あの場所でもう一度(23)
※ちょいちょいヨン氏の好きアピールタイムが入ります。
「彼女もクリニックが落ち着いてきたらと言っていたじゃないか」
だから、それはやんわりと断っていたのですって。
・・・あの時ちゃんと教えれば良かったのだろうか?
「・・・はぁ、まだ考えていたのですか?」
「しかし、ヨンお前病院で他の女性達を遠ざけているらしいじゃないか」
「誰からの情報ですか?ったく、仕事しに行っているのに周りが煩いからです」
「ウンスさんは、もう場所が違うし離れてしまったな・・・」
「それは・・・でも、クリニックの院長として頑張っているみたいですから」
だから邪魔をしたくなかったんです。ヨンはため息を吐きながらそう電話の向こうの叔父に話をした。
しかし叔父はヨンの話を聞いているのか何なのか、そういえばと話を進めて来る。
「クリニックも何時の間にか、ヨンが視察する事になっているしのぉ・・・」
秘書から聞いて驚いたと言われ、それにはヨンの方が焦り小さく咳をしてそれはと呟いた。
「・・・ユ先生が来て良いと言ってくれたので」
「なるほど、良かったじゃないか。ウンスさんは優しいからなぁ」
本当に良い女性だと褒める言葉に、ヨンもそれは確かにと肯定した。
「はいそうですね。優しい方です」
「既に、彼女に見合いの断りの話はしてしまったのか?」
「・・・まだ言ってないですけど」
最初は忘れていただけだったのに、今は自分からはもう断るなんて出来なくなっていた。
「おー、そりゃ良かった。言っていたらどうしようかと思っていたからな。
まぁ、ヨンもこれを機会にウンスさんと仲良くなれればラッキーだろうに」
「・・・・・ラッキー?」
――・・・何だそりゃ。まったく!
――・・・俺変な事言ってないよな?
叔父さんが言った事に同意しただけで、余計な事は言っていないと思っていたのだが。
結局見合いをする方向で話は進み、叔父は連絡するかと通話を切ってしまった。
話を思い返しスマホを持ち再び暫く呆然とし、大丈夫だろうか?自分は今変な事は言っていなかっただろうか?と悩んでしまう。
いやいや、そんな事を考えている暇はない!
「・・・・あぁ、ユ先生に頼まなきゃ・・・」
先に叔父が伝え、彼女が知らないうちに話を進めるなと怒るかもしれない。
ヨンはスマホをポケットにしまい、鞄を持つと急いで病院のスタッフ用出入口から飛び出した――。
・・・・・
・・・・
確かに、何故今なのかと落ち込んでしまったが。
ラウンジに着き、ウンスの姿を見た途端気持ちがふわふわと浮上してしまっている。
・・・まずいな。
凄く嬉しいんだけど。
既に自分の中で、彼女がどうかこの見合いを嫌な思い出として受け取らないで欲しいと願う事しか頭に無く、このチャンスを逃すなと言っている自分もいる。
ジッと前のウンスを見つめていると、彼女も視線を彷徨わせヨンを見たり、窓の景色に移したりと目を動かしていた。
――・・・何か言わないと。
しかし、実は聞きたい事はこの間の旅行で殆ど聞いてしまっていた。
趣味も苦手な事も休日の過ごし方も。
・・・あ、やばい。
すっかり忘れていた。
彼女の姿を見て惚けてしまったが・・・。
「・・・素敵だと思います」
突然のウンスの声にビクリと肩が跳ねた。
素敵?俺を?いや、俺はタイプでは無いというし・・・。
「え?何をですか?」
ヨンの言葉にウンスは、え、とと小さく話す。
「スーツが似合うと思って・・・」
「・・・あ、スーツですか。はぁ、ありがとうございます」
・・・スーツか。何だ。
彼女はこういう格好のが好きなのかな?
自分では無いかもな、内心寂しく感じたがヨンは自分も言うのをすっかり忘れていたと顔を上げた。
「ユ先生、今日はいちだんと綺麗ですね」
今日見た時に直ぐ感じた事。
何時も確かにお洒落にも気を使っているのを知っているが、今日は何だか可愛らしさも含まれている様に感じたのは自分の欲目だろうか?
いや、周りが見る程なのだから間違ってはいない。
ブフッ。
ウンスは吹き出し口を抑えてしまい、しかし少し照れた様にありがとうと返して来た。
恥ずかしがる顔も可愛いな、と思いながらラウンジに入った時から落ち着かない自分が少し恥ずかしかった。
「すみません・・・緊張しています。しかも格好も力を入れてしまいました、恥ずかしいな・・・」
・・・昨日から服を選び、掛かったスーツを何回も大丈夫だろうか?と色んな方向から見ていたなんて事は言えないが、それでも良い部分も見せたくて頑張ったのだと言ってしまったが、ウンスはその言葉にきょとんとした後に何時ものにこやかな笑顔になった。
言うなら今かもしれないとヨンはゴクリと唾を嚥下し、ウンスを見つめた。
「・・・ユ先生」
「はい?」
「俺は大学時代から彼女はいません」
「うん?」
いきなり何を?
ウンスは目を丸くし、正面のヨンを見つめる。
「この間のメヒとも、はっきり言ってあっさりした付き合いでした」
・・・そこまでは聞いてないけど?
てか、やっぱり恋人だったのか。
・・・ほほう。
「・・・それに、俺はもしかしたら淡白な性格なのかと考えていました」
近くに女性がいたら、もしかしたらと甘い考えになるが去るならそれでも良いと追う事もしなかった。
去る者を態々追いかけるだなんてなぜそんな面倒事をしなければならないのか?メヒの時にふと浮かんだのも確かだった。
では身体が寂しいから別な女性に行ったのか?というとやはりそれも面倒だった。
性欲よりもストレスの方が毎日酷く、吐きそうになる中で何処から欲情が出てくるのかという生活を送っていたのだ。
「・・・アメリカで自分はちゃんと働いているつもりが、全く余裕が無かったと今よくわかりました」
「チェ先生・・・」
「周りが全て敵でライバルで、何時自分の場所を取られてしまうかとピリピリしていました」
「それは何処でも同じよ」
「はい、だけど・・・確かに来た時は、ここの病院も合わないかもしれないと思っていたのも事実です」
「・・・そうだったの」
ウンスはふと視線を落としテーブルにあるコーヒーを見つめた。
「・・・すみませんでした。ユ先生にもおそらくそういう眼差しを向けていたと思います」
「いいわよ、もう・・・」
「・・・でも、ユ先生には多分違う意味もあって」
「?」
「初めて目が合った時に冷たい眼差しを向けられ、ショックだった訳で・・・」
「それは、ごめん」
「違うんです。俺が最初ユ先生を見たのは廊下を歩いていた時で・・・あ、えと、その顔を見て・・・」
「顔?」
「いや、顔だけでは無くて・・・つまりは、何で病院にこんな美人がいるんだ?と思っていました」
モデルか?自分と同じ経験者だろうか?と一瞬頭を過ぎったのもあった。
「本当に綺麗な人だなぁ・・・と」
そう言って下を見ていたヨンが少し間の後、目を正面のウンスに向けると。
「・・・え、ありがとう、ございます」
しどろもどろと返して来たウンスは大きな瞳で真っ直ぐ此方を見ていたが、頬を赤く染まらせていた。
――・・・あー、可愛いなぁ。
だから、言わないと。
「・・・初めて一目惚れをしました」
(24)に続く
△△△△△△△△△△△
この辺は夜中でも良いかなと。🤭✨
🐤参加しております🦌
にほんブログ村
