学園長
4最終的に決定を下すのはミレイユ
5合格だと思ったなら入学、ダメなら我々と個別面談を行う。
と書きだした。
「いかかでしょう?」
「まぁ…大雑把で付け足さなければならないことがたくさんありますが…概ねいいんじゃないですか?私は賛成しますよ」
ホノメの言葉に続いて他の人たちも賛同の意を示す。
「なら、細かいことを詰めていきましょうか」
とミレイユの言葉に全員が頷くのであった。
話し合いの結果このような事となった。
・事前に黒城カナタに入学希望の学園を聞く
・彼が入学希望した学園の生徒に説明、アンケートを取る。
・アンケートの中から課題を代表が選出し、彼に通達
・課題は私たち代表者含め学園の生徒が全員見る事が出来る場所で行う。
・最終決定権はミレイユにあり、ミレイユの決定は絶対
・合格なら入学、不合格なら私たちと要面談し、今後の事を決める。
・日程については課題決定を通知してから一週間後とする。
と言う事になった。
この事はすぐさま黒城カナタ及び全島に知らされることとなった。
彼からの返事はその次の日、入学希望は第七学園「ラーフ」だった。
すぐさまこの事は第七学園に知らされ、課題が選出された。
選出された課題は「学園一位と戦い実力を示せ。」というものだった。
この事はすぐに彼に伝えられた。
彼からも了解の意が届き、一週間後第七学園第1アリーナで試合が行われることが決定した。