この本を手に取ったのは、著者が障害を抱えながらもなお前向きに活躍されている姿に心を動かされたからだ。
弱さや困難を抱えても、知的好奇心と行動力を失わずに生きる姿勢は、今の自分にも確かな励ましになる。
出口さんがこれまでに得てきた知見を惜しみなく次の世代へつないでいる姿勢にも学ぶところが多く、人生の後半をどう生きるかを考えるうえで大きなヒントをもらった。
読書を通して数千人の人生に触れてきたこと、寒流の時期をどう泳ぐかがその後の流れを変えること——こうした本の示唆は、これからの自分の生き方や生きがいを形づくるうえで、静かに背中を押してくれる。老いを恐れるのではなく、事実を知り、できることを選びながら生きていく。その姿勢を日々の生活の中で少しずつ実践していきたい。
1万冊を超える本を読んできた出口さんが、「老い」や「死」への漠然とした不安を、データと事実をもとに解きほぐしていく一冊。感情論ではなく、客観的な事実を通して、過度な恐れを手放し、自分らしく人生の終盤を生き抜くための“思考の道具”が示されている。
「1冊の本と向き合うことは、人に会うことと似ている」という指摘には深くうなずいた。読書によって、私はこれまで数千人もの人と出会ってきたことになる。そう考えると、静かな読書の時間が、実は豊かな“対話の時間”でもあったのだと気づかされ、うれしくなった。
● 108ページ
人に会う重要性―人は自分に見えない自分を映す
肩書で人を選ばない。人のつき合いを損得で図らない。面白いかどうかで会うかどうかを決める。
他人は自分の器に入っていない中身をまるごと一つ抱えて歩いている存在だ。その人が生きてきた年月、読んできたもの、味わってきた喜怒哀楽が、頭の中に詰まっている。会って話すのは、その詰まったものを少しだけもらう行為になる。1冊の本と向き合うのと似ている。
この箇所は、日々多くの人と接している自分の生活とも重なり、特に心に響いた。人と話すことで、自分では気づけない視点をもらえることがある。読書もまた、静かな形でそれを与えてくれる。出口さんの言葉によって、読書と人との出会いが一本の線でつながったように感じた。
● 128ページ
暖流と寒流。水温は自分で選べないが泳ぎ方は選べる
暖流と寒流は誰の人生にも来る。水温は選べなくても、腐って沈むのか、体を保って泳ぎ続けるのか泳ぎ方は選べる。運ではなく自分の裁量だ。
寒流を実際に経験してきた身として、この章は胸に迫るものがあった。
「やる気はあるのに場が与えられない」「任される仕事が軽く、力を使い切れない」——そうした時期は、どうしても自分の価値が揺らぎやすい。しかし出口さんは、それを“運の悪さ”ではなく「泳ぎ方を選ぶ時間」と捉える。
この視点は、過去の自分の経験を静かに肯定してくれるようで、読みながら少し肩の力が抜けた。
一方、暖流は運によって押し寄せる。仕事が次々と舞い込み、時間がいくらあっても足りない時期。人生の流れが変わる瞬間は、自分ではコントロールできない。
だからこそ、寒流の時期にどう泳ぐかが、後の暖流を受け止める力になるのだと感じた。
✦ 目次
はじめに 老いも死も「恐れるもの」ではない
第1章 衰える体と、どう付き合うか
第2章 それでも人は、死ぬまで成長できる
第3章 人生には、暖流と寒流がある―運とどう付き合うか
第4章 孤独でいい、孤立はするな
第5章 宇宙の歴史から、自分の死を眺めてみる
第6章 すべての人が支え合う社会をめざして
✦ 著者紹介
出口治明さん
1948年三重県生まれ。学校法人立命館顧問、立命館アジア太平洋大学(APU)名誉教授。
日本生命で国際業務を歴任後、2008年にライフネット生命を開業。2018年よりAPU学長を務め、2023年退任。歴史・読書・人間観察を軸にした著作多数。
