。+°:*.氷花.*:°+。 -HiKa- -16ページ目

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あなたにどうか、
とどいてほしい、
わたしのこころ。


男は戦争で、しかばねを踏みながらいのちを懸ける
だからって女が苦労しないわけではない

ご近所で評判の「かわいこちゃん」と呼ばれる、とても愛らしい女の子がいた
かの女はいちど音を聴けば譜を書き、そらでメロディが弾けた
社交家で、20歳のときには外交官と結婚した。しあわせだった

そして、戦争

夫は戦地へかりだされた
かの女は待った
来たのは死亡通知。…

遺されたかの女は、再婚をする
夫を待っていてもしかたない。しかたないのだから…

そこに帰ってきたまえの夫
ぎょうてんするかの女

かの女は未練があった
もとのさやにもどりたかった
けれど夫は再婚した妻をゆるせなかった
また、いまの夫とのあいだにもしこりがのこった

かの女は離婚した。…どちらとも、離婚した

かの女は独りぼっちになった

ほらほらみてごらん
うさぎが、クリスタルのめずらしいピアノをたのしそうに、ほこらしげに弾いているよ

これが売っていたのは、まんま「PIANO」というなまえのお店
わたしの家の最寄り駅で、夢のようなかわいい商品を売っていて、疲れて帰ってくるたび、ウィンドウをみてはこころなごまされていた

けれど、7月末で閉じてしまった

さみしい。…
けれど、「さみしい」だけで終わらせちゃいけない

ありがとう。いままで夢をみせてくれて
ありがとう。いつも笑顔でむかえてくれた、うさぎのようなかわいい店員さん


別れぎわ、なごりおしくて言った
「おげんきで!」
「はい!」
「ぜったい風邪ひかないで!」
「はい」
「死なないで!」

…とたん、お店にいるほかのお客さんが爆笑

はて。

仕事が終わって、つかれて帰ってきて。
手つだいそっちのけで、いろいろなブログを訪問する

コメントを書いてみたり。じーっとそのひとの世界にひたってみたり

ごはんができあがってからも、ちょっと気になると席をはずしてよそのページをのぞいていたりする

「まるで子どもみたいね」母が言う
ごはんに集中できないで、いろんなことするの

笑って言う母に、わたしもあははと笑う

「ごはん食べてるときにはほかのことはしないの!」と怒られるのではなく、
笑って言われると、笑いと同時にぎょうぎがわるかったな、とこころにのこる


こんな怒られかたがなんともいとしい。     

愛している。


「I love you」

英語だったらなんのひっかかりもなく するりと こころに飲みこまれてゆくのに

なぜ 日本語にすると ひどく ださく 陳腐で うそくさいことばに聞こえるのだろう

日本民族はシャイだから。たいへんなはにかみやで おもったことを ことばのうらにひそめ、それをヒントに「わかって」と言うような歴史をもつから

そうだ。「愛」なんてことばは、日本人には似あわない

ひっそりと こころの奥でささやけばいい
こころの奥で想いふくらませ あたためればいい

だから
「すき」

「I like you」と区別のつかないことばを
つたえよう

すきと。
すきと

ひとこと。…

あなたはわたしのこと オンリィワンだと言ったけれど

わたしはあのひとにとって オンリィワンじゃなく

ナンバーワンに


…ナンバーワンに…


なりたかった      

あなた やさしくほほえむ
わたし しずかに笑う


おたがい なにをかんがえているのか わからない まま


あなた ほほえむから わたし 笑いかえす

このままじゃいや、なんて 望んじゃいけない

だって わたしはあなたじゃない あなたは わたしじゃない

…このままでいいの。


あなたが ほほえんでくれるなら
…あなたのひとみの奥に やるせない 哀しみをみつけたり しないなら。

ちいさいころ わたしは 寝物語に 父に言われた


「パパさんがみる夢は、いつもミステリなんだ」
とっても とっても おもしろい ものがたりなんだよ。…


「とちゅうで目がさめたりしない?」
自分がそうだったから そう訊いたら
「またよく日に、つづきがみれるんだ」

へえ… ふうん…
いいなあ…

そう おもってた

そんな過去を ふとおもいだした
そして
なんて おおぼらをふいたんだと あきれた

けれど
なんて子どもごころをくすぐる話なのかと…
そのうその つきざまに にがわらいし そして
なつかしくおもった      

ねえはなちゃん
おまえはとても小柄だったのに
いまはもう おもいだせないよ

ねえはなちゃん
おまえの頤はとてもちいさかったのに
いまはもう おもいだせないよ

ねえはなちゃん
おまえのからだはとてもかるかったのに
いまはもう おもいだせないよ

ねえはなちゃん
おまえはグリーンのきれいなひとみでわたしをみつめてたのに
きれいなくせに「ぼろにゃっ」って変わった声で鳴いてたのに
その鳴き声が かわいくて かわいくて しかたなかったのに
記憶がいまのねこにぬりつぶされて
もう おもいだせないよ


…こんなに細緻にスケッチできていたのに

2年まえのこと
4月も末のとき、仕事場でひとこと、ふたこと、ことばをかわしたことのある 20代なかばの女性が亡くなった
がんだった

わたしのだいすきな上司は、お通夜の帰りみち、
ハイヒールで植木鉢を3つ買った

いつもはスニーカーしかはいてないから、ヒールが痛くてよちよちあるき
店員さんに、「だいじょうぶですか? 送りましょうか」と言われたのを、
「だいじょうぶです!」言って
重たい植木鉢をかかえながら、泣いて帰った

痛いのも、重いのも、生きてる証し
このうでのなかのものも。…


そのことばを聞いて、わたしは感動した
なんてかっこいい女性なんだろうとおもった

血まめだらけのこころで「生きてる」、
かの女みたいな女性に わたしはなりたい

たまらなく せつなくなったときには
ピアノが 弾きたくなる
だけどだめなの わたしの指は
さびついてて あんな練習した曲なのに もう一曲だって
弾けない

ひとに教えてもらった曲 けれど聴くたびに それは 「自分の曲」になった

もういちど ああもういちど 弾きたい


…時間がゆるすなら
この指が、ゆるすのなら。…