月明かりに華◆(17)
「暫くはあの屋敷を見張ります」
夕餉を早々と食し器を避けると、座っているウンスとチャン侍医に話し出した。
「そうなの?子供達はいたの?」
「数人が・・・今は稼げる者が屋敷に金を入れ、養っている様ですね」
「まあ・・・」
「ウンス殿、気になるからと行く等とはいけませんよ」
「や、やぁね、言わないわよ!」
ちろりと薄目で見て来るヨンとチャン侍医にウンスは必死に首を振る。
しかし、その屋敷を迂達赤隊が見張るとは怪しい者が出入りする可能性があるからだろうか?それに屋敷の周りに屈強な男達がうろつくという事に子供達はどう感じるのか?
大丈夫かしら?
ウンスはそう思いヨンを見ると、それに気付いた様で大丈夫と言いフッと笑って来た。
「子供達を危険な目に合わせるつもりはありませんので」
「なら良いんだけど・・・」
「・・・お前達は」
「あれ?え、と、隊長でしたか?」
「ああ」
市井をヨンが歩いていると、屋敷にいた少年と少女の二人が荷物を持ち歩いていた。
あれから迂達赤隊は市井だけで無く、少し離れた場所にある子供達が住む屋敷の周りも用心し見廻る様になっていた。
話を聞くと屋敷にいる子供達を養う為に、荷物運びをして駄賃を稼ぐ仕事をしているという。
ヨンの後ろにいたテマンは偉いなぁと少年の頭を撫でるが、彼は仕方ないと平気な顔をしてため息を吐く。
「この歳で働ける事なんて決まったものしか無いんです。屋敷に来る妓生のお姉ちゃん達だって妓楼で稼ぐしか出来ない様に」
この歳で人生を達観した様な物言いにテマンはポカンと口を開けてしまうが、そうか、とヨンは頷いた。
「でももう少ししたら、私達はあの屋敷を出なくてはならないんです」
「そうなのか?」
「大きければ大きい程食う量だって多くなります。この年で屋敷にお世話にはなれませんよ」
そう言う程の年でも無いと感じるが、一度外に出された者達は再び戻って来た負い目があるのだろうか、と感じていると少年はそれでも、と話す。
「妓生のお姉ちゃん達があちこちに言って、小さい子供を養ってくれる人を探していますが、戦もあるのにそんな余裕は無い人間が多いみたいですね」
でも何とか探してくれているという。
「・・・そうか・・・」
そんな話をしていたが、
少年が仕事を思い出したのか急がなくてはと少女と二人頭を下げ歩いて行った。
「・・・はぁ、随分と良く出来た子供達だなぁ」
テマンが呟いた。
――だが、
「テマン」
「はい?」
「あの二人をつけろ」
「え・・・」
「お前なら、付いて行ける筈だ」
先程二人に微笑んでいたヨンの顔は無く、
冷たい瞳は迂達赤隊長のそれだった。
(18)に続く
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・・・(16)の文が少し直っていますからね、何となくわかっているとは思いますが・・・。
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