あの場所でもう一度(22)
「何何?『ラウンジで待ち合わせ、軽く挨拶をし、適度な会話、そして解散』・・・はあ、なるほど・・・」
ウンスはもう一度念の為に、事前にヨンから送られていたメールの再確認をした。
・・・いや、既に相手からメールが来ている時点でおかしいのだけど。
三日前に実家に電話をし、週末お見合いをする事になったと伝えると電話越しでもわかる程の両親の喜び様と、延々と母親からの注意を聞かされ最終的には急いでいるからと話を終わらせ終了してしまった。
お見合いと言っても形式的なものでは無く、本人同士だけ会うという事だったが、それでも両親は嬉しかったのかもしれない。
「・・・何なの?一生出来ないとでも考えていたの?娘を信じて欲しいわ!」
出来ない訳では無く、
しなかっただけで一生独身等とは考えてはいないのに――。
思い出して再び憂鬱になりそうだと、エレベーターに乗り込み約束の場所へと向かって行った。
・・・大丈夫かな?変じゃない、よね?
Vネックの水色のワンピースは可愛いと買ったもののスカート部分が広がり少し若く見えるかと、ずっとクローゼットにしまっていた物だった。
相手がヨンだとわかっているのに、仕事終わりに急いでエステに行き、髪も染め直したのだが、彼はどう思うだろうか?
・・・30の女が見合いだからと、意気込んでいると思われません様に。
エレベーター内の鏡でメイクが落ちてないか確認しながら、ふとそんな心配までしてしまう。
「・・・ふぅ、落ち着かないと」
少なからず興奮している自分が恥ずかしくもあり、ウンスは何回か深呼吸をしたのだった。
ラウンジに着き、立っているコンシェルジュに名前を伝えると此方ですと席に案内されたが、どうやら少し早く着いてしまったのかまだ誰もいなかった。窓から見下ろす景色は、昼間は明るく騒がしいが夜はきっと夜景が綺麗だろうとそんな事を思っていると、テーブルに近付く気配に顔を向けた。
・・・あぁ、なるほど。
皆がチェヨンはイケメンだと言う。
そしてモデルもしていた経歴もある。
そうね、確かに完璧なスタイルだわ。
仕事中の姿や皆で出掛けた際のラフな格好のヨンしか見ていなかったが、彼は手足の長さと広い肩幅でその高級感のある濃いグレーのスーツを見事に着こなし、普段簡単にジェルで上げただけの髪までもがお洒落にセットしてあった。
「・・・待ちましたよね?すみません」
「いえ・・・」
そう言いヨンは正面に姿勢良く座り、ウンスを見つめて来た。
「・・・・・」
「・・・・・」
――・・・適度な会話とは?
ウンスを見たまま全く話さないヨンと、見合い自体わからないウンスは、何も切り出せず目を見合わせたり窓を見て誤魔化したり、暫くそんな時間を過ごしてしまった。
――・・・例えば、聞くとするなら。
―お仕事は?
二人『医者です』
知っているわ。
―お休みの日は何をしていますか?
ヨン『映画鑑賞です』
ウンス『ショッピングです』
――・・・これも知ってる、この間の旅行で聞いたから。
ダメだ、聞く事が無い。
ウンスは見合いというと、そんな質問しか浮かんで来ない。
兎に角軽く会話をしなければとヨンを見つめ。
「・・・素敵だと思います」
「え?何をですか?」
言葉の意味がわからず、焦ったヨンがウンスの顔をジッと見て来る。
「スーツが似合うと思って・・・」
「・・・あ、スーツですか。はぁ、ありがとうございます」
項を掻き、少し寂しそうにお礼を言って来るのはどうしてなのか?
だが、直ぐ顔を上げ再び此方を向いたヨンはウンスを見つめてにこりと微笑んだ。
「ユ先生は・・・今日はいちだんと綺麗です」
ブフッ。
いきなりな言葉に、ウンスは吹き出してしまい慌てて口を抑えた。
「・・・あ、ありがとうございます」
「すみません・・・緊張してるので。
しかも格好も力を入れてしまいました・・・恥ずかしいな」
どうやらヨンも何時もより意識をして服や髪型を決めて来た様で、恥ずかしいのか頬を赤くさせている。
「・・・・・」
・・・そういう所があるのか、意外と可愛いのね。
そんな考えにウンスはハッとなり、何を考えているんだと言い聞かせた――。
「・・・・それはどういう事?」
ウンスは呆然とフロントで頭を下げているヨンを見つめながら、聞き返すとそろそろと頭を上げたヨンは困った顔を向けて来た。
「叔父さんがこの間、入院していたんですが・・・」
「オーナーが?大丈夫なの?」
知らなかったと、ウンスは慌てるが大丈夫だとヨンは苦笑する。
「と言っても白内障の手術で2日程です。通院するよりはと入院を選んだだけなので」
「そう、なら良かったわ」
「・・・その時に、実は俺の母親が来てまして」
「あら」
「アメリカから一時帰って来ていたのですが、直ぐ戻る事になり病院に来たんです」
「忙しい方なのね」
「父親の会社の役員にもなっていますから、・・・それで、そこで・・・」
徐々に口籠もり始めたヨンを不思議そうに見上げていたが、ヨンはボソボソと話を始めた。
「また話が出まして・・・」
「何の?」
「俺の、ここでの生活と・・・まだ一人なのか?と・・・」
・・・・うーん、何処でも言われる事は同じなのね。私もその質問は痛いわ。
ウンスも帰る度に聞かれ、催促され、ほとほとうんざりしていた。その為に私は田舎から江南区に働きに来た訳では無いというのに、いよいよこの年になるとその言葉も両親には通じないらしい。
「・・・いないならアメリカにいる知り合いの娘を紹介すると言って来て、叔父さんは俺が今は仕事に集中したいと言っていたと話したらしいのですが・・・聞いて貰えず」
「わかるわー、辛いわねそれ・・・」
「・・・思わず叔父さんが、実は俺に紹介しているのだと言ってしまいまして・・・」
「・・・?」
「店舗を貸している女性を俺に紹介しているのだと・・・」
「・・・ちょっと?」
「母親は俺はどうなのか?と聞いて来たらしく、同業者で知らない仲では無い様だと、叔父さんはその方に以前から良かったらと勧めていたと・・・言ってしまい、なら、一度してみたら・・・と」
自分の兄が勧める程の女性なのだから、問題は無いのだろう。しなければ此方でまた考えると言われたという。
叔父さんの秘書が慌ててヨンに連絡して来て、それを聞いたヨンは暫し唖然となっていた。
・・・何て事を。
「・・・確かに、クリニックが落ち着いたらとは、伝えたけども」
「はい、知っています」
ヨンはウンスの目を見ず、ずっとフロントのテーブルを見ている。ウンスの気持ちもわかっているし、自分もそんな事でウンスから拒絶されてしまったら、もうどうしたら良いのかわからない。
好きなのは当然だが、じゃあ付き合って欲しいとはまだ言わずにいようと決めていた。
彼女の気持ちが自分に向いていないのだ。
言った所で再び振られて終わりなのだから、ゆっくりと自分の想いを伝えればとクリニックに通い、仲良くなるつもりだった。
なのに、この展開にヨンは何て事をしてくれたのか?と親と叔父に怒りが湧いた。
ウンスは嫌だと断るだろうか?
もししたとしても、それ以上は発展せず、親も付き添わない本人達だけの見合いはそのまま終了の予想しか出て来ない。
・・・俺の想いもここでおわりだな。
「・・・仕方ないわね」
「・・・ユ先生?」
「オーナーには返し切れない恩があるし、それ位なら・・・」
「・・・ありがとうございます」
少し困った顔を向けて来たウンスだったが、嫌悪は感じ無かった。
ヨンはホッと安堵し、ウンスにお礼を告げた――。
――・・・ほら、やっぱり綺麗じゃないか。
ヨンが案内された席に行くと、既にウンスがいて窓を向き景色を眺めている様子だった。
ラインの綺麗な横顔と派手な装飾の無い水色のワンピースは、細身のウンスにとても似合い赤茶色の髪でより華麗な雰囲気を放っている。ちらりとラウンジを見渡すと、何人かはちらちらとウンスを見ている様でそれが男だと余計心配になってしまう。
・・・クリニックでそういう患者は来ないのだろうか?手術目的では無く、彼女が気になったから・・・。
あぁ、それは自分の事だな。
此方に気付きヨンに振り向いたウンスは、綺麗なラインの唇の口角を上げにこりと微笑んだ。
始めて見た時にウンスのこの顔を見ていたら、もっと早く関係が変わっていたと思う。
・・・今ならよくわかる。
彼女がこの見合いを嫌がっていません様に・・・。
――出来るなら、次に繋げたい。
ヨンはそう願いながら、ウンスの正面に座ったのだった――。
(23)に続く
△△△△△△△△△△△△
後半は切る場所もわからず長い話が多めです💦
(´・ω::.ゴメンヨ
ちらちらとウンスにアプローチしていくヨン氏が出てくるよ笑✨👉(もう出てるんだけどね)
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