私がふとコンビニへ買物に出た時の話だ。
マンションの入り口を出て直ぐに、一台の乗用車が走って来た。
その乗用車を運転していたのは男性だ。
しかも……懐かしい顔だった。
高校時代。
彼氏がいた。
2学年下の剣道部の後輩だった。
彼が入部して来たその日に、私が彼に一目惚れ。
そう彼が高校1年で私が3年だった。
直ぐに交際を申し込んだ。
彼はきっと先輩からの告白に、断るに断れなかったのかもしれない。
でも、月日が流れるにつれて普通の恋人同士になれたと思う。
別れたのは、私の大学受験が原因だ。
部を引退して、受験勉強に熱心になりすぎた。
そう、彼の気持ちも考えず、彼との時間を作らずに勉強一筋だった。
おかげで希望していた大学には合格できたが、
彼の気持ちは私から離れて行った。
彼の恋人としての私は、結果的に不合格だったのだ。
大学に進学して、新しい恋人が出来た。
でも、なにか満たされていなかった。
その答えはわかっていた……「彼」じゃなかったからだ。
その事に気が付いた時、私はひとりになった。
そして、恋する行為をその後一切封印した。
今現在、独り暮らしの私はもちろん独身だ。
でも毎日は楽しい。
大学時代に出会えた海外ボランティア活動をずっと続けているからだ。
だから、なにも望むものはなかった。
いや、なかった筈だった、今さっきまで。
懐かしい顔が……近づいて来る。
こんなことって、現実にあるの???
10年振りの再会だ。
奇跡、神秘体験、シンクロシニティ……
どんなオカルト用語を使っても言い表せない様なこの再会。
彼は今、どんな生活をしているのだろう???
私は、知らず知らずに右手を挙げて彼の名前を叫ぼうとした。
新しい何かが始まる……そんな予感がした。
が、
「ぎゃああああああああっっっ!!! 私、
ワキの処理サボってたのよーーっ!!!」
私は反射的に、自分自身を隠す様にその場にしゃがみ込んだ。
彼は……微塵も私に気付かず、走り去ってしまった。
そう、私の存在は目に見えない何者かの
邪悪な力によって、彼の前から掻き消されたのだ……。
嗚呼、どこからか
「自分自身を隠す様にその場に
しゃがみこんだのは、お前自身だろっ!」
なんて手厳しい声が聴こえる。
でも、処理してないワキの下なんか見せられますかっ???
嗚呼、更には「結局、またワキ毛が未処理ってオチかよっ!」
なんて罵声みたいな声が聞こえる。
でも、でもね、それは制作者サイドの問題であって、
私にとっては初めての失態なんですからねっ!!!!!

