独創的(変態)試作SMG「ダグラス」 | 黄昏オヤジの暴発日記

黄昏オヤジの暴発日記

退職後の第二の人生を手探りで進むオヤジのモデルガン+独り言。黄昏に染まりながら気まぐれに発火しつつ、この世の由無し事に毒を吐く(令和4年5月20日・タイトル一部修正)

 前にも述べたが、奇妙な銃が好き。スタイルもそうだが、システムが変わっているとなお良い。そんな銃を見つけると、ついつい嬉しくなり自慢したくなる。そんな変態趣味のオヤジがまた見つけた。今回の銃も、かなり変である。

 

 ヘリカルマガジンという弾倉がある。有名なのはキャリコであるが、それ以外にもロシアの「PP-19・ビゾン」や「PP90M1」、北朝鮮の「88式」、ハンガリーの「Danuvia・VD-01」、中国の「チャン・フェン(Chang Feng)」SMGなどがある。

*左が「PP90M1」、右が「チャンフェン」

*左が「VD01」に、右が「88式」

 

 このヘリカルマガジン、一般には1985年にキャリコが開発したものとなっているが原型はずっと以前に存在する。それがエバンス・リピーターライフル。アメリカ西部開拓時代の1873年から1879年にかけて約15000挺製造された。

*エバンスライフル。機関部がカバーに覆われ、少しもっさりとしている。トリガーガードと一体となったレバーで操作し、中央、眼のように見える窪みからカートがエジェクトされる。ここにカバーの付いているモデルもある。下は設計図とストック内ヘリカルマガジンの実物。

 

 スタイルはスペンサーライフルに似ているが、機関部が金属製のカバーで覆われたようになっており、すこしもっさりとした印象を受ける。最大の特徴であるマガジンはストック内に収められている。カートリッジがらせん状に装填されるようになっており、トリガーガード状のレバーを動かすとらせん状のマガジンが4分の1ずつ回転してカートリッジが送り込まれた。まさしくヘリカルマガジン。ただし、人力操作のレバーの動きによるところが、スプリングの力でカートが送り込まれるキャリコとは違う。

 当時、スペンサーライフルの装弾数が7発、ウィンチェスターM1873が15発のところ、エバンスは最大で34発だったというから群を抜いていた。しかし、銃本体の耐久性や使用カートリッジ(センターファイアの44口径弾)がこの銃専用であったことなど、いろいろと不都合もあったらしく軍の採用にはならなかった。それでも約15000挺販売され、現在でもかなりの数が残っており結構人気があるらしい。時代考証がリアルになった最近の西部劇にもたまに登場することがあるようだ。

 

 ところで、キャリコとエバンスの間には100年ほどの期間がある。この間、一度もヘリカルマガジンは採用されなかったのだろうかという疑問がわく。

 

 そこで登場するのが今回の主役「ダグラス」なのである。


 1960年代後半(一説では1969年)にカナダのクリフォード・ダグラスという人物によりに設計された口径9ミリパラベラム、装弾数50発のサブマシンガン。

*何がどうなっているのかよく分からない「ダグラス」SMG。なかなかにそそられるスタイルをしている。ブルバップタイプであるが、それを差し引いても奇妙な形の銃である。内部機構がむき出しになっているようで明らかに試作銃だとわかる。マガジンは装填されていない。

*左側面。これも本体にマガジンは装填されていない状態。銃口にはマズルコーンを斜めに削いだような簡単なコンペンセイターが装着されている。レシーバー後方の立っている小さなハンドルがボルトコッキング用ハンドルだろう。下に置かれているのがヘリカルマガジン。突き出したロッドがボルトと干渉し、マガジン内部を回転させる。

*ヘリカルマガジンはこのように斜め下から差し込む。 

 この銃には大きな特徴が2つあり、その1つがヘリカルマガジンを採用していること。 本体後方斜め下から差し込まれる円筒状の物体がそのマガジンなのである。

 マガジン内部にはスプリングはなく、マガジンから突き出したロッドを介して、射撃の際ボルトの動きがマガジンに伝えられる。そうすると中のスパイラルが8分の1ずつ回転し、カートを送り込む。その点ではキャリコよりもエバンスライフルに近いといえる。

 しかし、ヘリカルマガジンを採用したブルバップとなれば確かに個性的な銃ではあるが、変態というほどではない。下の図のように、ほかの設計者達も考えていたことがうかがえる

*「ダグラス」とは違う銃の概念図。1979年のスイスの特許に添付されていたらしい。カルロ・タラウレッティという人物によるものだが、それ以外何も分からない。これも相当にイケているというか、心をかき乱されるスタイルであり、なんとも正体を知りたいものである(-_-;)

 

 ではなぜこの「ダグラス」が他に抜きん出て変態銃であるというのか。そう、この「ダグラス」にはもう一つの大きな特徴がある。

 この銃、「無反動短機関銃(RecoillessSMG)」なのである。

 思わず「なんやそれ?」という大合唱が聞こえてきそうだが、かく言うオヤジも一人でちょっと叫んだ。 

 「無反動短機関銃とはいったいなんぞや?」と。

 

 以下、オヤジなりに必死に説明を試みる。

 

 この銃の構造に関して見つかった図面は下のものだけ。ちなみに、ネットで見つけられた写真も掲載しているだけ。ほかにあるのかもしれないが探しきれなかった。

 上の図面とその説明文からなんとか理解できたのは以下のとおり。

 バレル①はその周囲にスプリング⑧がセットされた状態で太いパイプ②(+⑤、⑥)の中に収められている。

 そのスプリング⑧は、前方(マズル側)をパイプ②に、後方(チャンバー側)を少し太くなったバレル(チャンバー部分)により挟まれている。

 パイプ②の前方(マズル方向)ブッシング③にはバレルが通る穴が開いておりバレル先端が飛び出しているが、後方はボルト④とピン⑦で固定されて塞がれた状態となっている。

 したがって、バレル①はパイプ②内で、固定はされていないがスプリング⑧により後ろ向きのテンションをかけられ、ボルト④に押さえつけられている状態にある。

 その状態でバレル①後部のチャンバーにカートリッジが装填され発火、そうするとバレル①は前方に、ボルト④は後方に動く。その相互の動きにより反動を相殺する(ブローフォワードとブローバックが同時に起こっている)。

 また、その瞬間バレル①後部のチャンバーとボルト④の間に空間が開きケースがエジェクトされ、閉鎖する際に新たなカートリッジが装填される。

 発射時の反動を制御する方法として、カウンターウエイトによる方法があるがその系統かなと思う。

 しかし、これ以上の説明図などはなく、個々のパーツがどんな形をしていて、どんな位置関係にあり、どんな動きをしたのかは全く分からない。正直なところ肝心の部分が謎のままなのである。

 

 なお、設計者のダグラスの目的は、反動を完全に無くすのではなく、制御しやすいレベルに押さえるというものであったらしい。

 下の射撃シーンは1973年に行われたカナダ軍によるトライアルの状況を撮影したもの。これを見てもマズルジャンプしているが、十分に片手で制御できているように見える。そういった意味では「無反動銃」ではなく「低反動銃」という方が正確なんだろうなぁ。

*トライアルの様子。エジェクトされたカートが2つ見える。マガジン装填すると変態度上がりますなぁ(^-^)

 

 ただ、通常のブローバック作動に比べると信頼性に難があるという評価で、これ以上プロジェクトは進行しなかったようだ。確かに、射撃中、射手が激しく動いたり、銃に強い衝撃が加わったりするとバランスが崩れて作動不良を起こしそうに思える。実戦中にそんなことになれば致命的になるから、軍は拒否するだろうね。

 ブルバップでヘリカルマガジンに無反動とくれば、変態度もここに極まれりというくらい個性の塊のような銃。なんとかもっと詳細を知りたいのだがオヤジにはここまで。限界である。

 どなたか詳しい方があればぜひご教示願いたい。

 

 ということで、今回は少し未練を残しながらおしまい