。+°:*.氷花.*:°+。 -HiKa- -15ページ目

。+°:*.氷花.*:°+。 -HiKa-

あなたにどうか、
とどいてほしい、
わたしのこころ。


わたしのこころを摘んで。摘みとって
あなたのこころのやわらかな場所に


摘んで、植えてほしい


摘まれたこころは やがてつぼみをそだて

七色のひかりをはなつ

あでやかな花になる
のびやかな花になる

あれは… 何年まえ?
父から優待のチケットをもらった。クラシックのチケットだ

…でも曲目しらない。けれど イヴェントだいすき

席、席は…と あれ? いちばん右はし
だけど、会場のホールまで位置してる。まえから1番め
あんがいいい席?

「あ 聴きやすい」

それが第一印象
これ…きっとバロック
指揮者の白人さんが言う。「ツギハ ダイ ヨン ガクショウ!」
会場、どっと笑う。なんともほほえましい そんな笑み

しん、と演奏がとまったとき 余韻がしずんだとき おもいっきり拍手する
ねえ? あれはだれ?
右はしの演奏者のひとと、目があった
手を顔のまんまえまでもってきて拍手 「すてきでした!」こころいっぱい 笑う

ねえ? 気のせいじゃないよね?
そのひと、ヴァイオリン? ヴィオラ? すくなくとも、バスじゃない
楽器をもちあげて、わたしに
にっこり ほほえんだ。…


曲もしらない なにもしらない けれど
すてきな演奏会に行ったのだと こころがよろこびに ふるえた

折りたたみの日傘は 親骨がみじかくて ふつうの傘たてにはうもれてしまう
だから 靴べらかけに ひもをひっかけてつかうことにしている

でもまいにち疑問だった
つかおうとするたびに 靴べらが日傘のうえに ひっかかっている

…だれだろう

姉だろうか。姉は、おしゃれだから わたしみたいにてきとうに靴をはいたり しないのかもしれない

そのなぞは、ある日とつぜんとけた

ぐうぜんいっしょに外に出るとき 父が靴べらをとりだしたのだ
…とても慣れたしぐさで 靴に靴べらを すべらせて。…

ああ。
父はもう 働けないからだになったけれど
このときだって 病院に行くために 靴をはいたのだけど
父の所作は あのころのままなんだなあ…


ふだん着を着ている父に 現役だったころの かっちりしたスーツ姿が だぶってみえた

あなたがもし こまりはて
どちらかの道に まよっているとしたら
むずかしいほうを えらんでごらん

むずかしく、きびしく、困難な道を
えらんでごらん

「こわいよ」とただ 立ってばかりいないで
あるいてごらん


あなたがもし その道をえらんで
からだ中いばらの棘で 血いっぱいにしながら
そのいばらをくぐりぬけたなら

きっときらきらしたわっかが あなたのあたまにのっていることだろう
「ごほうびだよ」と あなたに 勝利の冠をさずけてくれていることだろう   

わたしの父の実家には
いっぱいいっぱい 古時計がある

歴代の 古時計 父の時代 祖父の時代 曽祖父の時代…。
めがくらむよな

「いまは」「もう」「うごかない」… けれど
存在感だけは たしかな たしかな
「いま」うごいている時計よりも 重みを かんじる

これらはどんな時をきざんで 生きてきたのかな
これらは どんな 人の生を みつめてきたのかな。

そうおもうと なんともいえない 感慨がこみあげてくる


その日 ねむれなくなるほどの時代を積んだ その 時計

あなたの信号は いま なにいろですか?

青ですか 点滅してますか 黄色ですか それとも 赤ですか


自分の信号 なにいろなのか どうかたしかめて

こころは確実にYes,No
うったえている…はず   

いま、まえをあるいているカップルは、恋人どうしなのだろうか
ただのしりあいなのだろうか
もっとちかしいあいだがらなのだろうか


いま、バスですわっているわかい女の子は、なぜ横に立っている老人に席をゆずらないのだろうか
足をひねっているのだろうか
ぐあいがわるいのだろうか


だれにもわからない

だれにも、邪推も、制裁も、できない

はじめて逢った、そのひとは
なまりをかくさない よい意味で「そのまま」の ひとだった

けれど小学生の、年ごろの娘女さんは 気にしたらしい
「おかあさんが言うと、どっちの“あめ”かわからない!」

「あ」にアクセントをつけるか ただへいたんに読むか
母音がすくなく、語彙数の多い日本語は、日本人にとっても むずかしい

空のなみだなの? それともキャンディなの?

「あめがふってきたね」そのひとは言う
「もうやめてよね!」なかばわかりながら、恥ずかしがる娘女さん


「あら、すてきじゃないですか!」
わたしは言った
「空からキャンディがふってくるなんて、まるでメルヘンの世界!」
そっちのほうが、よほどロマンティックですてきだわ。と


そのひとは、にこりと笑った

きっと、その娘女さんも わかるときが やってくる        

いま、彼はエリザベス
男の子なのに、エリザベスってなまえをちょうだいしている

エリザベスって、この首についてるあおいもののこと
このひとが由来らしいけれど…

どこでけがしたの?
目が開かないくらい、おおきなけがして

みていると、かさぶたになるとかゆくなるらしく、あと足であたまをかいてべりっとはがして血まみれにしてしまう

…ばか。

しかたないから、病院に行ってこのエリザベス・カーラーをつけてもらった

いやがっているけれど、しかたない

でもこっちもいやなのよ
エリザベスであたまをすりすりこすりつけられても、いたくてしょうがない

「わたしはいま、生きている」

いのちいっぱい、さけんでた



「わたしはいま、生きている」

いのちいっぱい、さけんでる