――能力+1の挑戦を続けた40年の奇跡

僕が「夢中だった」と感じる時間は、特別な瞬間だけじゃない。
それは日常のすべてだった。

高次脳機能障害になってから、僕の世界は一変した。
視線を少し動かすだけで、記憶が消えてしまう。
別のことを考えると、それまでの流れがすべて消えてしまう。
まるで脳の中の映像が、一瞬で消去ボタンを押されたみたいに。

だから僕は、ひとつのことに集中するしかなかった。


🔥瞬間に生きるということ

前の日には、次の日の行動をイメージしていた。
4〜5時間かけて、成功するまでの流れを頭の中に描く。
実際に動く前に、頭の中で何度も何度も練習するんです。

「この順番で進めばうまくいく」
「ここでこう動けば、次の行動がつながる」

そんなふうに**記憶が消えないようにする“流れの暗記”**をしていた。
覚えられないときは、紙に書いた。
小さなメモが、僕の命綱だった。

そうやって、毎日を生き抜いてきた。
だから僕にとって、瞬間瞬間がフロー状態だったんです。


💫極限の集中、そしてフロー状態へ

視線を変えるたびに、緊張が走る。
「忘れないように」「つなげていこう」と、心の中で何度も言い聞かせる。

そのときの僕は、まるでテニスの試合中のような感覚だった。
「よし、やるぞ」と集中して、体中にエネルギーがみなぎる。
心拍数が上がり、全身の細胞が目を覚ますような感じ。

極限の集中の中にいると、
時間の感覚がなくなる。
恐れも、疲れも、過去も未来も、全部消えて、
ただ「今」という一点だけが存在する。

あれは間違いなく、フロー状態だった。
苦しさと同時に、どこか生きている実感を感じていた。
まるで魂が目を覚ましているような瞬間。


🌈できないことより「やってみたい」が勝った

僕は能力を失っても、「やりたいこと」は変わらなかった。
仕事がしたい。
ものをつくりたい。
人の役に立ちたい。

それだけだった。

失敗なんて当たり前。
でも、「完成すればいい」「何度でも直せばいい」と思っていた。
ダブルチェックをお願いして、確実に仕上げればいい。

そう思うと、気持ちが軽くなった。

不得意なことや無理にやらされることは、どうしても続かない。
でも、自分の中で「やってみたい!」と思えることなら、
どんなに失敗しても続けられた。

ワクワクしながら夢中でやっていると、
不思議とエネルギーがふわっと高まっていく。
頭の中に光が差し込むように、
心が温かくなって、
「これだ!」という感覚が生まれる。

それは、魂が喜んでいる瞬間だったのかもしれない。


🌟フロー状態が僕を救った理由

高次脳機能障害になっても、僕は毎日挑戦し続けた。
それは努力とか根性ではなく、
「今に集中して生きる」ことが楽しかったから。

失敗も、緊張も、全部“生きている証拠”。
僕はいつも、能力+1の挑戦をしていた。
それが、自分の脳と心を育ててくれたんだと思う。

今思えば、僕の人生はずっと「フロー状態の修行」だったのかもしれない。
記憶が消えても、魂の光は消えなかった。
その光が、僕を導いてくれた。


✨次回予告

第2話:「見えない障害と見えない努力」
――結果では見えない“内側の奇跡”を、どう積み重ねてきたのか。