。+°:*.氷花.*:°+。 -HiKa- -20ページ目

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あなたにどうか、
とどいてほしい、
わたしのこころ。


あれは 小学校中学年のとき
お金なんかもってなかった すくないおこづかいはすべて 母が管理していた

当日になって 気がついた
(あれ。きょうって…)

「1,300円、ちょうだい!」
母に言う
「なんでそんなにいるのよ」
「いま必要なの。ちょうだい」
「理由がわからなきゃだせないわ」
理由なんて… 言えるわけがない
「お店閉まっちゃうの。きょうじゃなきゃだめなの。おねがい!」
母はため息をつく
「じゃあ、納得のいくものを買ってこなかったら、お店にもどさせるわよ」
「うん!」

お店が閉まるまであと5分 いそいでいそいではしってく
おめあてのものは…あった
家に帰って 自信まんまんで それをさしだす

「はい!」

母は あっけにとられた顔でそれを 受けとった

世界が 目にしみます
世界が 胸に

世界が こころに 浸透して 浸透して
やけに…
目にしみるのです。


こころくるむような蒼穹
ダイアモンドのような街なみ
そして あなたの
まなざし…


すべて 目に いたいほど
しみる
しみるのです。

どうしたらいいのかな…
なみだが ふわあ、と あふれて

とまらない

いいことよりも 悪いことのほうが多くおこる
だって人生 あたりまえ
そんなふうに はすにみることもあるけれど…

たまには
「きょうはかわいい洋服みつけたわ」
「きのうはきもちよくねむれたわ」

電車がおもったよりはやく着いたわ
空が とてもきれいな蒼だわ。…

そうおもうことにしよう


「まいにちは まるでとびきりの宝石箱をひっくりかえしたかのよう」
「ひとびとのよろこび・哀しみ すべてこめられたうつくしきこの世界に」
「こころが きらきらと」
痛みます…


(過去日記より)
                           

あなたが 「これがさいごのダンス」と決めていたとき
わたしはちっとも気づかず
むじゃきにあなたにもたれかかっていた…

負担になっていることにも気づかずに
ただただ はしゃいで 笑って。…


おろかだと そんな自分を憎んだ
あまりにまがぬけている、と
自分を…
のちに…


けれど
あのとき わたしが履いていた あなたのひとみに映ったがらすの靴は
たったかたっぽでも

あなたのこころにしみていると
信じている

(よしとくれ 年寄りあつかいするのは)
声が、聞こえるような気がする
席を「どうぞ」と ゆずるとき

ひとによって、ちがう
席にすわりたい つかれているひとも いるだろう
けれど
からだをきたえるために しゃんと「立って」いたいひとも いる…


だからといって「いえ、けっこうです」のひとことが聞きたくなくて
声をかけないのは いちばんつまらない生きかた

たしかめればいい
声をかけて 「いかがですか?」言って
だめだったら「そうか」
よろこんでくれたら「うれしい」
それでいい

…たしかめたい

小鳥は自由に空を舞い舞い
鈴はすずしげに りん、と鳴く

わたしは
嘆き かなしみ うろたえ
そしてさいごに
「それが人間なんだ」わたしなんだと 悟る ほっとする

小鳥も 鈴も わたしも みんなちがう役わり
きれいかきたないか そんなこともどうでもよく
ただ「己れだけが」存在する。…


このやさしいうたを おもい浮かべると
わたしのこころ ふわっと ふわっとなる


自分の足あとをどうしようもたしかめたくなるとき
このをそっと おもいだす

ああ…
きょうの朝 いつもの電車 まにあわなかった
あと1本はやければ 始発ですわれたのに

かとおもうと
帰りの電車 うつらうつら。…
「あれ? ここどこ?」なんて しょっちゅう


「疲れているから」、とそのひとことですませれば それでおわり
けれど人生すらも、乗りすごしていないとは かぎらない

疲れているから、ですむこともある
けれどそんな理由じゃすまされないこと、これからたくさん、あることだろう

「人生」という けしてとまらない電車
レールを切りかえることもあるだろう…けれど けして

なにもできずにまいにちを見送ったり
ねぼけて乗りすごしたく ない

「きれいな指ね」
わたしの指をみて、母が言う
「まいにち家事をしてないからね」と
「食器なんてあらっていると、どうしても水焼けしてしまうのよ」

むすめ時代はきれいだったんだけどね…


きれいな指ってどんな指だろう

しみひとつない指?
まっしろな指?

でも、それじゃなんだか うわっつら

家事をする指
家族のためにがんばってる「指」って、きれいじゃない…?

畑仕事して 土のにおいのする指
ピアノを弾きこんで つめのさきがしかくくなった指

みんな
「誇りある指」…

いまは
しろい指がすきだけど
いつか
なにかを誇れる指に なりたい

あなたがおもわずついた ため息を
この手のひらにためて
遠い雲のうえに 放してあげたい
解き放してあげたい

あなたのため息を
この手のひらに すべて 摘みとって
さやかな草原に 撒いてあげたい

宇宙に還したい

あなたが もし
哀しいおもいを かかえているのなら そのこころに、擁いているのなら

もしも
このわたしに できることならば。…   

おさないころ ちいさな文庫本を父が姉へすすめ 姉からゆずりうけて読んだ
だから おおまかなことしかわからなかった

そして… 数年まえ 全訳を読んだ

わたしはミリエル司教のくだりになんども感動する
だれをも平等に愛す いやむしろ
パンが食べられるひとよりも 食べられないひと こころ満たされているひとよりも こころ餓えているひと
「たましい」というものをもった ひとつの生きものを なによりも だいじに。愛す

とくべつなひとをもてなす銀の食器だけでなく 銀の蜀台もさしだす
目がみえなくなっても それすらもが しあわせ


「神が与えたもうたのだ…」そう言って 天に召される


ジャン・バルジャンが「マドレーヌ氏」になれたのは ミリエル司教のおかげだろう。…
ジャン・バルジャンがどんどんミリエル司教に似てゆくのを読みながら…
なみだを飲んでコゼットがしあわせになるのをみまもりながら…

死する彼にミリエル司教を みた