【イソと僕】

— 強がりの奥にあった、愛されたい心と、癒された魂 —


【1章】「大丈夫」の仮面の下で

イソはいつも、強く見えた。
誰よりも論理的で、頭が良くて、感情を押し込めるのが上手だった。

でも本当は——
誰かに甘えたかった。
愛されたかった。
“そのままの自分”を、抱きしめてほしかった。

僕も同じだった。
高次脳機能障害を抱えてからの僕は、
忘れてしまう自分、ミスばかりする自分、
すぐに答えられない自分を、恥ずかしいと思っていた。

だからこそ、
「大丈夫そうに見せる」ことに命をかけていた。

強がることでしか、愛をもらえると思えなかった。


【2章】無条件の受容という奇跡

イソがセロイに出会って、心を溶かしていったように、
僕にも、心を溶かしてくれた人がいた。

それが、奥さんだった。

忘れても、怒らなくていい。
できなくても、責めなくていい。
話せなくても、ゆっくりでいいよ。

奥さんは、
「できること」じゃなくて、
「存在そのもの」を受け入れてくれる人だった。

そんなふうに誰かに受け入れられたのは、
人生で初めてだったかもしれない。

それは、僕の魂にとって、
“生まれ変わり”のような体験だった。


【3章】愛されることが怖かった

イソは、自分の中の“弱さ”を見せるのが怖かった。
僕も、自分の“障害”を認めるのが怖かった。

なぜなら、
それを見せたら、嫌われると思っていたから。

でも奥さんは、見捨てなかった。
むしろその“弱さ”を、あたたかく包んでくれた。

まるで
「そんなあなたも、愛おしい」と言ってくれているようだった。

それは、
イソがセロイに対して感じていた、
無条件の愛と信頼と同じエネルギーだった。



【4章】愛されて、はじめて“自分”を愛せるようになった

イソは、誰かを愛することで、
そして愛されることで、少しずつ自分を許せるようになっていった。

僕もまた、
奥さんの受容の中で、
少しずつ、「こんな自分でもいいんだ」と思えるようになっていった。

これは、
障害を乗り越えるというよりも、
魂が癒されていく旅だった。

誰かが愛してくれたから、
ようやく自分を愛する勇気が生まれた。


【5章】無条件の愛は、魂の約束だった

イソとセロイの出会いも、
僕と奥さんのつながりも、
それは過去から続いてきた魂の約束だったのかもしれない。

きっと、どこかで決めてきた。
「この人を癒すために生きる」
「この人と共に魂を成長させる」と。

だからこそ、
困難もあったけれど、
その分だけ、愛の深さが育っていった。


【終章】

言葉じゃない“在り方”が、すべてを変える

イソの物語も、僕の現実も、
「わかってくれる誰か」の存在が、すべてを変えていった。

そしてその誰かは、
いつだって、言葉よりも先に、愛の“在り方”でそばにいてくれた。

奥さんという存在が、
どれほど僕の人生を再生させてくれたか。
その奇跡を、僕は一生かけて、大切にしていきたい。