豊臣秀吉は、百姓の身分から関白へと上り詰めた稀有な人物である。
その右腕として支え続けた秀長が、もしもっと長生きしていたら。
秀長の耳の痛い進言を秀吉が受け止めていれば、中国明への侵攻も、秀次の切腹も、淀殿や秀頼の悲劇も避けられ、豊臣政権はもう少し延命できたのではないか。つい「たられば」で判官びいきの目を向けてしまう。
NHK大河ドラマ「豊臣兄弟」では、ちょうど清須会議のころが描かれている。
登場人物や時代背景を併せて学びながら視聴すると、番組をより深く楽しめ、歴史理解の助けにもなると感じる。
本書では、「墨俣一夜城」「石垣山一夜城」「中国大返し」「清須会議」など、通説として語られてきた出来事を一次・二次資料から丁寧に読み解き、真偽を検証していく。
著者の提示する解釈に触れると、こうした見方もあるのかと納得させられる。史料の緻密な読解と考察によって、これまでのイメージに埋もれていた事実が浮かび上がる一冊だ。
疑わしい伝承や後世の編纂物、想像の産物ではなく、敗者側の記録や中立的な書状など、信頼できる史料をもとに歴史を再構成していく歴史家や歴史学者の姿勢に共感する。
彼らには、史実に基づくエピソードから真実へ迫る説明をこれからも期待したい。
✦ 目次
はじめに
第1章 秀吉の出自と豊臣家の謎(秀吉・秀長の父母や兄弟姉妹にまつわる謎、秀吉は連雀商人だったのか?貧しかった若き日の秀吉は薪売りをしていた?一次史料に記された秀吉の出自とは?秀吉は天皇家の血筋につながっていたのか?秀吉には知られざる兄弟姉妹がいた?秀吉には指が六本あった?「猿」と呼ばれた秀吉は鼠にも似ていた?)
第2章 武将・秀吉の軍略と政略にまつわる謎(「一夜城」「水攻め」は本当にあったのか?「中国大返し」は実行可能なのか?秀吉は清須会議で三法師を擁立したのか?賎ヶ岳の戦いの「美濃大返し」は本当か?公家でもない秀吉が、なぜ関白になれたのか?)
第3章 天下人・豊臣兄弟の謎(「最高の補佐役」秀長が不祥事を起こしていた?秀長にはどんな家臣がいたのか?秀吉はなぜ養子・秀次を死に追いやったのか?秀吉は本気で朝鮮・明を征服しようとしていたのか?秀吉が行った数々の残酷な所業は本当か?秀吉は女性好きだったのか?)
おわりに
主要参考文献
著者等紹介
渡邊大門さん
1967年神奈川県生まれ。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役
