[でんべさん年越し企画]恋をするのは難しく・・・② | ー夢星石ーシンイ二次創作

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[でんべさん年越し企画]【悋気】

恋をするのは難しく・・・②





わかる訳ないか。

知らないならそのままで良いし、言うつもりも無いんだけど――。




数日前に典医寺での診療が落ち着いた昼頃、チャン侍医にその質問をしてみた。


すると。


「飲みます。

その機会を逃して悔やみたくありません故」


意外なチャン侍医の即答にウンスが驚いていると彼は静かに笑いながら、


「私は一人で楽しみたい人間なので」


要は賑やかな場所や行事は苦手で、邪魔されず酒でも飲んでのんびりしたいという。


わかるわぁ。

ウンスはチャン侍医の息抜きに共感し、頷いていたがそんな姿にチャン侍医は何時もの笑みを浮かべながら、


「・・・これは、本能で選ぶか理性で選ぶか・・・。

医仙が望まれる答えを貰えたら良いですね」



――・・・流石だわ。侮れない。



チャン侍医の笑みが何故か”ニタリ”と音がした様な気がした。




あの後、ヨンに連れ出され大人しく王宮に戻って来たウンスは典医寺前まで来ると後ろから付いて来るヨンに手を出し「これ以上付き添わなくても結構」と制した。

足を止め、きょとんとウンスを見つめて来たヨンを一瞥しウンスはさっさと部屋に入ってしまい暫くその場に立っていたヨンだったが、ウンスが窓から覗き見た時には彼の姿は消えており結局お土産も何も買わず帰って来ていた。


つまみも無い酒も満足する程に飲んでいない。完全には気持ち良くならなかったとため息を吐きながら寝台へと横になっていたウンスは二時間後戻って来たチャン侍医に“琥珀酒”というお酒まで飲んだと言われ、思わず「何て事!!」と髪を掻き毟ったのだった。








部屋に戻ったヨンは常備している鬼剣を机に置くと、寝台に腰を落とし考え始めていた。


帰る途中ウンスに何度か“買いたいものがあるなら買えば良い”と言ったが、ウンスは「無い」と言い真っ直ぐ歩いている。まるで自分に言っても意味が無いとばかりに先程のチャン侍医に向けていた空気とは違う冷たいものを背中からも感じ取れていた。


・・・いると言えば良かったのだろうか?

いや、しかし、興味が無いものを欲しいと嘘を付くのは意に反している。



「大して味わっていないからな・・・」


ポツリと呟きヨンはあっと声を出し立ち上がった。


それだ。

そう言えば良いではないか?

自分はそういう人間だ。

そう育ってきている故、何かを吟味する、深く考える事はしなかった。


戦や戦略事は得意だが、そんな趣きめいた事は知らない。


「ああ、それだ」


それを言えばきっとウンスの態度は少なからず柔らかくなるだろう。

漸く前の様に此方を見て話してくれるまでに戻ったのだから、それを言えば納得する筈だ。






次の日役目を終え夕餉前に典医寺に寄ると診療所の片付けを手伝っているウンスを見つけ部屋に入った。

突然入って来たヨンにどうしたの?とウンスが尋ねると、


「・・・昨日の問いに答え様かと思って・・・」

「問い?え、あの質問?いや、あれは・・・別に、昨日チェヨンさんの答えは聞いたわよ?」


だから、もういいわよ?と困り顔になるウンスに違うとヨンは首を横に振った。

イムジャには嘘は付きたくない。


「別に全部が同じ味に感じる訳では無い。しかし、美味い不味いと言う程味わってはいない・・・」


「だから?」


「それが例え美味い酒で貴重な酒でも俺に飲んで欲しいというなら飲む」


酒がそんな事を言う訳がない。

それ位興味が無いのだとウンスに伝えたかった。







「・・・もういいわ」





「・・・え?」





硬直するヨンを見ずにウンスは自分の医療器具を竹箱に包むと診療所を出て行った。



意味がわからずヨンは部屋の端の机に座り書き物をしていたチャン侍医に顔を向けたが、彼は筆を置き横の書庫室に入って行く。




――微かに肩が揺れていた様に見えたのは気のせいか?




「・・・何だ?」




一人残されたヨンは診療所の部屋で呆然と立ち竦んでいた――。








それは江南病院に勤務中の頃聞いた質問だった。



何を?と問われれば単に“それ“は男女の駆け引きで、強か(したたか)といえばそう。

経験豊富な人が聞けば、


「・・・それは、誘ってる?」


と薄い笑みとそちらに持って行こうとする空気を出して来るだろう。




「・・・はぁ、何か馬鹿みたいだなぁ、私」


そんな現代の駆け引き、この時代に通じるかどうか来た時からわかっていたではないか。


それでもチラリと出した自分にあの男は、

「いらない、貴重だから何なのだ?」


次の日には、

「自分をその気にさせる物以外は興味無し」


――何を1日考えたの?

単に”飲んで欲しいなら俺をその気にさせろ“と言って来ただけだ。



「・・・私だってわかんないわよ。そもそも出来てたら彼氏だって沢山いた・・・だろうしぃ?」


変だな、追うのは得意だと思っていた。

しかし、実はそうでも無かったらしい。

大学時代は何かしら向こうが要求してきたものに応え様としていただけで、相手が何も他人に望まない、物事に対して興味も湧かないのだからこちらもどうする事も出来ない。



だから、ふと思い出したそれを彼に試してみたのだ。


なのに――。



「・・・”珍しい“とか“この国では見た事が無い“とか調子に乗って例えた自分が恥ずかしい!」



女官や薬員から

「まるで天女様の様です」

「お美しいです」

と言われ、自分は何の自信を持ってしまったのだろうか?




「・・・はあ、やーめた。

もうチェヨンさんに聞くのはしないでおこう」




結局現代にいた時と変わらない。

自分が持った気持ちに期待なんてするな。


薬草園の階段に座り板張りに足を伸ばすと、質素なその場所は相変わらず冷えている。


帰宅した時に何時も見ていた、

あの薄暗く寂しい玄関を思い出したのだった――。








③に続く

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質問の“意味”わかりましたかねー?☺️

そんな話ですよ。(どんな?)


相変わらずなもだもだ好きな人は寄っていってね〜😘






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1日開けてしまいまして申し訳ありません。

あの後無事親戚とは連絡が取れましたので、今日更新に至りました。向こうの親戚には小さい子もいた筈だと心配していましたが反対の街に無事避難出来ている様です。

しかし、まだ余震は続いていますし不安はあります。

それはそれでこまめに確認していきたいと思っております。

※この文は暫くしたら消したいと思いますm(_ _)m。

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