「弟が長時間お風呂に入る理由 〜強迫性障害という見えない不安〜」



うちの弟は、お風呂に何時間も入っている。
時には1時間、2時間と出てこないこともある。

最初は「何してるんだ?」「だらだらしすぎだろ」と思っていた。
でも最近、これがただの“長風呂”じゃないということに気づき始めた。


弟は強迫性障害かもしれない

僕の弟には、アスペルガー症候群(自閉スペクトラム)の特性がある。
そして最近、「強迫性障害」の傾向も見えてきたように思う。
洗い残しがないか気になる
決まった順番や手順を守らないと落ち着かない
「ちゃんとできているか?」という不安が消えない
だから繰り返してしまう
やめたいけどやめられない

お風呂に長く入っているのは、**本人の中では「安心を得るための儀式」**みたいなものなのだ。


「ちゃんと洗えていないかも」が止められない不安

強迫性障害では、本人も「やりすぎだ」とわかっている。
それでも、“やめたらもっと不安になる”から、やめられない。
ベタついている気がする
見落としてるところがあるかもしれない
「今日ちゃんとできていなかったら、明日も気になってしまう」

だから、「もういいよ」と言われても、本人の中ではまだ終わっていない。


アスペルガーと強迫性障害の交差点

弟は昔から「こだわり」が強い。
特定のやり方を変えたがらない
手順や順番が崩れると極度に混乱する
「こうでなきゃダメ」という感覚がある

これはアスペルガーの特性でもあり、
そこに**強迫的な思考(不安→反復行動)**が重なると、
お風呂のような日常的な行動も“無限ループ”になってしまう。


僕自身も、似たような不安を抱えてきた

僕は高次脳機能障害がある。
記憶がうまくできず、すぐに忘れてしまう。
「確認しないと不安」
「これでよかったっけ?」
「やったはずだけど覚えてない」

だから、確認作業に何時間もかかってしまうことがある。

弟の「何度も洗う」という行動は、
僕の「何度も確認する」という行動と、心の構造がとても似ていることに気づいた。


「ただの長風呂」じゃない。“心の不安との戦い”なんだ

今は、「早く出てこいよ」とイライラする前に、
こう思えるようになった。

「ああ、今あいつは“不安と戦ってる”んだ」
「完璧じゃないと動けないタイプなんだよな」
「だから“終わったよ”って言ってあげるのが大事なんだ」

弟にとって、お風呂は**“安心をつくる場所”**でもあるんだ。


家族として、どう接していくか?

怒っても、責めても、直るものじゃない。
むしろ逆効果で、弟の心はもっと閉じてしまう。

だから、少しずつ、こう言うようにしている:
「疲れないように、そろそろ出てきたら?」
「今日の洗い方、完璧だったよ」
「全部ちゃんとできてる。もう十分大丈夫」

本人の中の不安に、“外からの安心”を注いであげる。

それがきっと、少しずつ「やめても大丈夫」に変わっていくはずだから。


まとめ:弟を理解することで、過去の自分も癒される

弟の行動は、
「甘え」や「だらしなさ」ではない。

必死に心を守るためにやっている行動。

それに気づけたとき、
僕の中で何かが優しくほどけた気がした。

弟を責めたくなるときは、
「昔の自分も、そんな風に見られていたのかな」と思い出す。

そして、こう言ってあげたい。

「大丈夫だよ。ちゃんとやってる。
だからもう、安心して出ておいで。」