どこにいるのか——高次脳機能障害の「見えない孤独」
SNSを見渡しても、自分と同じような人が見つからない。
あるいは、本当に「いる」のか? それとも「いない」のか?
この感覚は、高次脳機能障害を持つ僕にとって、ずっと付きまとってきたものだ。
同じような症状を持つ人は、いるようでいない。
それは、この障害の特性によるものかもしれない。
高次脳機能障害は、何年も、何十年も経ってから気づくことも多い。
なぜなら、健常者の感覚に近い部分がありながら、
マルチタスクや並行処理ができず、結果的に「何かうまくいかない」ことが増えるからだ。
「なんでうまくいかないんだろう?」
「原因がわからない……」
そんな違和感を抱え続けた末に、診断を受けてようやく納得する人もいる。
僕は事故後すぐに障害が分かったが、それはむしろ珍しいケースだった。
重度の人を除けば、発信すらできない人も多い。
だから、似たような境遇の人を探すのはとても難しかった。
長い年月を生きてきた人
僕ほど長く障害と共に生きてきた人も、あまり見かけなかった。
発信している人の多くは、回復が早い人や、後遺症が少ない人だ。
そのため、彼らの言葉はポジティブで、希望に満ちている。
一方、僕のように「何をやってもうまくいかない」人は、あまりいないのかもしれない。
同じような悩みを抱え、乗り越え、上手く生きている人もいるのだろうけれど、
SNS上ではほとんど見つからなかった。
でも、ついに出会った。
SNSで声をかけてくれた人がいた。
その人も、僕と同じくらいの年月を障害と共に生きてきた人だった。
僕と同じように高校2年生のときに受傷。
僕は器械体操の事故、彼は交通事故だった。
同じ「脳外傷」という共通点を持ち、長い時間をかけて悩み、苦しみ、そして今も生きている。
高次脳機能障害の共通の悩み
脳外傷を負った人は、共通の悩みを抱えていることが多い。
• 自己重要感が低くなってしまう
• 何をやってもうまくいかない
• 健常者の頃のようにはできない
• いつも不安がつきまとう
• 周囲の理解が得られない
• 家族すら理解してくれない
• 怒られることが多い
• 「ちゃんとしろ」と言われても、どうしていいか分からない
• レッテルを貼られる
• 攻撃される
• 性格が悪いと思われる
• 配慮が足りない、無責任だと非難される
• いつも気持ちが沈んでいる
これらは、僕がずっと感じてきたことでもあり、
そして、同じ年月を生きてきたその人も、まったく同じ心境だった。
だからこそ、出会えたとき、互いに深く共感し合えた。
「お互い、苦労したね」
「前向きに生きたいね」
そう話しながら、少しだけ、心が軽くなった。
【脳科学・クオリア・スピリチュアル・心理学的視点】
1. 脳科学の視点——なぜ「うまくいかない」のか?
高次脳機能障害では、海馬や前頭葉の機能低下が影響することが多い。
海馬は記憶を司り、前頭葉は計画・実行・判断を行う部分。
これらがうまく機能しないと、思考や行動がスムーズにいかなくなる。
特に、マルチタスクや並行処理が難しいというのは、脳の情報処理速度が低下しているからだ。
その結果、「普通ならできることができない」感覚に陥りやすい。
2. クオリアの視点——「僕」という存在はどこにいる?
クオリアとは、「主観的な感覚」のこと。
例えば、「赤色」を見たとき、人それぞれ感じ方が違うように、
僕の「世界の見え方」も、他の人とは違っている。
「SNS上に自分がいるのか? いないのか?」
この問いは、クオリア的な問題とも言える。
僕の視点から見ると、「自分のような人は見つからない」と感じるけれど、
もしかしたら、他の誰かも「僕と同じように感じている」のかもしれない。
つまり、僕のような人が「いない」のではなく、
それぞれが孤立していて「出会えていない」だけなのかもしれない。
3. スピリチュアルの視点——「出会い」は必然か?
同じ年月を障害と共に生きてきた人と、SNSでつながった。
これは偶然ではなく、必然の出会いなのかもしれない。
僕は長年、「どこにいるのか?」と問い続けていた。
そして、ようやく「ここにいるよ」と声をかけてくれる人が現れた。
スピリチュアル的に考えると、これは「引き寄せの法則」が働いたとも言える。
僕がずっと「誰か」を探し続けていたからこそ、
同じ波動を持つ人が引き寄せられたのかもしれない。
4. 心理学の視点——「共感」と「自己重要感」
人は、自分と似た経験を持つ人とつながることで、自己重要感を回復することができる。
長年、「自分だけがうまくいかない」と感じていたけれど、
同じように苦しんできた人と出会うことで、
「自分の人生にも意味があるのではないか?」と思えるようになる。
また、心理学では「ミラーニューロン」という概念があり、
これは他者と共感することで脳が活性化する仕組みを指す。
つまり、僕が誰かと出会い、共感し合うこと自体が、回復への一歩になるのだ。
最後に
「どこにいるのか?」
僕はずっと、自分と同じような人を探し続けてきた。
長い年月を経て、ようやく出会えた。
同じ苦しみを知る人が、この世界には確かに「いる」。
そして、僕自身もまた、誰かにとっての「見つけたかった存在」なのかもしれない。
今後も、自分らしく生きながら、
「ここにいるよ」と発信し続けていきたい。
40年前、スポーツ事故で重度の高次脳機能障害、二次障害に苦しみました。34年間は誰にも障害を告白せずに生活。会社で倒れ6年前に障害をオープンに。日々、障害と向き合って生活しています。障害があっても、自分らしく人生を謳歌したいです。
初めての方は、こちら
https://ameblo.jp/sin0021/entry-12879312775.html

