酒井順子 | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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「ひのえうま」と聞くと、つい“どんな馬の種類?”と尋ねたくなるが、もちろん干支の組み合わせの一つである。十干と十二支の最小公倍数である六十通りの干支のうち、今年は六十年ぶりの丙午(ひのえうま)にあたる。

 

丙午生まれの女性有名人には、秋篠宮妃紀子さま、小室佳代さん、藤島ジュリー景子さん、有森裕子さん、小谷実可子さん、君島十和子さん、RIKACOさん、渡辺美里さん、中村あゆみさん、小泉今日子さん、早見優さん、斉藤由貴さん、安田成美さん、鈴木保奈美さんなどがいる。並べてみると、どこか力強さや自由さを感じさせる顔ぶれだ。

 

「丙午の女は男を食い殺す」「丙午の年は火事が多い」といった迷信は、江戸時代の八百屋お七の逸話──恋しい男に会うために火事を起こし、死罪となった──が起源とされる。昭和41年(1966年)の丙午で出生率が低かった理由も、この迷信の根強さを思えば納得がいく。

 

本書では、1966年生まれの酒井順子さんが、寛文年間の1666年まで300年を60年刻みで遡り、史料・新聞・雑誌・小説・芝居などに残る「ひのえうま」関連のエピソードを丹念に拾い上げていく。江戸や明治の女性たちが、迷信の重圧から結婚や出産を諦め、時に絶望の果てに命を絶った事例も紹介される。

 

長く生き延びてきた偏見や迷信に縛られず、他人の意見に過度に左右されることなく、最終的には自分の意志で判断する──そんな姿勢の大切さを改めて考えさせられる一冊だった。

 

■目次

第一章 丙午に生まれて

第二章 昭和の丙午 その生き方

第三章 昭和の丙午 その前夜

第四章 昭和の丙午 その結果

第五章 明治の丙午 その結婚

第六章 明治の丙午 その地震と火事

第七章 弘化の丙午 その文明開化

第八章 天明の丙午 その“予感”

第九章 寛文の丙午 その炎

第十章 令和の丙午 その消失

丙午当事者鼎談

 「スケープホース」と「負け犬」

 (鈴木保奈美×吉川徹×酒井順子)

あとがき

 

■著者紹介

酒井順子さん

1966年東京生まれ。高校時代より雑誌『オリーブ』に寄稿。広告会社勤務を経てエッセイストとして活動。女性の生き方をテーマにした著作が多く、2003年刊『負け犬の遠吠え』はベストセラーとなり、講談社エッセイ賞・婦人公論文芸賞を受賞。「負け犬」は流行語にもなった。古典文学に関する著作も多く、『枕草子』現代語訳を手がける。