君に降る華(17) | ー常永久ーシンイ二次創作

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ここからは、原作と少し違う展開になります。
原作が好きという方は違和感を感じるかもしれません。それでも良いよという方はお進み下さいませね(*´`)


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君に降る華(17)





「それでも今動かすのは・・・」
「一つの場所に長居する方が、王様達を危険に晒してしまうのです」
「そんな・・・」

王妃は目覚めたばかりで、意識も朦朧としている。出血したのだから当たり前だ、このまま動かせばまた具合が悪くなってしまう。
ウンスはそうチャン侍医に話したが、彼は困った顔でそれを拒否して来た。そもそもヨン達の準備が整い次第宿屋を出る事になっている、チャン侍医一人の判断でそれを覆すのは無理だろう。

「どの位で着くの?」
「休まず行けば夕刻には」
「半日も?!」
自分も耐えられるかどうかだわ。


ふと、ウンスは周りを見渡し不思議そうにチャン侍医に尋ねた。

「・・・そういえば王妃のお供の人は?」

チャン侍医もその事に気付き部屋を見渡したが、確かに先程から見当たらない。

外では迂達赤隊達が忙しなく出立の準備をしているが、あの女人は一体何処に行ったのか?確か、あの女人は高麗の言葉を知らず、元の言葉でしか会話をしていなかった。
王妃が眠っている間水汲みで宿屋の裏等に行っていたのは知っていたが、それ以外はずっとこの部屋の中にいた筈なのに。

「王妃のお供がいないのですが」

部屋前に立っていた迂達赤隊に話すと、少し前に厠に行く仕草をしていたが確かに戻って来るのが遅い。少し待てと言い、隊士はその場を離れて行ってしまった。


・・・あの女人も王宮に連れて行って良いのだろうか?

王妃とは違い言葉もわからない地に来てしまい、大丈夫なのか?そんな事を考えていたがふと何か物音がし、チャン侍医は顔を上げた。




――今、何か。


そう思った瞬間。



窓から何かが投げ落とされ、鼻につく煙が立ち込めた。一瞬で煙幕が部屋内に充満し、チャン侍医は急いで王妃を抱き上げウンスを見た。

「扉を開けて!」
「何、何?!」

慌てて部屋を出ようとしたが、

「開かない?!」
「何?!」

隊士が去った後、誰かが錠を掛けたらしく扉を動かすとガチャガチャと外側から音がしている。
ゲホゲホと王妃を抱き上げている横でウンスが咳込み始めてしまい、チャン侍医は背中で扉を押しているがやはり開く様子もなかった。

しかも、廊下側でも何やら慌ただしくドカドカと物音がして惟ならぬ空気を感じる。

「奇襲か?」

こんな朝早くに仕掛けて来る等、どうしてか?
・・・まさか、王妃の治療をしたとわかったから?
誰が教えた?・・・・・あの女?

チャン侍医も口を抑えている訳では無い為、徐々に息苦しさを感じ肩に鼻を付けそれでも力の限り扉を押し続けていると――。


「離れろ!」


外側から怒鳴る声が聞こえチャン侍医が少し離れると、直ぐにドカンと音と共に扉が開き、やはり掛けられていた錠がぼろりと床に落ちた。

「無事か?!」

扉を蹴り破り入って来たのはヨンで、チャン侍医を見てから直ぐに床に座り込んでいるウンスを見つけ傍に寄る。

「ユウンス!」
「・・・ッ、何?!」
「昨日と同じ奴等かもしれん。行くぞ!」

そう言うとヨンはウンスの身体を起こし、半ば担ぐ様に持ち上げると部屋を飛び出した。


王様の傍にはチュンソク達がいるが、王様は何故か動くのを渋っている様でヨンが王妃を助けに行くと言い、先に外に避難させているのだという。
階段を下りた先も煙が立ち込め前が見ずらい状況の中、チャン侍医とヨンは外へと走って行く。

外では迂達赤隊達が屋根や窓から入ろうとする刺客等との攻防で、激しい剣のぶつかる音や怒声が響き渡り宿屋の外に出たヨン達は離れた場所に王妃とウンスを降ろした。

「ここから動かずに!」
「わ、わかった!」

高麗という時代に来た事をこんな事で思い知るなんてと困惑しているが、それよりも折角意識が戻った王妃をまた危険な状態にはさせたくない。
ウンスは力無く座っている王妃の腕にくっつき、ヨンを見て必死に頷くと、それを確認したヨンは立ち上がり剣を握りそのまま隊士達が戦っている煙幕の中に消えて行き、チャン侍医もウンス達を一瞥するとその中へと向かって行った。


「昨日から、本当に忙しいんだけど!」

王妃を庇う様に座りながら、あまり眠れていない疲れとまだ把握出来ていない状況にウンスは声を上げてしまう。


ふと。


近付く足音にハッとウンスは後ろを振り向くと、王妃の付き添いの女性が此方に向かって歩いて来ている。

「あぁ、良かった!一人では無理だったから・・・・・ッ、?」


しかし彼女が手に握られている小さな刀は、此方に向けられていて――。


「――え?」

彼女は何か口を動かし話した様だが、知らない言葉でウンスには聞き取れなかった。

その女性は片手を振り上げ、王妃の前にいるウンスに切りかかろうと手を下ろして来たが――。



ガンッ

何かの衝撃音がした後、
彼女の身体が一瞬止まり、
ぐらりと揺れると
ゆっくりと前のめりに倒れていった。


既に意識を手放したその女性は、虚ろな目を開けたままウンスに向かって倒れて来る。

「きゃっ・・・!」

その女性を受け止めると、彼女の頭から少量の血が流れている事に気付きウンスは驚愕してしまったが、触る間もなくウンスの傍にはヨンが駆け寄って来た。

「ユウンス、大丈夫か?」
「今の、チェヨンさん?」

女性が倒れた近くを見ると、古びた盾があり彼は今何処から投げたのか?と驚くが、そんな事等どうでも良いとばかりにヨンは王妃とウンスの怪我の確認をし、気絶している女性を見下ろしている。

「この女も襲撃して来た奴等の一味だったのだ」
「?!」
「まだ死んではいないだろう。目が覚めたら尋問する」

誰と繋がっているのか?高麗の者だとしたら、開京にいる可能性も大いにあるという事だ。




だがこの女人を王宮に連れて行く訳には出来ない為、先程捕えまだ息の有る数人の刺客と一緒に一時この地の群主に引き渡してそこで尋問する事にするという。


数人の隊士が残るという事で気絶した女性を担ぎ何処かに連れて行ってしまい、その様子を呆けたままウンスが見ているとヨンがしゃがみ込み目を合わせて来た。

「ユウンス、此方に」

有無を言わさず立ち上がらせ王妃から少し距離を取り、ヨンは離れて立っている王様に視線を向けると、王様はゆっくりと王妃の傍に行ったが何か言葉を掛ける訳でも無く困惑気味に見下ろしているだけだった。


・・・微妙な空気が・・・。

ウンスにもその空気は感じ取れ、思わず隣りのヨンを見上げるが。

「・・・俺は、知らないので答えられない」

元でのこの二人の暮らしを知る訳も無く、寧ろ王族は自分の意思等無いに等しく全て元の思うがままに扱われてしまう。

魏王の娘の王妃もまた、同じなのかもしれない。


――・・・俺はそうはならない。

漸くウンスと会う事が出来たのだ。
心の奥底では諦めていなかった。
だから、早く開京に向かわなくてはならない――。


「今馬車を手配しているので、見つけ次第出立しようと思う」
「そ、そうね・・・」

まだ困惑しているウンスの手に触れると、先程よりも冷たくなっている事に気付き、ヨンは焦り強く握り体温を与えようとした。

確か天界は平和だった筈だ。
なのにこの地に来た途端、身の危険を感じる事になるとはウンスも考えていなかっただろう。


「ユウンスは、俺が必ず守る」

先程も同じ言葉を言っていたと思い出し、ウンスはヨンを見つめると此方をジッと見ている眼差しは、数年前の様に瞳の奥深くに悲しみを滲ませていて懐かしさと共に彼のこの数年間の生活を微かに見えた。
握られた手に自分の手を添え、ウンスはニコリと笑う。

「チェヨンさんを信じているわ」

「・・・ユウンス」

ウンスがヨンの手を握り返すのは初めてかもしれない。

数年前、会話をしていた筈なのにお互い隣りに座り、顔をあまり見なかった。今向かい合うと、ヨンは必ずウンスに触れていたくなるのは何故なのか?
隊長としての体面等ウンスと再会した段階でどうでも良く思えてしまい、今のうちにと、急げと、焦る自分がいるのだ。


――まだウンスがいる実感がないのか、ただ不安なのか。
どうすれば、これは落ち着くのだろうか?

「・・・ユウンスは、俺を“すき”なのだろう?」

「・・・んん?」

「前に言っていた」

ヨンの言葉にウンスは顔を上げ何だって?と必死に思い出し、あ、と口を開けた。


――・・・あー、あれか。
いや、あれはそういう優しい人がと・・・

しかし、あの時ヨンは何故か口を抑え素知らぬ方を見て何も話さなくなってしまっていた。


・・・そうか、あれを・・・。

現代での軽い気持ちだったが、どうやらそれはこの時代には通用しないらしい。チェヨンからすればウンスもヨンが好きという認識になっている様だ。


「今もか?」
「え?好きと言えば好きだし・・・」
「・・・いえば?」
「ま、ま、タイプといえばタイプよ!」
「たい、ぷ」

その言葉はまだわからないが、ウンスの顔を見る限り悪い意味では無いのは見てわかる。

自分と同じく数年経ちウンスもあの時よりも大人の女人になっていた。だが、ウンスから醸し出す空気は妖艶さよりも、暖かい陽だまりで雪原の中にポツンと咲いている花のままだった。


――・・・この数年間の事は後で聞くとして――。

色々気になる事があるが、それよりも一番はウンスの心を離さない事だ。

「それはよくわからないが、俺は毎日でもユウンスに“すき”だと言いたい」

その言葉でウンスが自分に寄り添ってくれるなら、何度でも言える。


「・・・ワァ」


敢えてわかって言っているのか、気持ちが真っ直ぐ過ぎるのか。ずっとウンスに告白をしているのに気付いているのだろうか?


人生でこれ程言われた事等無かった為、ウンスも対応する余裕が無い。


徐々に赤くなっていくウンスの顔を見ていたヨンは、
目を薄め耳元に顔を寄せると、

「俺はユウンスが“すき”だ」

と、囁いた――。











(18)に続く
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早く連れて行きたいヨンさん・・・・(*´`)急げー