僕の家はけっこう田舎な場所で、二十分歩いても店なんて一つも無い。
新しいゲームを買うときなんかは友達と一緒に自転車で凄い時間走って行ってる。
一人だったらちょっと行きたくないぐらい時間がかかる。

そんな僕の家だけど、夏の間だけここで良かったと思う。
すぐ近くに市民プールがあるからだ。
夏休みのときはお小遣いとは別にプール代をもらえるから行き放題だ。
だいたい友達と一緒で来るんだけど、友達が来れなくても全然大丈夫。

あの日も、友達が熱を出しちゃったんで一人で来ていたんだ…
今思うと空がちょっと暗くて、変な感じはしてたかも知れない。
でもプールが大好きな僕は気にしてなかったんだ。

だから僕は、”見えちゃった”のかもしれない。
いつもより人が少ないプールの中で、あの子だけは何か違う感じがした。
もともと田舎のプールだから来てる人も少なくて、

他の人が気になることは全然無い。
でも、その男の子は何か違ってた。
歳は僕と同じかちょっと下、小学三年か四年だと思う。
だけど何か変だった。


じっと立ったままで全然動かない。
泳ぐのに疲れて、立って休んでるのはよくあることだけど。
僕だってそうして休んでたら男の子と目があったわけだし。
でも変なんだ、すごい青い顔で目も僕と合ってるんだけど、

僕が見えていない感じで。
ブルブル震えてるのに、僕は何故か怖くて「大丈夫?」と言えなかった。

その時ぱっと思い出したんだ。
毎年、夏になる前にお母さんに言われていたことを。
いくら泳ぐのが得意だからって、調子の乗っちゃダメだって。
昔この町でも川やプールでおぼれて死んだ子がいるんだって。

あの子はもしかして…
そう思うと僕はそこから動けなくなった。
僕もプールに引きずり込まれて死んじゃうんじゃないかって怖くなった。
そう考えた瞬間、男の子の表情が変わったんだ。
歯を食いしばって、体の力を入れて震えも大きくなってきた。

しまった!霊が僕を見つけたんだ!と思った。
成仏してください!天国に行ってください!
僕は必死になって祈った。
怖くて、でもそれだけじゃなくて、男の子に楽になってほしくて。

その時、霊の顔がすっと力が抜けたみたいに微笑んだ。
つらかったのが全部無くなったみたいな感じだった。
僕は祈りが通じたと思って嬉しくなった。
(よかったね、霊の世界でもげんきでね。)
そんな世界があるのか知らないけど、
天国に行けそうな顔をした霊を見るとそう言ってあげたくなったんだ。

「おーい。いつまでもプール入ってないで帰っておいで!」

突然プールの外からお母さんの声がした。
慌ててもうすぐ帰るからって言って霊のほうを見るとそこにはもういなかった。
(そっか、天国に行けたんだ…)
僕は嬉しくなって、いい気分で帰ろうとしたその時…
何かが僕のところに流れてきた。

 

 

 

 

 

「こ、これは、犬のふ…