魔法じゃなくて、そのやりとりに意味も目的もあるんです~③ | 向き不向きより前向き♪言語聴覚士かあこから感謝をこめて

向き不向きより前向き♪言語聴覚士かあこから感謝をこめて

ST(言語聴覚士)として病院・施設・学校などでリハビリや訓練に長年携わっています。出会わせていただいてきた方々への感謝の心をこめて、日々思う事・考える事などを綴っていきます。
どなたかの「今」にお役に立てることがひとつでもあれば幸いです。

前々回・前回の続きです。

前々回は、実際の臨床場面での
患者様とのやりとりをご紹介して、

どうして、この方は
落ち着いた気持ちで訓練に向かうことが出来たのでしょうか?

あなたでしたら、
どういう対応をされますか?



・・・と、質問をさせていただきました。
(前々回の記事は、こちら


前回は、そのやりとりの意味や目的について、
私の思うところを、解説していきました。
(前回の記事は、こちら


今回は、交流分析や、
交流分析で使われる「自我状態」とい考え方で、
この場面をみてみます。


交流分析については、
テーマの「交流分析」にて、何回かに分けて簡単に書いています。
お読みいただけると、
これから話しが、よりわかりやすくなるとは思いますが、

全部読むお時間はないよ!
と言う場合は、

とりあえず、この、

電車の中の大泣き赤ちゃんへの反応を例に自我状態を説明してみると(交流分析3自我状態②)



交流分析の「交流」を図解するとこんな感じです(交流分析6交流②)

の、ふたつだけでも、
さささっと、目を通していただけるとうれしいです。
(どちらも、1~2分で読めます)


一応大雑把に書いておきますと、

 CP: 厳しさ
 NP: 優しさ
  A: 客観性
 FC: 素直な感情表現
 AC; 協調性・順応性

となります。

では、始めます。

解説部分は、赤字にしていきます。


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最近の出来事です。


患者様と新人ST(言語聴覚士)が、何やらもめている雰囲気。

この患者様は、
軽い構音障害と、軽い認知症のある女性の方です。


どうやら
「今は、言語訓練はしません」
と、患者様が意思表示をされているご様子。


通りがかりに目に入ったのですが、
そういう交渉も大切です(患者様にとって)。

すぐに口を出さず、
遠目に見守りました。

患者様は、車椅子をUターンさせて
どんどん訓練室から離れようとされています。

新人STは、困り顔です。

「少しだけ、がんばりましょう」
と、一生懸命お声かをしています。


患者様は
「今、だめなの」
「あっちが、あるの」
等々、笑顔でおっしゃっています。


新人:CP: Critical Parent(批判的な親)又は
   NP: Nurturig Parent(保護的な親)

患者様:CP: Critical Parent(批判的な親)又は
    FC: Free Child(自由な子供)

    
  
 

笑顔ですが、
頑として、訓練室には背を向けていらっしゃいます。


5分位待ってみても、
状況が変わらない様子でしたので
ちょっと、お声掛けをしてみることにしました。


車椅子のそばにしゃがんで、
目線を合わせて、
「こんにちは」
と、ごあいさつをします。


私:NP: Nurturig Parent(保護的な親)

「〇〇と申します」
と自己紹介をします。

私:A:Aduut(大人)



「何か、お困りですか?」
「何か、失礼でもございましたか?」
と、お伺いしてみます。

私:A:Aduut(大人)

「リハビリいやですか?」とか。
「少しですから、がんばりましょう」とか。
そういう風に言わないのが、ミソ。


これは、この場面での
「リハビリいやですか?」は、
AC: Adapted Child(順応する子供)っぽく

「少しですから、がんばりましょう」は、
CP: Critical Parent(批判的な親)っぽいからです。 

別の文脈であれば、このセリフが望ましい場合ももちろんあります。




「こんにちは」
と返して下さります。


「今は、だめなんです」
「△△先生の(リハビリ)が、あります」
「◎◎も、あります」

と、おっしゃいます。


「お時間が、色々とご心配なんですね」
と、私。


おおお。

何だか、A:Adult(大人) 対 A:Adult(大人)
な感じのやりとりに。


リハビリがイヤとは、おっしゃっていません。
ですので、そこは、あえて、スルーです。

色々なスケジュールを気にかけていらっしゃるご発言です。

「気にかけていらっしゃる」
というところに、フォーカスします。


引き続き、A:Adult(大人) 対 A:Adult(大人)
のやりとりに持ち込みます。


「それでしたら、スケジュール表で確認をいたしますが、いかがでしょうか?」
と、お伺いしてみます。


うなずかれましたので、


印刷してある、リハビリの予定表を持ってきて、
ご本人にお見せしました。


たたみかけるように、
A:Adult(大人) 対 A:Adult(大人)です。




お見せして、該当部分を指さしながら、


「これによると、△△さんとは、午前中に頑張られたようですが、
会われましたか?」

はい



「もうひとつの、◎◎は、夕方の予定になっています」
「今は、まだ、午後の2時です」

はい


ひたすら、A:Adult(大人) 対 A:Adult(大人)


「◎◎の時間変更のご連絡など、ありましたでしょうか?」

いいえ


まだ、その時間にはなっていませんよ!
という感じでいくと、責めている雰囲気になります。

私:CP: Critical Parent(批判的な親)
から
患者様:FC: Free Child(自由な子供)AC: Adapted Child(順応する子供)
への働きかけになります。 

ですので、
そういう言い方はしません




「そうなのですね。安心しました」


この方のご心配を、
私も、自分のこととして一緒に考えようとしています。

ということの、提示です。
私:NP: Nurturig Parent(保護的な親)の雰囲気
安心感を持っていただければ・・・の意図です。




「では、この表で見ますと、午後の2時は、ここの言語訓練になっています」


はい


再度、現在時刻を提示します。

そうして、
きちんとしたスケジュール表に、
きちんとした予定として、言語訓練があることを提示。

ひたすら、A:Adult(大人) 対 A:Adult(大人)



「△△や、◎◎とは重なりませんが、他に何かご予定がありますか?」

いいえ



「それでしたら、今は言語訓練で、いかがでしょう?」

そうね・・・。(思案顔)


元々、言語訓練に気乗りがされていなかったのであれば、
この投げかけは、患者様的にはちょっと困りますね。

でも、
「じゃぁ、言語訓練をしましょう!」
と、いきなり言われてしまうと、
納得はいかないかもしれません。

私:CP: Critical Parent(批判的な親)
から
患者様のFC: Free Child(自由な子供)や
    AC: Adapted Child(順応する子供)
への働きかけになってしまいます。

ですので、お伺いです。

A:Adult(大人) 対 A:Adult(大人)です。



「15時には終わります」

「終わった後、少し休憩していただくと、◎◎の時間になります」


そうですね(笑顔)


「ちょうどいいかな?と思うのですが、いかがでしょう?」

ちょっとだけ、
FC: Free Child(自由な子供)っぽさを交えた投げかけです。

堅苦しさがないですね

 

はい。では。


・・・と、今度は訓練室に向かって、Uターンをして下さりました。


あとから確認しましたら、時間一杯、
訓練に集中して下さったとのこと。



(後略)

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私自身は、
患者様とのやりとりの際は、
FC(自由な子ども) 対 FC(自由な子ども)
の、やりとりにするのが好きです。

頭も互いに働きやすくなると思っています。

ですが、
この例のように、
A(大人) 対 A(大人)のやりとりにしたり、
患者様に NP(養護的な親)の自我状態を発動していただいたり
すると、

別人のようなお力を発揮していただけることが、よくあります。


医療スタッフが、
 NP(養護的な親)
 CP(批判的な親)
から、上目線で、

患者様の
 FC(自由な子ども)
 AC(順応した子ども)
への、働きかけばかりしていると、

こういうお力は、なかなか発揮していただけません。

気をつけたいなぁ・・・と思います。



上記の解説は、
ひとつの例です。

このやりとりをする際の、患者様の表情等々で、
その時の自我状態は、上記以外にも解釈できます。

全部を書くとややこしくなるので、
一例・・・として書きました。

表面の交流と、
裏の交流

・・・という視点も必要なのですが、
今回はその解説は煩雑になり過ぎるので控えました。

また、別の機会にと思います。


口から発する言葉ももちろんですが、
それが発せられるときの、
表情、姿勢、身ぶり・・・・。

そういうものから、伝わるものも、とても大きいです。







それでは、本日はこのあたりで。

次回は、久しぶりに、お子さんの構音訓練の話を書く予定です。

長文お読み下さり、ありがとうございました。









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