学習塾を新規に開業する際、まず考慮すべき最重要項目のひとつは「限界売上」です。これは、教室の広さや設備、席数などの物理的な条件から導き出される、通常月における最大の売上予測値を指します。経営を安定させ、生徒にも良好な学習環境を提供するためには、この限界売上を正確に把握し、それを前提にした事業計画を立てることが不可欠です。
個別指導塾においては、経験則に基づき、限界売上は以下のように算出されます。
-
坪数 × 7
-
平米 × 1.2
-
席数 × 4
これら3つの数値の平均を取ることで、その教室の「限界売上」が見えてきます。たとえば、40坪(約132㎡)、席数20の教室を例にとると、
-
(1)40坪 × 7 = 280
-
(2)132㎡ × 1.2 ≒ 158.4
-
(3)20席 × 4 = 80
この合計を3で割ると、限界売上は約172.8万円となります。これはあくまで「平常月」の上限値であり、これを超える売上を求めると、学習環境の悪化につながりかねません。したがって、それ以上の収容は「定員制」とし、生徒一人ひとりの学習効果や満足度を維持することが望ましいです。
経営初年度の目標としては、この限界売上の50%、すなわち「売上86万円程度」の達成が理想的です。これは早い段階での到達目標であり、1年目で無理のない成長を目指す指標となります。そして3年目には、年間を通じて限界売上に近づく、あるいは到達することを目標とすべきです。
また、売上の約30%が経営者自身の給与の目安となります。この他に、税金用の貯蓄や、将来の設備投資のための資金も確保することが可能です。仮に3年後に限界売上に到達したとすれば、月収100万円が見込まれます。そこから30万円を自身の報酬として取り、残りの金額は事業の成長や生徒への還元に充てることができます。
重要なのは、「いくら稼ぎたいか」という視点だけでなく、「いくら稼げば、残りをすべて生徒のために使えるのか」という考え方です。この視点を持つことによって、経営者自身の満足と社会的意義の両立が可能になります。
したがって、物件を選ぶ際には、単に「家賃が安い」「立地が良い」といった表面的な条件だけでなく、自分の目標とする収入と生徒還元のバランス、そして限界売上との整合性を十分に考慮する必要があります。具体的には、坪数・平米・席数といった数値から算出される限界売上を基に、将来的な収支予測と自分の経営方針をすり合わせることが理想です。
塾経営は「人」を育てる事業であると同時に、「自分自身を育てる」機会でもあります。綿密な収支計画のもとで無理なく運