。+°:*.氷花.*:°+。 -HiKa- -8ページ目

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あなたにどうか、
とどいてほしい、
わたしのこころ。


「ゆびきりげんまん」
「約束やぶったら」
小指をください


わたし約束する
わたしが約束やぶったら
わたしの小指、あなたにあげると。

だからあなたも約束してください

約束やぶったなら
―…わたしをうらぎったなら

あなたの小指、わたしにください

甥がベビーサークルで遊んでいた
わたしはつぶやいた。「きみは将来、なにになるんだい?」

ふと、やるせない歌詞おもい浮かぶ


  「“おおきくなったらどんなおとなになるの?” まわりのひとにいつも訊かれたけれど」
  「ときのはやさについてゆけずに 夢だけが両手からこぼれ落ちたよ」


べつに、パイロットやアクターや獣医さんにならなくてもいい

もっと、もっと 平凡でいいのだ

「いい人生おくるんだぞ」そう言ったら、姉に
「いい人生って?」と逆に問われた

「充実した人生だよ」

姉は、納得したようにだまった


そうだ。べつに、とくべつな職業になんて、就かなくていい

自分の人生が、輝いているのならば。

わたしはどんくさい
エスカレーターに乗るとき、いつも半瞬、階段をみおくってしまう

…なんてことをエスカレーターに乗るときかんがえていたら。


あれは…6,7歳くらいのころだった…

もっとまえはたぶん、エスカレーター、「いまよ」と言われてとか、「よっこらしょ」とかかえて乗せてもらっていた

でも、あのときは
「やる」「できる」「だいじょうぶ」
自分で乗れるって、母に言ったんだ…

結果。

母は先に行ったのに、ながれる階段をみおくってしまう。みおくってしまう。みおくってしまう

はんべそかきそうになっていたとき、…うしろから、スーツ姿の男のひとがあらわれて…
「よっこらしょ」

つぎの階でやきもきしていた母のところに、連れていってくれた。おぼえてる


…あれから、どんなときを経て。
わたしは半瞬待ってでも、エスカレーター、乗ることができるように なったのだろう
いったいいつから。

妊娠中の姉が、出産後、うわさで知ったこと…

だいたい姉と出産日がいっしょだった同年代の妊婦さんが、「もういつ、うまれてきてもおかしくないわ」と、うれしそうに姉に語っていた、というのに。

不調を感じる。「胎動が聞こえない!」…

病院で診てみたら、おなかのなかで、赤ちゃんはもう亡くなっていた…

「おなかから、あかちゃんを出さないと」
「家に帰ってきたら、まあたらしい産着が、たくさん用意されているのよね」


どんなきもちで、それらがそろっている家に帰るのか…
どんなきもちで、それらを整理するのか…


聞くだけで、胸が痛む。
姉の子はぶじ うまれている

あたりまえのことが、あたりまえじゃない
あたりまえのことが、あたりまえじゃなくなってしまったひとが いる

そのことをおもうと、あたらしい「いのち」に感謝とともに、祈りが うまれる

父は「百万本のバラ」がすきだ。
わたしはやっぱりつらくてにがてだけど。

父の話を姉が当時のバイトさきで30歳くらいの先輩に言ったら、
「お父さんロマンティストねえ」
と言ったそうだ。

ぴんとこなかった
父が、ロマンティスト…

でも、姉がみごもったとき、父は自分なりに孫の名まえをかんがえて、その名まえをきいたとき、
父はロマンティストだと実感した

その名まえは、きずな。
きずな。絆…

孫との絆。娘との絆。
夫婦の絆。先祖との…


きずな。

はじめて飼ったねこは、12年まえに 亡くなった
つぎに飼ったねこは、ふらりと出てったまま、4年まえから 帰ってない
そのつぎに飼ったねこは 1年で たぶんぬすまれた… どんなに手をつくしても、遺体もみつからなかったから… たぶん、ぬすまれた

そんななか、4番めにやってきたこのねこの名まえは、「さくら」。
春に生まれたし、かわいらしい名まえだから さくらにした

さくらは、すぐに噛む。ツメをたてる。なでても、うっとりとのどを鳴らしたりしない。
代々ロシアンブルーなんでしょう? 由緒ただしいんでしょう? なのになんで、そんなのら猫みたいなの?

でも朝は、母にぺったり。…
どうやらひとを選ぶらしい

いいさいいさいいさ。もうどんなねこでもいいさ
ねこがいないなんて、さみしすぎる
ねこがいないなんて、わが家ではもう ありえない

わたしと出逢ってから あなたはたのしいこといっぱい おもい浮かべたにちがいない

たくさんショッピングするの
休みの日のブランチはちょっとぜいたくに
いっしょに泣いてティッシュ取りあうドラマを観て


「ふたり夢みたあしたにいつか きみだけが疲れていった」…


ごめんね。
おもいどおりにいかなくてごめんね。

わたし疲れて あなたについていけなくて ごめんね。

「ずっと ずっと いっしょにいるよ」
「きみがすきだから だからずっと いっしょにいるから」

約束は儚く 紅くむすんだ小指は ちぎれてゆく

けれど約束に 意味がないとはおもわない
そのとき そうおもった それは 胸が潰れるほど ほんとうのことだから


その瞬間だけは 約束は つよい輝きをはなつ


秋の気配は去り 今年の1月1日は 首都圏にはめずらしく 粉雪が降る―…

男のひとは みんな 花だんをもっていて
女のひとはそこに咲く花

ささやかな花
あでやかな花
うつくしき花
ひそやかな 花

男のひとは いろんな花を 花だんに 咲かせてる

わたしという きれいな花を
わたしは だいすきなひとの目に留まるよう
せいいっぱい 咲き誇るしかない

うつむかず 自分をかぎりに 枯れるまで 枯れるまで


目に留まったときだけ よろこびに 朝露に 濡れる

母に中吉のおみくじをあげて、微笑まれて、うれしかったけれど、どこか悔やまれた

なんでおなじずるをするなら、はでなずるをしなかったんだろう

500円玉でも1,000円札でもおみくじ箱につっこんで、ひけるぶんだけひいて、大吉がひけたなら、それをそっと母にわたせばよかったのだ

わたしはずるい人間だ。自分がいちばんよく知っている
まっとうになんて生きられない
だったらもっとずるくなればいい―…

母の笑顔がみられるのなら、自分がどれだけ穢れてもいい―…


自己満足だなんて、疾うにわかってる。