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永久機関と君と⑦
奉恩寺に足を進める度にウンスは機嫌が悪くなっていく。
元々こういう場所は嫌いな上、自分の前を歩く“メヒ”と名乗る女性がチェヨンの関係者だと知り嫌な予感しか湧かないからだ。
女性が絡むのは何時も相場が決まっている。
行き着く先は修羅場だ。
あの顔とスタイルのチェヨンが女性にモテない訳がない。更に有名製薬会社の次期社長なら彼が手を振り払ってもぞろぞろと寄って来るだろう。
・・・もしかしたら、自分もその中の愚かな一人に入るのかしら?
チラリとメヒを見ると、長い黒髪を靡かせ細くスタイル良い体を見せ付けるかの様に堂々とした歩みは通り過ぎて行く観光客の視線さえも集めていく。
彼女もまたチェヨンと同じ名門大卒と裕福層で育った雰囲気を無意識に出しており、その後ろを歩く自分はきっととりまきに見えるのかもしれない。
「・・・あの、お話って何でしょうか?」
いい加減早く会場に戻りたい。
さっき気になった企業ブースが閉まったらどうしてくれるのか?
結婚相談所のイベントで会った男性も会場にいたのに・・・。
ウンスの声にメヒは漸く止まり後ろを振り返った。
・・・だが――。
「・・・はい?」
彼女の話に徐々にウンスは混乱していく。
「貴女は何の話をしているの?」
「とぼけないで。あの男は貴女がいるからと誘いを断って来た。いいえ、最初から騙すつもりだったのだわ」
忌々しく吐き捨てる様に話す彼女の言葉がウンスにはまだ理解出来ていない。
「チェヨンさんですか?・・・彼とはこの間初めて会ったばかりですが?」
彼女と別れたのが交通事故を起こした時期ならもう半年前になる筈だ。
その時にチェヨンと自分はまだ知り合ってもいないのだが・・・。
「あの男は『彼女を見つけた、君じゃない。』とまで言ったのよ。私がどれだけ会社で孤独な彼の面倒を見てあげたと思っているの?でなければあんな暗い男、誰も関わりたくないのに!」
「何て事を・・・」
彼女の言葉の端々からチェヨンを見下しているのはわかった。
そして会社に入った何らかの思惑があった事も。
――2人は恋人同士ではないの?
恋人に対してその言い草はあまりにもチェヨンが可哀想だ。
だが、話を聞くと確かにチェヨンの行動に違和感を感じる。
『ユウンスを見ていた。』とは?
メヒの言葉に、よく寄るカフェをふと思い出したが、その時に見た事があったのだろうか?しかし、会社員のスタイルは皆類似しているし他人をしっかり見る事など無かった。
彼から声を掛けてられた事も無いのに、何時の間にか自分は2人の修羅場の関係者に巻き込まれてしまったの?
ウンスははぁと長いため息を吐き出した。
「あの、忙しいので戻っていいかしら?後は2人で連絡を取り合って貰えば・・・」
「あの男が意識を戻したせいで、全てバレてしまった。
クライアントからは契約破棄され私の生活はもうお終いだわ!それも全て貴女がいたから・・・!」
「クライアント?何の話・・・えっ?!」
声を荒げたメヒはバックの中から刃物を取り出し切っ先をウンスに向けて来た。
正面から襲って来た彼女を避ける為に身体を動かしたが、腕に痛みを感じ服だけではなく肌も少し裂けたのがわかる。
「痛っ・・・」
困惑の中メヒに警戒をしたが、彼女の眼差しは切羽詰まった感情とウンスへの狂気じみた憎しみが含まれ、それは裏切ったチェヨンでなくコチラを傷付ける事で彼にダメージでも与えるつもりなのか彼女の瞳は確実にウンスを標的としていた。
素早い動きで着ているジャケットを掴まれ境内の冷たいコンクリートに引き摺り倒されたウンスは、擦った手の平や膝の痛みに顔を歪めていたが、その間におい被さってきたメヒは刃物を持った手を高く振り上げた―――。
「貴女が現れなければ、全てが予定通りに進んでいた筈なのに!」
「?!」
何故か、
ウンスの頭の中に
チェヨンの顔が浮かび上がったが、
そのチェヨンの姿は、
スーツ姿では無く、
時代劇の様な黒い軍服姿だった――。
それでも、
『チェヨン!助けて!』
ぎゅっと目を瞑ったウンスだったが、刃物が襲いかかって来る事も無い。
そして、彼女の身体の重みも消えている。
ゆっくりと目を開け消えたメヒを探そうとしたウンスは傍にある別な気配を感じ横を見た。
そこにいたのは―――。
「チェヨンさん?!」
「イムジャ無事ですか?!」
俯せに倒れているメヒの腕を捻り上げ、
抑え込んでいる“スーツ姿”のチェヨンがウンスを見ていた――。
「・・・・・・はっ」
うたた寝していたウンスは慌てて机から顔を上げた。
何か夢を見ていた気もするが、覚める寸前ヨンの顔が出て来た様にも感じる。
きっと早く会いたいと思っていたからだろうか?
時々見ているプロジェクターで両親を懐かしんでいる筈なのに、結局最後はチェヨンがどうなったのかが心配になってしまうのだから。
「・・・そういえば、私は彼に言葉で伝えたかしら?」
ちゃんと好きだと、愛してると言っただろうか?
そして彼も言ってくれた・・・?
「いいえ、言ってくれたじゃない。毒が治ったら離れないと言ったもの」
はなみ離さず懐にしまっている懐剣を触り、彼はきっと大丈夫なのだとウンスは自分に何時言い聞かせていたのだった―。
借りた空き家を簡単にだが改装し、小さな庭に薬湯を沸かす為の竈門を作った。
縁側の板張りも直して貰いそこに山で見つけた生薬を並べていくと、典医寺での穏やかだった生活を思い出し更に寂しさが増してしまう。
「流石に蛙や蛇の乾燥は無理だけど・・・少しは医者らしく見えるよね?」
現代から少しだけ持って来た消毒液や医療道具は洋服棚の奥に隠し、使用は必要最低限だけにしようと決めた。
ここに来て偶に家を不思議そうに見に来る人達は山の麓の小さな村の者達だと家を貸してくれた男性は教えてくれたが、
「一人暮らしの女人は怪しまれてしまうし、勘繰る輩(やから)もいる。だから、アンタを王宮から預かった薬員だと周りに伝えておいた。それでも言い寄る奴はいるだろうから、気は抜かん様にな」
チェヨンがいる時代から更に100年前、高宗王の時代はモンゴル軍の高麗侵略が頻繁にあり、王都もまだ華江島にある時だ。本土に王都が無い分あちこちにモンゴル軍もだが、位を盾に傍若無人に暴れる高麗軍もいるという。
「アンタが言う“崔”とはあの“崔家”かね?だとしたら、その名を使えばまだ安全かもしれないがなぁ」
「・・・さあ、どうなんでしょうか?」
――・・・確か、60年続いた崔一族がこの時代王宮を仕切っていたと聞いた事が。
・・・ま、いいか。
だが、ウンスの許嫁は“崔瑩(チェヨン)”という名を周囲に知らせたおかげか、
麓村の町民達の警戒は徐々に薄れていった――。
⑧に続く
△△△△△△△
メヒとのこの部分はアルカナではアメ限にもなっていますが単にメヒの部分を読みたくない人向けだったので、何かを隠すものは特に無かったのよ🙂
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