その日は最初からツイていませんでした。
いつもなら何の問題もないところでミスをしてしまうし、
そのミスを隠そうとする現場を上司に目撃されてしまうし……。
なんで上司と言うやつはこんな時だけいるんでしょうね。

普段は顔も見せないくせに。
でもまあ、見付かった以上は仕様がないので
後始末をしていると帰る頃にはすっかり真夜中になっていました。
早く帰らなくちゃと慌てて駅に着いた時にはもう終電しか残っていませんでした。
正直この時だけは自分の仕事の遅さを呪いました。

どうしてかと言うと、私の自宅ははっきり言うと田舎なので、
終電は止まってくれないのです。
終着駅から私の降りる駅までは丸々二区間歩かなくてはいけません。
じゃあタクシーに乗ればいい、と言いたいところでしょう。
しかし、この日は本当にとことんツイていませんでした。
タクシーに乗れるほど持ち合わせがなかったのです。

「ったく……疲れてるのに……」

ここまでくると自分自身に怒るやら呆れるやら、
仕方なく自宅への道を歩き始めました。
私の靴音だけが誰もいない道に響き渡っていました。
自宅までの道はいかにも田舎道らしく、街灯が一つもありません。

そんな道を歩いていると疲れと眠さも手伝って
どんどんと意識がぼんやりしてきました。
しばらくそのまま歩いていると突然私の体に電流が走りました。
後ろから迫ってくる気配を感じたのです。

「そんな……馬鹿な……」

私は思わず声に出していました。
そうです、こんな時間に他に人がいる筈がありません。
そっと後ろを見ても、暗闇の中にぼんやりと人影のようなものが
浮かんでいるだけで何も分かりません。

思わず私は小走りになっていました。
しかし後ろの足音もスピードを上げてくるのです!
疲れた体にかまわず走りつづけました。
一秒一秒がとても長く感じられました。
しかしその時間も長くは続きませんでした。

「アイヤッ!」

私の足はもつれ、地面に倒れたのです!

「あ、あの……大丈夫ですか?落し物ですよ。」

優しそうな男の声がしました。
なんだ、そうだったのか……。
安心して感覚が戻った私は、顔面に柔らかい感触を覚えました。

 

 

 

「こ、これは!? 犬の糞だーっ!」