。+°:*.氷花.*:°+。 -HiKa- -21ページ目

。+°:*.氷花.*:°+。 -HiKa-

あなたにどうか、
とどいてほしい、
わたしのこころ。


メロスははしりつづけた そして 自分との勝負に勝った

でも メロスはくじけそうになった もう はしれないとおもった

そのときメロスは セリヌンティウスのこと どうおもっただろう…
「ゆるしてくれ」とおもったのか それとも「ゆるさないでくれ」とおもったのか


わたしだったら…
ゆるさないでほしい
ゆるさないで
ゆるさないでいて 死んでも
ゆるさないで わたしを憎みつづけて


ただの自己満足だと わかってる そんなことしても なんの気やすめにもならないって。…
セリヌンティウスの宥恕などえられないって

けれどぐるぐるおもう
二者択一だったら
「ゆるさないで」って

あなたは いつ どこで 時計の読みかたをしりましたか

ちいさなとき 小学校にあがるまえのとき わたしは母に
「すきなアニメが観終わったら 30分」とおそわった

30分から… 時計のかんじかたは はじまった
いまよりもっといなかで ただ 林のなか はしゃいでるような生活


すこし 時がたち…

いつもふしぎにおもったのは ちかくのバス停の時刻表が、12時をこえていたこと
そんな時間 壁時計にはないわ。…

小学校中学年のとき 母とすこし遠い場所で 待ちあわせをすることになった
「5時の時間のバスに乗っておいで」

もちろん 朝じゃない 夕方
そのころには、13時以降があることが わかっていた

停留所に行き 5時をたしかめる
13,14,15…
目見ひらいて 指さして なんどもなんども たしかめる

16,17…  …「17」
これが、5時!

いつまでこの数字をおぼえていられるか 不安だから 手にしていたメモ帳にえんぴつで書きこむ

どきどきをかかえながら バスを待っていたことを おぼえている
そしてどきどきがとまらなく 母の指定した停留所をおりるまで ずっと こぶしにぎりしめていたこと。…


おりたとき いまおもえば母が…
ずっとわたしを待っていたのだろう
笑顔で そしてすこし 安心したように むかえてくれたことも… おぼえてる

どうぶつたちがやってくる
三毛ねこ かっこう たぬきに 野ねずみ
みんな ゴーシュの音を聴きに

ゴーシュのセロはへただって?
いいえわたしはセロがすき
わたしもどうぶつになって ゴーシュのもとに行きたい


セロは闇をほどく ゆるやかに ゆるやかに
しずんだこころを やさしくやさしくほどいてく 


夜がやさしくおもえてくる。…
月がみまもっていてくれるようにおもえてくる

生のセロが聴きたくて コンサートに行った
しみじみした

ああゴーシュ わたしも あなたの音を聴きたい

去年のいまごろは ずいぶん落ちこんでいて
11月なのに わたしのために サンタクロースがやってきた

そのときはやっていた

なんともミュージック・ヴィデオがかわいらしくて
こころがほほえんでいた


音楽ってすごいよね
聴いて おちついて …すこしたのしくなって
ねむりに就いた  

11月のある日のこと

仕事場で課長に こってりしぼられた
「あなたみていると、サービスする仕事なのに、サービスされたがってるみたい」

とくべつ 理不尽なことを言われたわけじゃない むしろ とてもあたりまえのこと
でも… でも…

やはり こころにさくり、と 糸のようにするどいものが つっきった

その仕事場で いちばん実力のある女課長さん
そんな仕事場で そんないやみ言われたら とてもやってゆけない

なみだってどのくらい出るのか ためせるくらい 流した
お酒も 呑めるだけ呑んで そして吐いて また 呑んだ

「たいへんだよ。つらいよ」 ひとり こころにかかえきれなくて 姉にメールした

その後浅いねむりをくりかえし… 夜明け方 目がさめた
ドアのノブをあける

がさり。

ドアの外で、音がする
ドアをあける ノブの反対がわをみる

そこに ビニール袋にいれられた しかくいもの…

「?」 ノブからはずす なかみをとりだす

ちゃいろい包装紙に おんなの子がせなかに荷物かかえてる絵が描かれて そして ことばがそえられている


「This is a present for you」
「From Santa in Novemver.」


だれのしわざか すぐわかった
胸にじんわり しみて ちがうなみだがでてきた

もう すでにご存じでしょうか?
人間は、「ラ」の音をもって 生まれてくること…

生まれたばかりの あかちゃんの泣き声 「ふぎゃぁ」「ふぎゃぁ」は
音の階段にすると「ラ」、なのだそう…

ど、れ、み、ふぁ、そ、
ラ…

耳を澄ませて… 澄ませて…
あかちゃんの 声
「ラ」、の音でしょう?

これは、どうぶつも おなじ
「ポーラン!」
「ラ」の音で呼ぶと 亡くなったわが犬は しっぽをふって、小屋から出てきた

「はなちゃん!」と呼べば まえのねこも 目を見ひらいて やってくる

「あの… ただ名まえ呼んだだけなんだけど…」
いつも そう言っていた


「ラ」、 なんてとくべつな 音!


「しまこー!」
そう 呼ぶだけで むかしいたねこのように 駆けてくる いまのねこ 

どうぶつも、いっしょ…

「ラ」
感慨を…
擁きしめる

なんとなくおちこんだとき 疲れたとき しぜん 本屋さんに足がむかう
活字がいっぱいのってる小説じゃなくて 絵本が読みたくなる
平づみされたこの本 アメリカで大ベストセラー、と帯に書いてある
手にとる…


  「アイ・ラヴ・ユー いつまでも」
   「アイ・ラヴ・ユー どんなときも」
    「わたしが生きて いるかぎり」 
     「あなたは ずっと わたしのあかちゃん」


おかあさんが なんどもつぶやく あかちゃんのために。
ページがかわっても なんども なんども…

読みすすむほど なみだがにじみ
そのをそのまま手に レジにむかった

あなたが わたしのために このを くりかえし くりかえし 歌ってくれるたび
わたし なみだがにじみそうになる

なみだのわけをしりたくて わたしも この曲を歌う


母とふたり なみだする
そしてふたり なみだする

母の時代は 「ズボン」があたりまえだった
だから子どものわたしたちには「かわいいものを着せたい」と スカートしか はかせなかった
おさがりも 新品も


小学生のとき 男の子のきょうだいが3人もいて 自分だけ 女の子で
そんな女の子と とびきりともだちになった

スカートなんてはかないの ズボンか、キュロット
髪はショートじゃないけれど うしろでいっぽんにむすんでいるだけ

いっしょにあそんでいるうちに… たのしくて
ズボンがはきたくなった 半ズボン
買ってもらった 母はいい顔をしなかったけれど…

犬のさんぽ、じゃれあいながら 夕暮れ鉄棒、逆あがり 木のぼり、料理クラブでつくったサンドウィッチほおばって
みんな、ズボンじゃないと できないこと


あのときの陽射し 微笑み むじゃきなきもち
こころの奥に… 熱く 根づいてる

はじめてはたらいたのは パン屋さんだった
「仕事」ってたいへんで ながつづきしなかったけど

白人さんも よくきたな
よく バゲットを買ってった

「ばーっぐ」ってわたしに言うの
なあに? とおもっていたら
バゲットをいれるビニール袋がはいっているひきだしを、指さした
あ、そうか 英語では、「ばっぐ」っていうんだよね

でもバゲット…フランスパンは かりかりしているのがおいしいから
「ばっぐ」にはあまりいれないほうがいいんだよ
どうしても食べきれないときのために このふくろがあるんだよ

なんて英語力もなくてだまっていたけれど


あの白人さん、いまはどうしているかな
まだあのバゲット、しなしなにして、食べているのかな