[でんべさん年越し企画]恋をするのは難しく・・・① | ー夢星石ーシンイ二次創作

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でんべさん年越し企画【悋気】

恋をするのは難しく・・・①




「滅多に入らない酒が入ったんだが。ヨン、飲んでみたいか?」


赤月隊で任務完了した日、近くの飯屋に入り夕餉を口に含んでいるヨンに尋ねて来た。
ヨンは咀嚼しながら向かいに座って酒瓶を持ちながら此方を見ている兄弟子を見返すと嚥下し、首を横に振った。

「いらない。前にくれた酒はあまり口に合わなかった」
「はあ?お前、あれは元の商人から買った酒だぞ?」
「それでもいらないよ。メヒにでもあげればいいだろう?」
「メヒは呑まねぇよ」

全くつまらない弟妹達だよ。
そう言い兄弟子は席を立とうとし、ふとヨンを見下ろした。

「・・・ヨンよ。贅沢しないで生きるのもいいけど、そのうち後悔するかもしれねぇぜ?」


崔家の家訓という訳でも無かったが病弱な母親に付き添い同じく質素な食事で満足だった父親を見てきたヨンは、“これで良い。余計な物を欲しがる必要も無い”と過ごしていたからか、ヨンもまた食、衣、住に執着はしなかった。
酒や食も腹を満たせば良い程度で美味い不味いはどうでもいい。そもそも今の暮らしに自分が贅沢出来る環境で無く、他人から勧められても興味が湧く事は無かった。

「・・・今の暮らしが良くなった時に贅沢するさ」
「あぁ、そうかよ」

――高麗でそんな時代が来れば良いけどな。

呟くヨンに可愛くない弟だよと愚痴り、兄弟子は肩を竦めると飯屋を去って行った。


あの後、その珍しい酒を兄弟子がメヒにあげたかどうかは俺は知らない――。







「すっごい珍しいお酒が入ったんですって!それは普段呑むには中々手に入らないってチャン先生も言っていたのよ!」


少し興奮気味なのは、既に市井で飲んでいたからなのか。

トクマンが市井に行ったウンスを迎えに行くと聞き、何故そんな所に?と疑問に思いながら代わりにヨンが行くと馴染みの酒屋の片隅、
あまり他の客の目が届かないその席に粗方片付いたつまみの皿が幾つか並べられており、ウンスと何時の間に典医寺から消えていたのかチャン侍医の二人が他愛ない会話をしながら酒を嗜んでいた。

珍しくて美味い酒、普段呑む事が難しい。
そんな物が手に入ったら、普通は呑むだろう。
だからヨンがそれを咎める権利は無い。


「・・・チャン侍医とあろう者が、外で酔った姿など見せて良いのか?」
「大丈夫です。私は一口頂いただけですので・・・」

・・・という事は、残りの酒は殆どウンスが飲んだという事なのか?

「少し前に葡萄酒は頂いたけど、それとはまた違う味で良かった!」
「瑞露酒という酒ですね。水の綺麗な場所で作るのが適していると聞きます。高麗でも北方の――」

一口飲んだだけと言うチャン侍医は西域や元を旅していた分地域の酒坊(酒造)にも詳しく、珍しく流暢に原料の説明を始めヨンは呆れと疑いの眼差しを向けた。

「そりゃあ、シャンパンやカクテルも恋しいけど、私としてはお酒が飲めれば満足だわぁ・・・ん?」

唐突に寄って来たヨンにウンスとチャン侍医は気付きふと二人が顔を見上げると、彼はチャン侍医の飲みかけの酒杯を取り上げ自分の口へと運び一気に飲み干していった。
そしてゆっくり酒杯を下ろし机に置くと、

「王宮に戻りましょう」
「は?」

ヨンは一言言うと、グイグイとウンスの腕を掴み強引に引いていく。

「ちょっと・・・?」

慌ててウンスはチャン侍医に助けを求めるも、

「医仙、ご心配なさらず。残りの酒は持ち帰りますので」
「あ、助かる。じゃ、なくて何、何で?」

何故自分がヨンに引き摺られながら帰るのか?意味がわからないのだが?
唖然とした顔のままウンスは店から去って行った。

少しすると、チャン侍医の近くに店主が近付いて来たが、

「今の方が“あの”隊長ですよね?」
「ええ」
「やはり、少なからず何かに対して嗜好(しこう)がないとなぁ」
「生涯独り身なら無くても良いと思いますが?」
「いや、ありゃあどう見てもあのお方に・・・」

やはり、今の姿は他人から見てもそう見えるのか、とチャン侍医は小さく笑う。

「なら、隊長も少しは考えないとね・・・あ、そうそう、こちらに竹葉春があると聞いたのですが?」
「よくご存知で。はい、養生所からの注文で作っております」
「では、そちらも少し頂きたいのですが・・・」

チャン侍医は新しく見つけた酒に興味が向き、先程までいた二人の事は既に頭の中から無くなっていた。



少し甘かった。
いや、酒では無く。
自分がだ。

ヨンはチラリと後ろを振り返ると、
後ろには膨れ顔のウンスがまだ酒に未練があるのか文句を呟きながら歩いていた。しかし、傍にいるのは自分が彼女の腕を掴んでいるのだから一緒にいるのは当たり前なのもわかっている。
ふうと一つ息を吐きヨンは足を止めウンスに身体ごと向け、ヨンから放たれる圧にウンスは一瞬怯んだが直ぐ様違うわよ!と声を上げた。

「ちゃんと王宮の許可を取っているわよ?」
「わかっています。チャン侍医がいたのですから」
「そ、そうよね。・・・?」

だったら別に帰らなくても良かった。ヨンも座って一緒に食べれば良かったのではないか?


「・・・」

「・・・何?」

いきなり黙ってしまったヨンにウンスは片眉を上げ見上げるが、ヨンはいつの間にか離していた手を自分の口に持っていき隠すと視線さえも逸らしてしまう。
その姿に彼が店から出したのではないかとウンスの不満が上がっていく。

「帰ったら何か別な食事がある訳でも無いんでしょう?」
「それは。はい」

きっと王様や王妃様の食事が慎ましいのだろう、その下々の食事は更に質素だった。
味が薄い汁物や塩や薬味だけの味付けに今はもう慣れ文句は無い。

無いが、
たまにはほんの少しでも良い、
変化のある物が欲しかった。


そんなある日、チャン侍医が市井に用事と聞き詳しく聞くと何と彼が珍しく酒屋に行くという。

「え、どうして?」
「養生所の医員から聞きまして、珍しい酒をよく売っている店があるとかで」
「私も行きたい!」
「護衛を付けませんと」
「チャン先生がいるのに武閣氏の子が必要なの?」
「・・・・・」

腕を組み眉を寄せ少し考えていたチャン侍医だったが、診療所から出て行き暫くして戻って来るとウンスに行きますかと禄が入った巾着を懐に入れながら言って来た。

「・・・王様御用達の酒坊がありますので、私の嗜好だと思って下さい」
「いえいえ、充分よ!」

ニコリと笑みを返すウンスに口元を微妙に上げ下げしていたのは、きっとチャン侍医の照れる姿だったのだろう。
医者だって飲みたい時もある。
そして巷で珍しいと聞けば見てみたい、食べてみたい、飲んでみたい。
現代なら大いに結構、ドンと来いだった。


なのに――。

「これは動き難くありませんか?」
「腹が満たされるなら何でも良いのでは?」
「知らない物は触らない方が良い」


――何だろう、この人。


初めは神経質な人なのかと思っていた。

この時代で服もレパートリーが少ないのは仕方ないし、良く言えば使い回しが良いともいう。
だが、悪く言えば着れれば何でも良いともいう。
トクマン君から聞くと、

「着ている物は7年前から変わっていない。暑い日は薄着だし、寒い日は厚着にするだけです」

ではその服がボロボロになった場合はどうするのか?の質問には、

「王宮の衣装庫から同じ服を取って来ています。使い勝手が良いみたいですね」

「・・・・・」

またテマン君から聞いた話では、

「あー、クッパは美味いと言っていましたが、他は特に・・・下手したら茹でた麺そのまま・・・あ、でも味は付けていた様な・・・」

最早、手抜きというレベルでは無い。
ウンスの微妙な表情にヨンの不利益になる事を言ったのだと慌て始め、

「で、でも、隊長は“何でも良い“って言ってますから!」

とフォローにもならない言葉を吐いた。


自己中心的とは違う。
他の楽しみに興味が向かなかっただけ。
まさかのあの武将の志しの本質がこうだとは。
ウンスが気付いた時は驚きで暫く口が開いてしまった。
隊士達の話では兵舎のヨンの部屋は必要最低限の物しか置いてないらしい。

つまりは、何にも興味が無かった。

彼は他に趣味が無いが為に他人がそんな娯楽を考えていても共感はしない。

――という事だ。




口を隠し目を逸らしたヨンをじっとりと見つめウンスは聞きたいのだけどとヨンに問い掛けた。

「貴方の趣味は何?」
「いきなり・・・鍛錬です」
「では、好きな食べ物は?」
「・・・特には」
「お酒は何が好き?」
「・・・の」
「飲めれば何でも、でしょう?」
「・・・」

言い当てられヨンは開けていた口を閉じた。

見上げているウンスの表情は怒っている訳では無いが、素直に尋ねて来ている訳でもないのだろう。
自分の無頓着した暮らしは単に考えるのが面倒でその延長線で今に至る。
恥ずかしく感じた事は無く、これからも無い。
しかし。
それとは違う後悔をじわじわとヨンは思い始めていた。
勢いで酒屋からウンスを連れ出してしまったヨンだったが、帰ったからといって何も無いのだから更にウンスの機嫌は悪くなっていく。

だが、ヨンには先程のチャン侍医の様に気の利いた事は言えないのだ。

もごもごと呟きヨンはチラリと横に向く。

「・・・何か、必要なら・・・」
「チェヨンさん」
「はい?」

名を呼ばれ顔をウンスに向き直したヨンにウンスは口端を少し上げた。

「一つ質問したいんだけど」
「何です?」

「あー、お酒で良いか。例えば、すっごく珍しくこの国では見た事も無い、もしかしたらその機会を逃したら飲めなくなるでしょう。
でも、飲んだら無くなるのは当たり前で・・・そんなお酒が近くにあったら・・・チェヨンさんは飲む?飲まない?」


――それは、先程言っていた。
・・・だが、数年前と同じ問いではないか?


「そりゃあ、飲みたいと思えば飲みますが・・・。
直ぐ欲しくはなりませんね」

“貴重品だから手に入れたい”

そういう考えに直ぐには向かない。


ヨンがそう言うとウンスの眼差しが一瞬薄くなった気がした。

「・・・なるほどねぇ」

わかったわ。

そう言うとウンスは一人王宮に向かって歩き出した。


――勘繰り過ぎたか?
無難な答えをしたつもりだったが、
何かが違っていたのだろうか・・・?






②に続く
△△△△△△△△△△△△△△
※竹葉春酒=汾酒(ふんしゅ)と呼ばれる白酒を元にした酒で、十種類の高価な薬材を配合した喉越し清涼なお酒。

🐥🐥🐥🐥🐥~🐤
あけましておめでとうございます🎍🎍
2023年は本当にありがとうございました✨
何時も私の妄想に付き合って下さり、本当にありがたい事だと思っています。そしてコメントまで下さる方には毎回土下座なみに感謝しています😭
本当にね、毎回とんでも設定とかキャラとか受け入れてくれるかな?とビクビクしていますので・・・😂それでも少しでも楽しんで下さる方に毎回救われております。
そして、他ジャンルのブロガー様、時々お邪魔してタロットやスピリチュアルなど話の資料として毎回勉強させて頂き本当に感謝しております。
(二次作品のブログがお邪魔して迎えて下さる方は本当に神です✨)
お気に入りブログ様、今年もこっそりですがお邪魔いたします。ありがとうございます💞

今年もこんな私ですがよろしくお願いいたします🙇‍♀️



そして、話途中になっちゃった・・・(•ᴗ•; )
続きは1日の同じ時間頃に〜🐥💦


2024年もシンイ愛で頑張ります!の
りまでした🪷

새해 복 많이 받으세요〜❣️


🐥🐥🐥🐥🐥







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🦌🦅🦮🐧🦊🐈🐥~🎤🎶今年も推し活も頑張りますよー!💪