月明かりに華◆(8)
「・・・痙攣をして倒れた?客では無く妓生が?」
話を聞いたヨンが、何故?と首を傾げていた。
「おそらく自分で舐めたのだと・・・」
塗る前か、塗った後か。
汗をかいた時かもしれないが、何時かは聞いていないのでそこまではわからないのだが。
「朝起きた時にその妓生が身体中を震わせ、痙攣を起こしていたと」
「舐めた後だったら、身体を綺麗にしても既に口の中には入っているものね。暫く苦しがっていた様よ」
しかも実はまだ数人にもそんな症状が出ているという、どうやら買ったのを皆で分けたらしい。
そこでウンスがプッと吹き出した。
「何ですか?」
ヨンはわからず目を丸くしているが、その笑いにチャン侍医が苦虫を噛み潰した様な顔になった。
「妓生達がビン先生に助けを求めて来たのよね」
「ほう?」
「妓楼には行きませんよ」
近くに寄っただけでも色々な匂いが入り交じって気持ち悪かったというのに、あれ以上濃い匂いはとてもじゃないが耐えられるか自分でもわからないと思ったのだ。
妓生達の頼みを承諾したチャン侍医だったが、妓楼街の入口までしか行かない条件で解毒薬を渡す約束をしたのだった。
「入ってくれば良いだろうに」
笑いを含んだヨンの言い方に鋭く睨み付けたが、チャン侍医は鼻で小さく笑う。
「隊長こそ、日頃の疲れを取って来たらどうです?」
「ああ?」
ヨンもチャン侍医を睨むが、彼はフイと顔を逸らしウンスを見た。
「匂いが同じかどうか確認して来ます」
「そうね、お願いします」
出来れば少し貰いたいが、あるのかどうか――。
―――
――
「・・・え?」
チャン侍医は妓楼の入口でこの間の妓生達に会い、話を聞いて驚いていた。
何人かの妓生達が泣いている。
「・・・見る事は出来ますか?」
チャン侍医は妓楼の中に入って行ったのだった――。
―――
――
「・・・遅いわ」
ウンスは典医寺の入口で腕を組んで外を向き、睨んでいた。
「・・・遊んでいるのでは?」
「ビン先生に限って・・・」
「そこは、チャン侍医も男なのだし・・・」
「チェヨンさんとはまた違うと思うわ」
「は?何故俺とチャン侍医が違うのですか?」
そこは解せぬ、是非理由を聞きたいものだ。
ヨンがウンスに向いて問おうとしたが、ウンスが顔を上げあ、と声を出した。
「只今帰りました」
「・・・何していたの?」
「・・・実は、中に入る事になりまして・・・」
「いやー・・・ッ!」
「ほらな」
「違います。妓生の遺体を見てきました」
遺体という言葉にヨンとウンスがピタリと止まる。
チャン侍医の眼差しが冷たいままでヨンに向いている。
・・・どうやら明るい話では無さそうだ。
「兎に角、中に入りましょう」
チャン侍医が二人を診療所に入る様に促し、足を進めたのだった――。
(9)に続く
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明るい話ではないみたい。
しかし、ウンスの中のヨン氏て・・・
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