僕の地元の小学校で語り継がれる怪談がある。
『夜の血まみれのサッカー部員』という話だ。


夜遅い校庭で独りドリブルの練習をする生徒。
施錠して回っている教師が帰るよう注意しようと近寄ると
その生徒には首が無く、
ボールではなく生首をドリブルしていた…という話だ。


最近オカルト関係にはまっている僕はこの話に目をつけた。
実際に夜の小学校に忍び込んで
その様子をツイッターにアップしてやろうと思ったのだ。
思いついた勢いで早速今夜やってみることにした。

「思ったよりは明るいな、何とか撮影できそうだ。」

校庭は道路からの街灯の光でかすかに照らされていた。
とは言え暗いことに変わりは無く、音を頼りに生徒を捜すことにした。
そしてその時はすぐにやってきた。

ザッザッザッザッ…

校庭の砂を蹴る音が後ろから迫ってきた。
全身の血の気が引くのを感じながら振り返る。
そこにあるのは聞いていた通りの光景だった。
首が無い子供が人間の頭らしきものをドリブルしていたのだ。

ただ、僕が話からイメージしていたものとは幾つか違うところもあった。
僕は男の子をイメージしていたが、体操服も体つきも女子のそれだった。

「そうか、なでしこジャパンの時代だもんな。」

恐怖に麻痺した脳でぼんやりと考えていると
もう一つイメージと違うところに気が付いた。
赤黒く乾いた血を想像していたけど、
目の前に迫った生徒は真っ赤な血液を
脚の辺りまで滴らせていたのだ。

 

 

 

 

 

「そこまで血が…
はっ!まさか…はじまったのか!?」



その瞬間、股間を蹴られた僕はその場に倒れこんだ。
意識を失う刹那、転がった生首の顔が赤らんで見えた気がした。