蝶が舞う頃に②
「医仙・・・」
「近くに来ないで・・・」
「・・・・・」
ヨンとウンスの会話に近くにいた迂達赤隊達は顔を見合わせる者、様子を伺う者、それぞれいたが、それをチュソクが手で払い見るなと散らしていた。
だが、そんな彼もまた二人の様子に沈んだため息を吐いている。
・・・江華島で慶昌君様を連れ逃げている時は、あんなに仲睦まじく見えたのだがな。
まぁ、それも仕方のない事かもしれないが。
幼くそして少し臆病でそれでも無邪気な笑顔だった小さな王様は、兵舎に来た時は本当に子供らしい少年だった。
隊長もそんな慶昌君様の最後を看取り、辛く胸が張り裂けそうなのもわかっている。
しかし、目の前には生きた人間の醜い争いが止まず待ち構えてもいて、後ろばかりも見ていられないのだ。
・・・とはいえ、あの天人にまで避けられてしまったら隊長は・・・大丈夫なのだろうか?
――・・・しかも、何やら不穏な噂まで出て来ている。
ウンスにはトクマンが護衛に付き、坤成殿に向かう際ヨンや数名の迂達赤隊達も康安殿に行く為に一緒に向かっていた。
隊士達がウンスを護衛する様に囲い、坤成殿への通路に向かうとそこには先に来ていたチャン侍医がウンスを待っており――。
「往診の道具は既に用意してありますので」
「ありがとう、チャン先生」
にこりと笑いチャン侍医を見上げるウンスを見て、何故か思わずチュソクはちらりと斜め前に立つヨンを見てしまった。
彼は黙ったままそんな二人の様子を見ているだけだったが、一瞬だけこの場の空気が冷えた気がしたのだ。
「・・・・・」
――・・・気のせいか?
だが、それは隊の端にいるテマンも感じた様で、挙動不審気に顔を動かしている様だ。
そんな事など知らずか、前の二人は微笑み合いながら腕が触れそうな程に並び中に入って行く。
ウンスは顔を見上げ優しい笑顔をチャン侍医に向け、チャン侍医もまた何時もの様に静かに微笑んでいる。
同じ医者なのだから、意気投合もするだろう。
・・・しかしそれは男女にははたして当て嵌るのか?
あれではまるで・・・。
――いや、わからない。
余計な詮索はせぬ方が良い。
自分が考えている程、
隊長は何も思っていないかもしれない
・・・と思う。
チュソクはため息を吐いた。
「行くぞ」
ヨンは二人が消えたのを見届け、入口周辺を見渡し配置を確認すると声を出した。
トクマンだけはウンス達に付き坤成殿へと入って行き、
残りの隊士達はヨンに従い康安殿へと歩いて行ったのだった――。
③に続く
△△△△△△
名前に色が付いてあるのは、
その視点もあるという事です。
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