‐プロローグ‐
第3騎士団「グラム」騎士団長二アーナ・ストレイジアは魔光騎手(ブラッディナイト)についているスコープであるものを追ってチャンスを狙っていた。
追っているのはここ、第3学園島「ファフニール」に出現した「悪魔」と呼ばれる存在だ。
悪魔は今から20年前にこの世界の突如姿を現した異世界人の事を指す。
今のところ女性型しか確認されていない彼女らの事を「悪魔」というのは神話や物語に出てくる悪魔の姿にかなり似ている事、そしてその力が悪魔に例えられるほど強力だったからだ。
その悪魔が対悪魔養成施設であるこの第3学園に現れるのは極めて稀なことだった。
基本的にあの戦い以降、悪魔たちが出現した「ゲート」付近及び地上の一部分でしか確認されていなかったのだが、ここ最近悪魔たちがなぜか学園によく出現するようになっていた。
先週が第5学園、そして今日が第3学園だ。
民家の屋根の上に寝そべりながらスコープ越しに街の中を走り回る悪魔の背中を追い続けるニア―ナは弾丸を生成、狙撃銃型の魔光騎手に弾丸を装填する。
彼女は銃弾を生成しその中に込める魔力寄って銃弾が命中した時に様々な現象を引き起こすことが出来る。
炎上、氷結、風爆などに加え、貫通や束縛などの特性も与えることが出来る。
彼女が今弾丸に込めた魔力は束縛、悪魔を捕えるためだ。
騎士団上層部の命令により悪魔を捕縛し、その目的を聞き出す。それが今回の目的。
束縛後の確保のために周囲には魔力を隠した騎士団隊員が待機している。
そして彼女は静かに狙いを定め、静かにトリガーを引いた。
銃口から放たれた銃弾はまっすぐ街中を走り回る悪魔の背中目掛けて飛んで行った。
人であるならば銃弾が放たれてからの回避行動は無理に近い、だが、相手は悪魔、その力は人超える。悪魔は後ろを見ずにすぐさま回避行動をとる。横に飛び住宅の影に入り込む。
悪魔は既に車線軸上におらず、銃弾は地面に命中する、はず、だった。
「がっ!?」
悪魔は背中に受けた銃弾の衝撃で前にあった家の壁をドンドンぶち抜きながら吹き飛ばされた。家が次々と派手な音を立てながら倒壊していく。
10軒近くなぎ倒したところで悪魔は残骸埋もれるように止まった。
当たらないはずの弾丸が必ず相手に命中する。
これが彼女を第3騎士団団長たらしめている能力だ。
騎士団全体で「二アーナ・ストレイジア」の放つ弾丸は決して外れることがない」ゆえに彼女は「不可避の銃弾(エネイブル・バレット)」と呼ばれている。
悪魔の背中に命中した弾丸に込められた束縛の魔法が発動し、悪魔を魔力の縄で縛りつけていく。さらに他の騎士団隊員がその場に集結、手に持っていた杭を用いて魔力と黄道を封じ込める陣を敷く。
悪魔は銃弾を受けた衝撃と吹き飛ばされた衝撃が身体の中に残っていたのかほとんど無抵抗のままお縄となった。
その様子をスコープ越しに見ていたニアーナはふぅ、と一息ついて、切っていたインカムをONにした。
(ひとまずは課せられた任務は完了ね)
魔光騎手を担いで屋根から降りてその場に行こうと背を向けた時だった。
彼女の背筋に今まで感じた事のない悪寒が走る。
(な、なに!?)
本能的に感じたのは悪魔をとらえた方向、咄嗟にスコープでその方向を確認する。
陣の中に捕えた悪魔を囲むように並ぶ騎士団隊員、そしてその上空、そこに黒い靄見たいなのが存在していた。それは一瞬のうちに人の形となり、ニアーナが通信を入れる前に、一瞬にして陣、そしてその周りにいた騎士団隊員を細切れの肉片にした。
そこにいるのは血に塗れた現れたのは漆黒の戦乙女、と例えれるような漆黒の鎧と翼をもった者だった。
頭は兜で見えないが兜から悪魔特有の角が出ていることから悪魔であるのは確定だが、その姿は悪魔の中では異質だ。悪魔は普段鎧など身につけない。それどころか露出過多の衣装を好む。
だが現れたやつは関節の一部やへそ、足の一部分は露出しているものの、悪魔にしては珍しい、というより見たことのない重装甲だ。それなのに太刀筋が全く見なかった。
そして一瞬のうちにあそこにいた騎士団隊員を肉片に変えた技量。
それだけであそこに現れた悪魔がかなりの実力者だということが分かる。
悪魔は手に持っていた剣で束縛の魔法を切り裂いて、つかまっていた悪魔を解放した。
そして数度言葉を交わしたと思われた後、囚われていた悪魔は再び走りだし、現れた悪魔は霞みのように消え去った。そして誰かの手が私の頬に触れた。
「…っ!」
ただ触られているだけで、相手は何もしてこない。
相手は見なくても分かる。先程まであそこにいた悪魔だ。
その悪魔はまるで最初からそこにいたかのように後ろから私の頬をなでている。
頬から伝わる鎧の冷たさと、命を握られたという恐怖から私は動くことが出来ない。
頬を撫でられること数秒、永遠にも感じる数秒。
悪魔は「合格よ」という声を残し、再び消えさった。
開放された私はそのまま屋根の上にへたり込んだ。
未だに体が震えている。
しばらくは動けそうになかった。
(命拾い…したのですか?一体なぜ…)
悪魔は去り際に私に「合格よ」と告げた。
(合格…とは一体…?)
なぜ自分が生き残れたのか、合格とは一体なんだったのか、疑問に持ちながらも自分の命があることに安堵を覚えてしまったニアーナだった。