![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240111/02/simrst/69/4a/j/o0792019615388061588.jpg?caw=800)
永久機関と君と②
暗い部屋の中でウンスは目を覚ました。
ハッとして辺りを見回し、自分の部屋だと理解するが無意識に床に何か散らばっていないか確認してしまう。
当たり前の事だが、部屋の中には瓦礫も血塗れの身体の一部も落ちてはいなかった。
「・・・またあの夢だわ」
はぁ、と汗が滲んだ額を拭く。
あの時確かに頭上から男性が手を伸ばして自分の名前を呼んでいた筈なのに、気付いたらウンスは江華島の病院に運ばれていた。
後遺症が心配だからと執拗く実家に帰らそうとする両親を説得し、三日程入院した後何時もの生活に戻っている。
頭にはコブが出来ていてその原因を尋ねると、施設の壁の一部が剥がれウンスの頭に落ちてきたという。
そんな事は・・・!
しかし、あの場所に落ちていたのはその瓦礫だけで、ウンスが見た血塗れの身体の一部や謎の男性などは無かったと言い、そんな事を聞いてきたウンスに両親はやはり帰ろうと迫ってきた。
あれから1ヶ月経った。
世間では日本と共同開催のFIFAワールドカップで盛り上がっているが、スポーツに疎いウンスは変わらず閉鎖された研究室に篭っている。
あの切断された腕は何だったのか?
あの上半身だけの男性は誰だったのか?
砂ぼこりではっきり顔が見えなかったが、あの男性は自分を知っていた。
自分を助け様と必死に手を伸ばしていたのだ。
ちらりと見たがあの男性の顔は知らない。
大学内でも見た事は無いし、そもそも自分を知る男性の知り合いなど皆無に近かった。
試験管や分裂機の機械音だけが響く無機質な研究室は、医大のもう1つの島とも言われている。
この中に入る者など将来は細胞の研究者か薬剤を何万種類扱う調合師か。女性なのにそんな場所に通うウンスもまた同期からは失笑を受けていた。
「結婚してしまえば、そんなものは役に立たないわよ。そもそもそんな研究は男性がするべきだわ」
クラスメイトはウンスを指差しそう揶揄する。
「だったら貴方は将来楽出来る恋人でも捕まえればいいじゃない!」
「そのつもりよ!」
睨み合って別れたその彼女は数ヶ月後、会社の社長だという男性と結婚するのだと言い大学を去って行った。
最後に見た勝ち誇ったあの顔を思い出し、怒りでウンスは叫びたい気持ちになる。
大丈夫、自分が選んだ道は間違っていない。
集中力が切れない様にと呟きながら顕微鏡を覗いているとそっと背中を叩かれた。
「はい?」
振り返るとのアン先輩がウンスを見下ろし優しい笑みを向けていた。
「もう昼だよ」
「あ、あら。集中し過ぎてて・・・」
「はは、君は真面目なんだね」
優しい笑みはウンスの気持ちを高揚させるには充分で。
「そういえば、怪我の傷は治ったのかい?」
「え、ええ・・・」
もう頭のコブは消えている。
病院に入院した理由を研究室の仲間や教授には教えていたが、あの身体の一部や男性の事は言えず結局周囲には両親が言った内容を伝えていた。
――『ウンス!』と呼んだあの男性は一体誰だったのか?
「ユさん?」
「あ、はい」
だが、再びアン先輩が呼ぶ声にウンスは顔を向けた――。
――ああ、きっとあれは男運が悪い自分を示唆した出来事だったんだわ!
アン先輩を見て浮かれていたあの頃の自分が情けないと吐き捨て、ウンスは彼から貰ったバッグやアクセサリー、纏めた研究の資料などをゴミ袋に投げ捨てた――。
③に続く
△△△△△△△
時々現れるよと言ったお話。
ウンスはあれから色々夢に見る様で・・・。
こちらの話は何話か載っていくと“テーマ“が変わります。それで何のシリーズかわかるかと。
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