新たな市場に参入する際や、複数の選択肢がある場合に、最初から全てを対象にしようとするのは、かえって効果を薄めてしまうことがあります。そのため、段階的かつ戦略的に取り組むことが非常に重要です。これは、教育業界に限らず、あらゆる分野に通じる普遍的な考え方であると私は考えます。
たとえば、通塾が可能な中学校がA、B、Cと3校あるとします。多くの人は「できるだけ多くの学校を対象にしたほうがよいのではないか」と考えるかもしれません。しかし、実際にはそうではありません。むしろ、最初の段階では、あえてターゲットを絞り、「A中学」一校に集中することが、結果的に大きな成果をもたらします。
1年目にA中学に絞って取り組むことで、その地域の特性や生徒・保護者の傾向、競合塾の動向などを深く理解することができます。地域ごとに文化やニーズは異なりますから、こうした「現場感覚」を養うことは、今後の展開において非常に大きな武器になります。そして、A中学に通う生徒に対して丁寧な指導を行い、確かな成果と信頼を積み上げていくことが、次のステップへの足がかりとなるのです。
このようにして内部を成長・強化していく中で、自然と「次の一手」が見えてきます。2年目にはB中学にも手を伸ばすことができますが、ここで重要なのは「A中学で築いた信頼」が、口コミや紹介という形でB中学、さらにはC中学へと波及していくという点です。
たとえば、B中学からたった1人の生徒が入塾したとします。その1人が塾を気に入り、友人を誘ったり、保護者のネットワークから別の学年の生徒が紹介されたりすることは、よくあることです。つまり、「1人の入塾生」は、感覚的には「3人分の生徒」を意味します。信頼や評価は、目に見えない形で周囲に伝播し、やがて一気に広がる可能性を秘めているのです。
このような波及効果を生み出すためにも、最初の段階で「一点集中」し、内部の充実を徹底することが不可欠です。焦って広く浅く手を出すのではなく、深く確実に根を張ることこそが、長期的な成長につながるのです。
つまり、「選択と集中」、そして「内部強化」。この2つを軸とした戦略は、一見遠回りに見えて、実は最も効率的かつ確実な成長モデルであると言えるのではないでしょうか。