歳末助け合い運動 | 都市伝説Navi

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最近は、ホラー・ミステリ系のゲーム制作、スマホゲーム、ペットの話等々。

年の瀬を迎えるころに、よく町内会などで歳末助け合い運動が行われることがあります。
福祉施設を回ったり、募金をしたり、「みなで支えあう」ことをスローガンに精力的に活動を行います。

友人のSさんが住んでいる町もそのような歳末助け合い運動を行っていたのですが、いつの頃からかその内容が少々変わったものになってしまったそうです。

それは、「助け合い」という部分を強調したために起こったものではないか、とSさんは推測していました。

つまり、ただ「助ける」のではなく、「助け合わなければならない」のです。

誰かに助けられたら、代わりに他の誰かを助ける。
言葉ではとても美しく聞こえるのですが、そう語ってくれるSさんの顔は少し青ざめていました。

Sさんは昨年ある男性に「助けて」いただいたそうです。
飛び出してきた自動車にぶつかりそうなところを、男性はSさんを突き飛ばして身代わりとなってくれたといいます。
ただ、実際のところ、身代わりは言いすぎだという意見もあります。
目撃者の証言では、そのまま自動車が通り過ぎたとしても、Sさんにぶつかるようには見えなかったというのです。
けれども、事実として男性は飛び出し、さらにかなり不運の持ち主だったようで結局帰らぬ人となってしまいました。

不思議なことに、男性のお葬式は湿っぽさよりも安堵感が場全体に漂っていたそうです。
Sさんが男性の家族にお詫びに行った時も、皆まるで何か憑き物が落ちたような顔をしていたといいます。

その原因は程なくわかりました。

一昨年、男性の妻が川で溺れていたところをある青年に助けられた、というのです。
助けあげた後、青年はそのまま力尽き流されていってしまいました。
ちょうど歳末助け合い運動の時期にあったこともあり、それと絡めて新聞・町内の会報などで青年は英雄的に扱われました。

ただ、その扱いとは反対に、男性家族は追い詰められました。
他の人をどれだけ助けても、命をかけた青年には到底追いつくはずがありません。
けれども、「助けられた命」という言葉は、町のどこにいてもついて回りました。
男性にとってその言葉を払うには、青年と同様の方法をとるしかなかったのです。

Sさんは「馬鹿らしい話だ」と笑っていましたが、目はとても真剣でした。
そして、ふっとカレンダーに目を向けました。

カレンダーには12月31日に大きく丸がついていました。

あと半年もすれば、また歳末助け合い運動の時期になります。