ピエロなこころ顔で笑って こころで泣いて…こころがなせるわざこんなにかなしくても わたし笑わなきゃ泣く場所なんて、ない笑いながら、ひとみの下には、なみだのしるしこれがおとななのかしらこれがコビトじゃないのかしらどうしてがんばれないときにかぎって、「がんばろう」なんてつぶやくんだろうどうしてがんばれないときにかぎって、「わたしはやれる」だなんて 自分に言いきかせるのだろう
小粋な魔術師「えっ行けないの!?」しったのは、前日のまひるあんなにたのしみにしていたコンサートだったのにあんなに行きたがっていたのに急な用事がはいるなんて…姉のだいすきなピアニスト5ヶ月もまえから 先行予約でなんどもなんども電話をかけて やっととれたプラチナチケット前よりやや左 大ホールの4列め行けないなんて…「ともだちさそっていいよ」そりゃ、わたしだってチケットむだにはしたくないけれど…でも、かわいそうしりあいに電話をかけながら…かんがえて…ふと ひらめく当日の朝 姉の部屋に行き…それから 劇場へ約2時間演奏に陶酔したあと さあ魔術師の出番 ダッシュ!家に帰って「はい。おみやげ」ぽんと、手わたした「え… これってまさか…」はい。そのとおり!
野ばら―ウェルナー「うまいわね」言われて こころがほんわりした「ほめる」ことがだいじな季節「ほめられる」ことをすなおによろこべた わたしその学期のテスト曲だった ひとまえで歌わなければならなかった「ひとまえ」ということに慣れていなくて 家でいっしょうけんめい歌ったそして もらったこのひとことこの歌を歌うと つきぬける なんともいえない充足感「出ない!」という極限まで のどから高い音をふりしぼる日本語のきれいさが 痛いほど わかる。…歌うことゆるされるならば人生さいごの日まで 歌っていたい
幸せはめぐるのか「しあわせって、いちどしかやってこないんですか?」どきっとしたそれを訊かれた「せんせい」も、どきっとした表情をうかべた。…さいきん衛星放送でやっていた ふるいドラマ落語をやっているおとうさんのことを 少年がせんせいに言う「おとうさん、すくなくてもなまけてはいません」「でも、おかあさんが死んでから おもしろくないんです」しあわせって、いちどしかやってこないんですか?…いちど喪ったら にどと やってこないんですか?子どもの純粋なる 問い純粋だからこそ つまる おとな安易にこたえられない…そのひとのねがうしあわせは二度、やってくるのかわたしは わからないこたえはだれが にぎっている
今日が歴史になる数年まえの夏 「おしばい観に行かない?」とさそわれたまちあわせたのは夕方だったけど帰るころには もう 星がまばたく金曜だった 都心だった ともだちとはわかれ ひとりぼっちだった呑んだくれのサラリーマン おしゃれが剥げかかった女の子ざわざわ ひとの声 かつん、かつん、ひびく ミュールの音みるともなく みて カラオケ屋のまえをとおる蛍光ぴんくのマーカーのような はやりの歌手の声が聴こえる「きみのことおもい出す日なんて ないのは」「きみのことわすれた ときがないから」……なぜか あざやかに 胸を打ったいまもひとみを閉じると あの日 あのとき 記憶が おもいが 飛ぶわたしは あの日のわたしになっているその日は歴史になったのだだからおもう今日という日も また… どんなにわすれかけても歴史になる
風の少女きゃあきゃあ言って 駆けてゆくなにをも おそれることが ないかのようにかの女たちが わたしを追いこすたび 風が「ひゅん」…わたしも風に巻かれるふわりと なにかが鼻腔をくすぐらせて。…この季節の小麦色した少女たちは とてもまぶしいまるで太陽が かの女たちを まもっているかのようなわたしが学生服着ていたころも こんなかんじだったのかな。この「きゃあきゃあ」のなかにどれだけかなしみ せつなささみしさ。…つまっていることだろう日焼けをおしまないかの女たちを 目で追いながら自分のことと すりかえる
花ひらく雨きょうも仕事いまにもおちてきそうな雲 家を出て もより駅まであるき、仕事場にむかうながいあいだ電車に揺られ 駅から出てエスカレータをおりる…ときおりるひとがみな、まるでまえのひとを見ならうかのように… つぎつぎと傘を ひろげる…ぱっ ぱっ ぱっ、…その光景が…わたしに ある曲を おもいださせたつぎからつぎへと 花がひらく つぎから …またつぎへしずんでいた闇が ふと 笑みほころぶかのように目がうばわれ… ふうわりこころがなごみ。…雨が…こどものころ あたりまえのように受けていたような …慈雨に かんじた
信号がかわっても信号 青色点滅しはじめたなら あなたはどうするだろうか むかしのわたしだったら… 立ちどまった「いい子」だったでもいまは ためらわないはしる はしる ぜったい まにあってやる!あぶないかもしれないでも それも 人生に必要な生きかたためらってたら はしれない うごけないうごかない「もの」なんて 生命じゃないそんなふうにものごとをとらえていたならばなんだって 挑戦できるできないことだって こころみることが できる
人のこころひとのこころは 視えたほうがいい?それとも視えないほうが…いい?むかしのわたし「ひとのこころが視えれば」読めればだれのこともきずつけずにすむのに。…とおもってたけれどぎゃくに「わたしのこころがすけて視えたなら?」おもって 慄然とした「あのひと、きらい」そんなどろどろした感情さえも、きっと 視えてしまうだろうかくせないかくせない…視えたなら ひとのこときずつけずにすむことも たぶんある視えるから ひとをきずつけてしまうことも たぶん…ある
唄を忘れたカナリアうたをわすれたカナリアそしてわたしも… そんなカナリアけれど「唄を忘れた金糸雀は 象牙の船に、銀の櫂、月夜の海の浮かべれば忘れた唄をおもいだす」うつくしい船、銀いろの櫂、わたし色の 船と 櫂を みつければわたしは わたしらしく 生きられるそういうことじゃ ないのかしらだから、きっと、あのひとも…あのひとらしい 船 そして櫂 みつければあのひとらしく 生きた 生きてきた うたを そう唄をきっとおもいだす