。+°:*.氷花.*:°+。 -HiKa- -22ページ目

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あなたにどうか、
とどいてほしい、
わたしのこころ。


顔で笑って こころで泣いて
…こころがなせるわざ
こんなにかなしくても わたし
笑わなきゃ

泣く場所なんて、ない

笑いながら、ひとみの下には、なみだのしるし

これがおとななのかしら
これがコビトじゃないのかしら


どうしてがんばれないときにかぎって、「がんばろう」なんてつぶやくんだろう
どうしてがんばれないときにかぎって、「わたしはやれる」だなんて 自分に言いきかせるのだろう

「えっ行けないの!?」
しったのは、前日のまひる

あんなにたのしみにしていたコンサートだったのに
あんなに行きたがっていたのに
急な用事がはいるなんて…

姉のだいすきなピアニスト
5ヶ月もまえから 先行予約でなんどもなんども電話をかけて やっととれたプラチナチケット
前よりやや左 大ホールの4列め
行けないなんて…

「ともだちさそっていいよ」

そりゃ、わたしだってチケットむだにはしたくないけれど…
でも、かわいそう
しりあいに電話をかけながら…

かんがえて…ふと ひらめく

当日の朝 姉の部屋に行き…
それから 劇場へ

約2時間演奏に陶酔したあと さあ魔術師の出番 ダッシュ!


家に帰って「はい。おみやげ」ぽんと、手わたした
「え… これってまさか…」

はい。そのとおり!

「うまいわね」

言われて こころがほんわりした
「ほめる」ことがだいじな季節
「ほめられる」ことをすなおによろこべた わたし

その学期のテスト曲だった ひとまえで歌わなければならなかった
「ひとまえ」ということに慣れていなくて 家でいっしょうけんめい歌った

そして もらったこのひとこと


この歌を歌うと つきぬける なんともいえない充足感
「出ない!」という極限まで のどから高い音をふりしぼる
日本語のきれいさが 痛いほど わかる。…

歌うこと
ゆるされるならば
人生さいごの日まで 歌っていたい

「しあわせって、いちどしかやってこないんですか?」

どきっとした
それを訊かれた「せんせい」も、どきっとした表情をうかべた。…

さいきん衛星放送でやっていた ふるいドラマ
落語をやっているおとうさんのことを 少年がせんせいに言う

「おとうさん、すくなくてもなまけてはいません」
「でも、おかあさんが死んでから おもしろくないんです」
しあわせって、いちどしかやってこないんですか?…


いちど喪ったら にどと やってこないんですか?


子どもの純粋なる 問い
純粋だからこそ つまる おとな
安易にこたえられない…

そのひとのねがうしあわせは二度、やってくるのか
わたしは わからない

こたえはだれが にぎっている 

数年まえの夏 「おしばい観に行かない?」とさそわれた

まちあわせたのは夕方だったけど
帰るころには もう 星がまばたく


金曜だった 都心だった ともだちとはわかれ ひとりぼっちだった


呑んだくれのサラリーマン おしゃれが剥げかかった女の子
ざわざわ ひとの声 かつん、かつん、ひびく ミュールの音

みるともなく みて カラオケ屋のまえをとおる

蛍光ぴんくのマーカーのような はやりの歌手のが聴こえる

「きみのことおもい出す日なんて ないのは」
「きみのことわすれた ときがないから」…

…なぜか あざやかに 胸を打った

いまもひとみを閉じると あの日 あのとき 記憶が おもいが 飛ぶ
わたしは あの日のわたしになっている


その日は歴史になったのだ


だからおもう
今日という日も また… どんなにわすれかけても

歴史になる    

きゃあきゃあ言って 駆けてゆく
なにをも おそれることが ないかのように

かの女たちが わたしを追いこすたび 風が「ひゅん」…
わたしも風に巻かれる
ふわりと なにかが鼻腔をくすぐらせて。…

この季節の小麦色した少女たちは とてもまぶしい
まるで太陽が かの女たちを まもっているかのような

わたしが学生服着ていたころも こんなかんじだったのかな。


この「きゃあきゃあ」のなかにどれだけ
かなしみ せつなさ
さみしさ。…
つまっていることだろう


日焼けをおしまないかの女たちを 目で追いながら
自分のことと すりかえる

きょうも仕事
いまにもおちてきそうな雲 家を出て もより駅まであるき、仕事場にむかう

ながいあいだ電車に揺られ 駅から出てエスカレータをおりる…とき

おりるひとがみな、まるでまえのひとを見ならうかのように… つぎつぎと傘を ひろげる…


ぱっ ぱっ ぱっ、…


その光景が…わたしに あるを おもいださせた

つぎからつぎへと 花がひらく つぎから …またつぎへ

しずんでいた闇が ふと 笑みほころぶかのように

目がうばわれ… ふうわりこころがなごみ。…

雨が…
こどものころ あたりまえのように受けていたような …慈雨に かんじた

信号 青色点滅しはじめたなら あなたはどうするだろうか   
むかしのわたしだったら… 立ちどまった
「いい子」だった

でもいまは ためらわない


はしる はしる ぜったい まにあってやる!


あぶないかもしれない
でも それも 人生に必要な生きかた

ためらってたら はしれない うごけない
うごかない「もの」なんて 生命じゃない

そんなふうにものごとをとらえていたならば
なんだって 挑戦できる


できないことだって こころみることが できる

ひとのこころは 視えたほうがいい?
それとも
視えないほうが…
いい?

むかしのわたし「ひとのこころが視えれば」読めれば
だれのこともきずつけずにすむのに。…と
おもってた

けれど
ぎゃくに
「わたしのこころがすけて視えたなら?」
おもって 慄然とした

「あのひと、きらい」
そんなどろどろした感情さえも、きっと 視えてしまうだろう

かくせない
かくせない…

視えたなら ひとのこときずつけずにすむことも たぶんある
視えるから ひとをきずつけてしまうことも たぶん…
ある

うたをわすれたカナリア
そしてわたしも… そんなカナリア

けれど

「唄を忘れた金糸雀は 
象牙の船に、銀の櫂、
月夜の海の浮かべれば
忘れた唄をおもいだす」

うつくしい船、銀いろの櫂、
わたし色の 船と 櫂を みつければ
わたしは わたしらしく 生きられる

そういうことじゃ ないのかしら


だから、きっと、あのひとも…


あのひとらしい 船 そして櫂 みつければ
あのひとらしく 生きた 生きてきた うたを そう唄を

きっとおもいだす