とある一つの物語【中】 | ー常永久ーシンイ二次創作

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とある一つの物語【中】





領土的にはまだ元のものだが、この遥か遠くまで流れている鴨緑江を越えさてしまうと、我々の小国はあっという間に占拠されてしまう。
華江島から王都を移し、高麗として長年この場所を何とか守って来ていた。
高麗軍は敵本土が見える東側河岸に陣を張っており、小競り合いは頻繁にはあったが今まで向こうの主戦力をなかなか見せてはくれなかった。


生憎天候が悪く生暖かい風まで吹いて何時雨が降ってもおかしくない。

高麗陣地には敵陣が見える程の高台が一つあったが、ヨンが戻って来るとそこは崩れ落ちていた。

「燃えているではないか!」
「矢に火を付け放って来た!見張りがやられてしまった!」
「報復だ」

――見た事か。

大国故(ゆえ)の当たり前の行動。
そう来ると知っていたのにと、ヨンは一瞬でも持ち場を離れた自分に後悔した。


「・・・」

ザン・・・ザザ・・・。

流れの早い波音の中に微かに別音が混ざる事にヨンは気付き、周囲の軍隊に手を振り後ろへと退けさせた。

水面には血に染まった隊士の身体が浮かんでいる。
しかし、それでは無い。
高台が壊れ雨が降ると、更に此方が不利になると向こうもわかっているのだ。


そうだ、知っていた。
何故自分が最前線に配属されたのか。
国の武器になれという事だろう。
“暗闇”を奴らが待っているのなら
・・・それを崩してしまえばいい。

目を凝らすと対岸にも大勢の軍隊が待ち構えている。

「・・・ふん」


チチチ・・・。

内功が一箇所に集まる気の流れを感じるのを久しぶりだと感じながら、ヨンは右手に気を溜めていく。

対岸の敵全体に動揺が走った。
空が明るくなった訳では無くそれは一人の男から放たれているのだと理解し、
急いで大笛を鳴らすとざばりとヨンの正面波が大きく揺れ、中から敵の軍隊が飛び出して来た。

しかし。


「遅い!」

ヨンは、既に辺りを照らす程の眩さになっていた手を前へと向けた――。




対岸の軍隊達の数人も倒れている者もいた。
それでも生き残った隊士達は警戒しながら、河に潜んでいた軍隊が戦闘不能になったと知ると河岸から離れて行った。

波が落ち着くと、静まり返った場に風や葉の音が再び鳴り始め、
顔に付いた水を鬱陶しそうに拭いながらヨンが後ろを振り向いた。


「傷を負った者は治療してこい!警備の間隔が開きすぎている。甲乙隊の配置を変えろ!」

ヨンの怒声に唖然と呆けていた隊士達は、我に返ると急いで移動し始めた。




その後、数ヶ月経ち最前線の指揮をヨンが取る様になっていた。


皆チェヨンが解体された“赤月隊”の唯一の生き残りだと知っていたが初めて目の前で見た雷攻は噂よりも凄まじく、潜めていた力がこれ程とはと驚愕しそれと元々名家チェ家の嫡子もあってか徐々に軍隊はヨンに従い始めている。
更に、この若さながら高麗の最前戦部隊『隊長』となったチェヨンは、元から来る敵の脅威となっていた。
徐々に敵陣の数も減り、戦略を練っているのだろうが先に立つ“厄介な鬼神”を倒さなければ進む事は出来ないと悩んでいる様だった。


「王宮に恩を売っている訳ではない。帰還したら、平民に戻して貰うつもりだ」
「そうですか」
「・・・・・」

しかしながら、医員を纏めるチャンビンとのそりは合わず時々衝突する事もしばしばだった。

そして数ヶ月経ってもこの男は『女人』に関する情報を一つも教えなかった。


「他人の女人に興味など無い」
「そもそも、隊長に関係ない方です」
「あ?」

――自分が“チェウォンジク”の嫡子でなければ、とお前が吐いたのではないか?

険しい顔でチャンビンを睨んで来たヨンに辟易し、

「・・・全く」

とため息を吐き出した。






チャンビンは典医寺の自室で頭を抱えていた。



「・・・はぁ」

何度ため息を吐いたか。

昨夜王宮にいるチェ尚宮がわざわざ典医寺に来て気まづそうに頭を下げて来たのだ。

「・・・よろしく頼む」
甥のチェヨンの事を。

声を出さなくても次の言葉は想像出来た。

「帰って来たら直ぐ婚儀を挙げさせてやるからな」
「王様のお心遣い感謝致します」

小さく臆病な王までも此方を心配しているとは・・・。

「次の補充部隊と一緒に向かいます」
「気をつけてな」

頷くとチェ尚宮は典医寺を後にし、チャンビンは再び肩を落とす。

「はたして、此処に帰って来るのは何時になるのか・・・」

一年二年では無理だろう。
最悪チェヨンが帰還する時に自分も戻って来れるかもしれない。
承諾したのは自分なのだから、後悔はするなと心に誓った。

だが、初めてチェヨンを見たチャンビンは複雑な気持ちよりも先に疑問が浮かんでいた。
はたしてこの男がこの場所に来てまで守らなければならない人間だろうか?とさえ思ったのだ。

しかし、暫くして彼は怠惰しているが意識は常に敵陣へと向いている事に気がついた。
長年根付いたものは中々抜けないものだ。

「・・・なるほど」

当分は様子を見るかと思いながら、仕事である医員として後方支援部隊を指揮する事にしたチャンビンだった。



彼が此方に近付いて来た事は偶然で、向こうが自分に意識を向けて来たのも偶然だ。
だが、チェ尚宮から頼まれた事もあの方から頼まれた事もヨンに伝える気は微塵も湧かなかった。

それが仁義に反している訳では無い。

ただ一言。
「内緒でお願いしたいの」
そう言われたからだ。




「・・・」
「・・・」

診療所の机を挟みお互いが無言になったのは久しぶりだと思う。

何時も隣り部屋まで届く程の軽やかな声で患者を診ている人が寡黙になると、こちら側も不安になるのは何故なのか?

「・・・わかりました。行ってきます」
「ありがとう!」

――暗かった部屋が一瞬で日が灯った様に暖かくなるのはこの人の特別な力なのだろうか?

知らせるべきか?との問いにあの方は、ぶんぶんと首を横に振り拒否をした。


「内緒でお願い・・・ね?」

手の平を合わせ、
拝む様に此方を見て来るその人に、

『否。』

など誰が言え様か――。





【後】に続く
△△△△△△△△

誰かの頼みで(バレとるよ)嫌々来ていたチャンビン先生・・・
早々と軍隊の隊長になったヨン氏('ω')

ただ単に無性にヨンの戦う場面を書きたかった私でした✨(*^^*)💞💞




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キーホルダー届いている様で安心しました😊
まだの方はもう少し待っててね💕︎
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