製作年:2000年
原題:섬(島)
邦題:魚と寝る女
脚本:キム・ギドク
監督:キム・ギドク
撮影監督:ファン・ソシク
出演:
ソ・ジョン
キム・ユソク
パク・ソンヒ
チョ・ジェヒョン
【あらすじ】
女主人ヒジン(ソ・ジョン)の釣り宿には今日も様々な境遇の人達が訪れる
元恋人を殺害し自殺場所を探してここにたどり着いた元警察官のヒョンシクのように
拳銃で自殺を試みるものの、自殺し切れなかったヒョンシクは次第にヒジンを求め始めるようになる。娼婦の一面もあるヒジンはヒョンシクに気が向き始めているからこそ頑なに彼を拒む。彼女は今はいないかつて愛した男の影をヒョンシクに重ねていく
【感想】
この「魚と寝る女」震える程美しい映画です
恐ろしいまでにこの物語の世界を描写した美しすぎる映像の数々
映像美だけに関してはキム・ギドク監督作品の中でも1・2を争う作品だと思います。
正直まともに凝視出来ないシーンもあります。ヴェネチア国際映画祭で失神者が出たというのもあながち嘘ではないでしょう。韓国内でも当時は大分批判も受けたようです。
それでも何度も観たくなるキム・ギドク作品に共通する魅力がこの作品にもあります。
面白いと思う映画はたくさんあるのに何度も観たいと思える映画はそう多くはありません。
それじゃどうしてキム・ギドク作品は何度も観たくなるのかと考えてみると、映画の中の表現自体は残酷なものも多く見受けられますが作品の根底にはそういうものを超越している普遍的な何かを感じるからだと思います。
その何かを感じたくて何度もみたくなるのかもしれません
以下ネタバレあるかも;;ご注意を
キム・ギドク監督の『美しさ』に対する考えとは、様々な感情や様々な境遇の混合物、すなわち人生それ自体なのだそうです。なので普通なら一面的な幸福などにフォーカスして美しいと感じたり表現したりしますが、キム・ギドク監督は人生そのものを美しさとして表現しているのだと思います。
物語というものは誰の視点であるか、また、どこにフォーカスしているのか、それによって誰しもが善にもなり誰しもが悪になるというのがキム・ギドク監督の考えなのだと感じます。
この映画もやはりどこかで超次元の世界に突入してるはずです。ラストの水面から男がパッと出てくるとこからはすぐに見分けがつきますが、それ以外はうまく溶けこんでしまってなかなか見分けがつきづらいです。その辺は次見るときのお楽しみですね。
ラストのヒョンシクが水面に浮かぶ茂みの中へ消え、その茂みがヒジンの茂みに変わっていく。つまりヒョンシクは生まれた場所へ帰って行ったのです。これはやはり死の表現なのではないでしょうか。
僕的にはヒョンシクだけ死んだか、あるいは二人とも死んでしまったとも感じました。
彼女が以前愛したであろう男の痕跡もいくつか出てきますがその中のひとつで小屋の裏に停まっているボロボロのバイクがあります。そのバイクの持ち主はバイクをここに置いてどこかへ行ってしまったのか、バイクを置いてどこかへは行かなかったのか…
もしその人も湖の底に沈んでいたならやはりヒョンシクも…
タバンのアガシであるウナが乗ってきた原付は湖の底に沈めてしまいましたが、ウナの乗っていた原付と愛する人が乗っていたバイクでは思い入れも全く違うでしょうから沈められなかったのか・・・
その人も人生の中で何かがありここへたどり着いたのか・・・
一度だけで全てを覗き込むことの出来ない世界がそこにはあります。
何度も見て色々な感じ方をできるのがキム・ギドク監督作品の魅力の一つでもあります。
変な感じですがこの映画は魚的な視点もあったりしますよね?
人を魚に見立てたり、魚や鳥を人に見立てたり…
時に人間も水槽の中の魚やかごの中の鳥とそう大差ないのかもしれません。
でも犬を虐待するとこだけは全く意味がわからなかったな…
それと残酷な中でも何故か笑える部分があるというのもキム・ギドク監督作品の中では度々そういう場面に出くわしますね。
とまぁ
このようにキム・ギドク監督の作品は観る人の数だけ答えのある映画だと言うことです。かといって何も考えずに映像美の世界に浸っているだけでは楽しめないかと言うとそんな事もありません。それだけでも充分楽しめる作品です。
さて、
長くなってきたのでそろそろ最後にします。
この映画いくつか濡れ場もありますが
僕が一番エロいなと思ったシーンを紹介して締めくくりたいと思います。
それは、
ズバリ『新しい出発を表するように二人でヒョンシクが泊まっていた釣り宿のペンキを塗り直してるシーン』
↑これですw
全て塗り終わった後に何度も絡みあうハケ、あれが妙にエロかった…
(変態とは言わないで)
ともあれとうとうこれでキム・ギドク監督作品に全て一通り触れることが出来ました
感無量です
ということで次は「アリラン」が待っています!
とてつもなく楽しみです
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