月明かりに華◆(7)
「あ、あの女性達よ!」
ウンスが指を差し、人を指差してはいけないとその指を下げながらチャン侍医はふと顔を少し離れた店に向けると、煌びやかな髪飾りと印象的な髪型の集団を見つけあぁ、と声を出した。
「ウンス殿と言い合いになったという?」
「そうそう、あの中の二人は顔を知っているわ」
チャン侍医とウンスが市井に来たのは、時々王宮に卸される薬草を管理している問屋があり、
チャン侍医がその店に頼んでおいた品が届いたと連絡が入った。
さて行こうと用意をしている所に丁度ウンスがやって来てそれを聞き、
「私も行きたいわ!」
と、言って来たのだった。
数年前からチャン侍医もウンスの性格をよく知っていて、断ると拗ねるかこっそり付いて来るか、どちらにしても後々面倒になるのは必須なのだ。
「・・・薬を取りに行くだけですよ?」
遊びに行く訳では無いと念を押す。
「大丈夫、大丈夫」
「・・・やれやれ」
にっこりと笑うウンスにヨンも勝てていないが、自分も無理だとため息を吐いたのだった――。
「・・・あの人達、使ったと思う?」
「・・・私に聞くのはどうかと」
女が男に聞く事では無いだろうに。
「そもそも元から妓生が普段使っているのですから・・・使っているのではないのでしょうか?」
「変な物が入ってなければ、私だって使えたのに・・・」
「それでも駄目です」
妓生と同じ物を使うだなんて、また隊長が煩くなる。
・・・確かに捨てたか?チャン侍医も没収した物を全て破棄した事を思い出していると。
「・・・あ」
ウンスが呟き、視線を前に戻すと妓生の集団がウンスに気付き眉を顰めたまま二人に近付いて来た。
「面倒な・・・」
妓生もある程度王宮に来る者、高官の接待をする者は妓楼内でも特別な位置にいるだろうし扱いも違う。
それが薬員の女人に馬鹿にされたと感じていたとしたら・・・。
「あらあら、あの時の薬員の方」
妓生が目を細め、しかしウンスを睨む眼差しにやはりまだ腹に据えかねるという事なのか。
仕方なしとチャン侍医がウンスの前に出て妓生達を見据えると、妓生達も顔を上げチャン侍医の姿に一瞬怒りを止めた様だった。
「貴女方も外で騒ぎ等したら、評判が下がってしまいますよ?」
静かに言うチャン侍医にパチパチと瞬きして、そ、そうね、と頬を染め大人しくなっていく。
・・・この女性達を大人しくさせるとは・・・ビン先生も良い顔をしているものね。
チラリと後ろから伺っているウンスに視線を移した妓生は、声を掛けて来た。
「買っていったのは使ったの?」
「・・・それは」
使う前に没収され、捨てられてしまったのだ。
上目遣いでチャン侍医を見ると、その視線を後ろから感じたのか顔を背けてコホンと咳をしている。
そんな二人に妓生達があら、まぁと口を隠した。
てっきりチェヨン隊長に使うのだと思っていたのに、別な男だったとは・・・。
「あら?使ったの?」
「使っていません。
あの中にはあやしい薬草が含まれております。・・・貴女方は使ったのですか?」
妓生の問いに即座にチャン侍医が否定をし、顰めっ面になるが使用の確認をすると、
妓生達は何かを思い出したのか、あ、と口を開けチャン侍医を見て来た。
「・・・何かあったのですか?」
チャン侍医とウンスは目を合わせ、妓生達に問うたのだった――。
(8)に続く
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・・・何かあった様ですね。
※あ、これは深夜枠なの。
続けて更新しているなと思っても気にしないでね
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