ジグザグ♧(12)
「プラネタリウムは撮れなかったけど、水族館のは綺麗だよね」
「わぁ、本当ね」
写真を見てウンスは嬉しそうに笑っている。
外は暑いからと、図書館に入り昨日出掛けた際に撮った写真を二人で見ていた。
図書館内の為声を潜めなければならなかったが、それでも二人で秘め事をしている気分になりヨンは嬉しい気持ちになる。しかも、普段よりもウンスの距離が近くになるのだから、暫く図書館で話すというのも悪くないと考えてしまうのは仕方ないと開き直っていた。
「これ、ウンスの分なんだ。俺のは別にあるから」
「あら、いいの?」
焼き増し代だけでもと言うウンスに、いらないと手を振った。ヨンとしては、二人だけの共通の物が欲しかっただけなのだから。
「いらないよ。そのかわり、今日授業が終わったらカフェに行こう」
「あ、新作が出たんでしょう?」
やはりヨンよりもウンスの方がその情報は耳にしていたらしく、ウンスは笑顔でうんと頷いた。
ウンスの好みはこの1年でほぼ把握出来ている。
それを利用しないという紳士的思考をヨンは既に頭から捨てているのだ。
“ウンスは甘い物が好き”
ヨンは、ウンスのその姿に満足気に微笑んだ。
「ヨン、夜遊び行かないか?」
「行かない」
「最近付き合い悪くないか?」
「忙しいんだよ」
「あの、ユウンスにか?」
名前を出されヨンは、チラリと横のヒョンジュを睨み付けた。
「・・・夜まで誘えたら最高だな」
・・・と、いう事は今だ相手にして貰えていないという?
このヨンを見向きもしないとは、あの女性もある意味凄いなと驚いた。
「お前が誘って駄目とはねぇ・・・」
しかしヨンは、直ぐに機嫌が治りふっと笑う。
・・・そんな事は想定内なのだろうか?
「いいんだ、ゆっくりでも・・・」
「そんな事言っていたら、あっという間に卒業だぞ?離れる可能性だってあるだろう?」
「それは大丈夫。彼女は向上心が高いからね、希望する職場は大凡の検討が付くんだ」
・・・自分もそこにするつもりか?
あのユウンスが希望したから?はたしてその考えで良いのだろうか?
ヒョンジュは何とも言えない気持ちになったが、ではウンスでは無いとしたら何なのか?勉強か?
「・・・少し用事が出来た。先に行っていいから」
そう言うとヨンは歩いて行ってしまったが、方角はウンスが通っている研究棟だった為にヒョンジュもわかった、と慣れた声を出した。
「・・・・・」
木の下のベンチに座り、ヨンは腕を組んで待っていた。
研究棟の中から、数人の女性が出て来てベンチに座っているヨンを見つけあら、と近付いて来る。
「チェヨン君じゃない?」
「あぁ、先輩達でしたか」
ヨンは顔を上げ女性達を見るとにこりと笑い、そんな彼の笑みに女性達は嬉しそうに、そういえばと話を振って来た。
「この間、クラブに誘ったの行くって?」
ヨンの顔の良さとモデルの様な姿、優秀な成績の上に有名武将の子孫という事は上級生にも知られており、
きっと将来は名の知れた医者になるだろうと、今から近付いておかなくてはと何人かは虎視眈々と狙っているのだった。
地味な女性を追い掛けていると聞き、研究室に入った時にウンスを見たが本当に謎だと感じたのだ。
・・・彼はあういうのが好みなの?
しかし、再び会った時にやはりクラブに行くと言って来た。
女性達は浮かれながらヨンの隣りに座り、
それを見ながらヨンはまた目を細め微笑む。
「はい、行きたくなったので。
・・・それとお願いがあるのですが・・・」
少し眉を下げながらもヨンの鳶色の瞳から放たれる艶やかな色気を受け、
女性達は一瞬にして頬を染めていった――。
(13)に続く
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自分の顔を武器に・・・て前も言った?´-`)
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