ジグザグ♧(20)
物置部屋からずっと張り詰めていた空気が薄まり、ヨンはウンスの手を握ったまま話し続けている。
「・・・確かに俺がした事は、本当に情けないし、ウンスが怒るだろうとわかっているんだ」
「・・・あぁ、先輩達に言ったという?」
「・・・本当にごめん」
ヨンがクラブに行った理由はウンスが話していた先輩男子達を牽制する為で、女性達と飲んで遊んで等では無かった。
・・・ただヨンの話を聞いていると、眉を顰めるものもある。
・・・はあはあ、成程。
とりあえず自分の顔が良い事は自覚しているのね、それを上手く利用した様で。
「・・・でも、先輩達が店に来るのをひたすら待ったというか・・・」
彼らに好き放題言ったヨンはクラブを後にし、次の日からは全く行っていないという。きっと、突然来て突然来なくなったヨンに周りも不思議に思った事だろう。
確かにそんなヨンの行動を彼女達は忘れる訳は無い、とウンスはため息を吐いた。
ヨンの話は普段なら怒りを覚える内容だと思う。
まさかその時から自分の周りでそんな事をしていたなんてと。
しかし。
自分が気付いていなかっただけで、実はその時からヨンは自分を、自分だけを見ていたという。
・・・あぁ、うん。前にもそんな話は聞いた事があったわ。
でも、自分が先に一目惚れしたのだと言った訳だけど。
・・・とはいえ、自分は必死に隠していた。
ヨンも隠していたのだ、かなり激しい気持ちを。
その隠し事を自分は勘違いして怒りを覚えてしまった。
彼と一緒になる為には、そんな気持ちを抑えるべきなのか?伝えるべきか?ぐるぐる頭の中が混乱する程に悩み、しかしそんな過去があったヨンに対して許せず荷物を纏めるまでしてしまったという。
関係が駄目になる時は、こういう小さな綻びから始まる気がした。特に自分達は些細な事でもまた拗れてしまう可能性が十分にあるのだ。
ここまで来て今更だとわかっているのに、突き詰めていけば自分が彼の伴侶になって良いのか気持ちが沈み始めるまで落ち込んでしまう。
「・・・ウンス?」
さっきから黙っているウンスにヨンは心配になり、握った手に力を入れた。
もう怒っていない、・・・と思うが。
「俺は昔からはっきり言うウンスが好き。言葉に嘘が無いってわかるから」
「・・・さっきのは、売り言葉に買い言葉で・・・」
ウンスがポソッと呟き、ヨンはわかっていると微笑んだ。
そう言ってしまった自分の気持ちが嫌になっているのだろう。でも最初は驚いたが、ウンスが自分に対して本音でぶつかって来たとも思った。
嬉しいな、と思う。
ウンスの喜怒哀楽が自分は見る事が出来る。
見るのは自分だけ。
「・・・性格が悪いなんて思わないよ、寧ろ本音がわかり嬉しいな、と」
「・・・嬉しい?」
「だから、それが俺なんだって。誰も見た事が無いウンスを見れるのは自分だけだと幸せになる・・・異常だとわかっているよ」
器用そうに見えて全くそうじゃない自分を、周りの人達もわかり始めて来ているのだと思う。それでも自分とウンスを応援してくれている、それもわかっている。
「・・・私を好きなのに、異常ですって?」
ウンスがムッと口を尖らせる。
自分に関わっているのにおかししいとは。
「いや、そうじゃなくて・・・あぁ、もう」
それでもヨンは口元が緩む。
拗ねているのにヨンに詰めている言葉は甘えてもいて。
そうかムキになるとウンスはそうなるのか、等と新しい発見に納得をしていたヨンだったが、ウンスの手を握ったまま顔を近付け目を合わす。
「もう、怒っていない?」
真っ直ぐ見て来るヨンの瞳が輝いているのは何なのか?
それでも。
「・・・怒ってないわ」
ウンスの言葉に更にヨンの笑みが深くなった――。
(21)に続く
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・・・色々忘れているけどね、ヨン氏。
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