。+°:*.氷花.*:°+。 -HiKa- -6ページ目

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あなたにどうか、
とどいてほしい、
わたしのこころ。


24のとき、26の女性と会った
年齢じゃなく、「美少女」と呼ぶにふさわしい容貌だった

染めていないだろう栗色の髪。男性から見てほどよいだろう高さの身長。スタイル。こぢんまりまとまったパーツが配置された顔だち。
その愛らしいくちびるからは、小鳥のように澄んだここちよい声。

これまでたくさんの美人に出会ったけれど、彼女いじょうになにもかももっているひとはいない

けれど話しているうち、こんなにも恵まれた容姿なのにもかかわらず、かの女はいましあわせではないかもしれないとおもった

小学生のうちから受けつづけたセクハラ。
美容院に行くと、男性の美容師から「もっと早く来てほしかったなあ。待ってたのに」と、じょうだんに聞こえない口調で言われる。
かの女とふたりで歩いていると、ポケットティッシュを配っている男のひとに、いらないというしぐさをするのに、「そんなこと言わずに、ねえねえ」と言われる…

近寄りがたい美人ではなく、むしろ近寄りたくなる、庇護欲をそそられる、美少女…

男性たちは彼女の容姿で近寄ってくる
彼女はそれを知っていて、うっとうしいとおもっいる


ちゃんと彼女のこころを視てくれる男性はいるのだろうか
その後彼女はそんな男性に出逢っただろうか


いまも彼女のことが、わすれられない

出逢ってちょうど1年後の夏の夜、ちょっと遠くの海岸までドライヴしたね
あなたは後部座席にすきな釣り道具乗せて、ついでにわたしのために花火を買って。

釣れた魚をそのつどわたしの買ったばかりの携帯で撮ってよとねだられ、写真を撮った
たばこを吸うあなた。吸ったことのないわたし。おそるおそる、あなたのライターをもって、あなたが両手で点ける花火みつめた。両手をかざしながら花火を泳がせるあなたを、動画に撮った


花火、まぶしかったね。輝いていたね。きらめいていたね


でもふたりとも、線香花火がいちばんすきだったね
玉がいつおちるかこわごわしながら、じっと凝視つめているの

バケツとろうそくを用意しない、ほんとうにひさしぶりの花火は、火遊びそのものだった


そして、
ぱっときらめいてまばたきするあいだに散ってしまう花火は、わたしたちそのものだった

母は倒れてから、だいすきな韓国ドラマを観るのがたいへんになってしまった
ずっと起きあがっているのがしんどい。横になっているのがいちばんらく。

父が買ってくれたCDラジオ、さいしょはCDをかけていたけれど、
さいきんのおきにいりはラジオ。

「よくニュースがやっているの」
「歌もね、ながしてくれるの」
「なによりうれしいのは、パパと話が合うのよ」
「テレビ観なくても、“いま”の話ができるのよ」

そういえば父と話が合わなくてこまってたのよね…
でもいまは合うのか…

プリンタが父の部屋にあるから、印刷しに父の部屋に行く。
「財津和夫!」この曲、そうだ。おもわず大声でひとりごちる。
自室に帰るとちゅう、母の部屋からおなじ財津和夫がながれてくる…

おもわず口もとがほころぶ


いまふたり、寄り添っているね

わかります、とか だいじょうぶだよ、と言われると なにが? と思う

わたしたちはわたしたちのものさしではかりやすいからかんたんに相手のことわかるものではないし、
だいじょうぶだよ、なんてやすうけあいにすぎない

いま、ほんとにおなじ意味で 次元で わかってる?
だいじょうぶって言って、結果だいじょうぶじゃなかったときどうするの?

ことばに責任とってない
それってひどい

だからわたしは言わない
どうしても言えない

ただ 相手の話を聞くだけ。
そうなんだ、そうなんだと
うなずくだけ

こころが痛いときがある
たまらなく痛いときがある

心臓をわしづかみたい でもできない
胸を手でおさえて、やるせなさに息をつく


痛いこころをあたためたい
つめたいこころをあたためたい


そんなときは

ミルクをあたためて、ゆっくり飲む
心臓にとどくように、ゆっくり飲む

するとすこしだけ。

こころがあたたまる
きもちがあたたまる

だからつらそうにしてるひとをみるとわたしは

ミルクをあたためる
そのひとのこころにとどくようにあたためる

中学生に歌わせるには、わたしたち おさなすぎたね


「いのち懸けてと誓った日から すてきな想い出のこしてきたのに」
「あのときおなじ花をみて “うつくしい”と言ったふたりの」
「こころと こころが いまは もう かよわない」


なぜ通わなくなってしまったのか…

とうのふたりにさえ もはや わからないのかもしれない


あのすばらしい愛をもう一度


もう一度。…もう二度と。

母が倒れて、去年10月からヘルパーさんが家にやってきた
借家で飼えないけど動物ずきで、うちのねこをかわいがっていた

そのヘルパーさんが、2月とちゅうから自転車事故に遭って自宅療養することになってしまった

とつぜん来なくなったヘルパーさん。
やりきれない母。

これでさよならじゃあんまりだから、「けじめをつけたくて」と、てがみを書いた
どんなこと書いたの? と母に訊いたら、
「いままでのお礼と、おみまいと、
うちのわがままねこ、さくらもさみしがるかもしれないことと、
なにかのかたちでまた会えればいいですねと」…

そうしたら、責任者のひとがいちまいの紙を持ってきた
ヘルパーさんからのお礼の紙だった

「おてがみありがとうございます。読んでいて涙が出てきました
わたしもさくらちゃんに会いたいです
がんばって治します。またたくさんお話したいです」

そこまで欲ばるつもりはなかったけれど、てがみのおかげで、彼女は治ったらまたうちに来ることになった

そして4月―…

ヘルパーさんが復帰した
いつも母は2階でベッドに寝ているのだけれど、その日だけは、1階のソファーに横たわって彼女を待った

ヘルパーさん、掃除をして、家をきれいにして、うちのねこに声かけて、さいごに母にあいさつして…

てがみの話になった
ただの紙に書いてごめんなさい、とあやまるヘルパーさんに、
「ここにとってありますよ」と本のなかに挟んでだいじにとってあることをつたえた母。それにたいして、なんとヘルパーさん、
「わたしはいただいたてがみ、額に飾っています」!

これには母もびっくり。

ほかにも彼女を必要としている家庭はあったとおもう
でもてがみを書いておくったのは母だけ

書いてあることももちろん、てがみを書く、という「まごころ」に、彼女は涙したのだろう


彼女の事故から、ふたりのあいだに、ただの介護を必要とするひとと、ヘルパーだけじゃない、なにかが生まれた

そんな「なにか」は、人生、いつ どんなときに生まれるか わからない

「あなたっていま、しあわせじゃないでしょう」
19のとき、30のひとに言われて、あぜんとした

そんなこと、あなたが決めることじゃない
わたしが決めることだ

…「おとな」って、おもっていたほどおとなじゃないな…

それが、少女なりのわたしの感想だった


相手が年下だろうと、10代だろうと、学ぶことはあるかもしれない
10代なりの純粋さだったり、潔癖さだったり、夢だったり
自分が学ぶことは、たくさんあるかもしれない

だから「年下だから」となにもかも知ってるつもりで説教ぶっちゃいけない


いつも、いつでも、「あなたのきもちを聞かせてください」とおもうこと。


そうおもえば、自分の人生も いつだってみずみずしく 魂が輝きをたもちつづけると おもう

バスを待っていたら、まえにならんでいる親子の会話が耳にはいってきた

小学校中学年くらいの男の子
「おれね、おれね、さかあがりできるんだよ」
「そう、すごいね」
スマホいじりながら聞いてるおかあさん

「おれね、おれね、おぼえたんだよ」


    さくら さくら いまさきほこる…


子どもらしく高く そして音程をはずさない 澄んだ声


子どもらしいなって おもった
ほこっているのは さくらじゃなく 自分自身なんだよね

もうちょっと経ったら できないことばかりかぞえる 思春期にはいるんだろな
でもいまは いまは… 
「できる」ことをほこっていて ほしいな


もう さくらが咲く季節なのだと 男の子の歌声を聞いて 気がついた

あなたは接客業で、いつも仕事場でつめを切るからって家につめ切りがなくて、
あなたと暮らしはじめてから、買ったつめ切り。
わたしが買ったものだから、持って帰ってきたけれど。
つめがのびるたび、このつめ切りでつめを切るのが、なぜかつらい。


どんな念い、このつめ切りに詰めこんでしまったの


そういえばどんな念いしながら、このつめ切りでつめを切っていたんだろうと おもいを馳せる。

あなたの帰り待つとき、淋しかったね
慣れないひとりぼっちで、淋しかったね


こんなこまかいものまで、がめつく持って帰るんじゃ、なかった。