調査報道は社会を変える力を持つ。
本書は、戦後から2025年頃までに行われた数々の調査報道の中から、社会を動かした事例を取り上げ、その軌跡をたどる内容である。
著者は「ジャーナリズムとは報じられたくないことを報じることだ。それ以外は広報に過ぎない」と述べる。
公的機関の発表をそのまま伝える「発表報道」と異なり、隠された事実を取材し明るみに出す営みこそが「調査報道」である。
ウォーターゲート事件、リクルート事件、医学部入試の不正など、報道がなければ真実が表に出なかった可能性が高い事例は多い。
近年では、福岡県議会の正副議長選挙をめぐる現金授受問題が世間を騒がせている。現金を受け取っていないと主張する側と、封筒で渡したと語る側が対立し、事実は依然として不透明なままだ。どちらかが虚偽を述べているのか、あるいは別の構図があるのか。
こうした状況でこそ、報道機関が粘り強く取材し、膿を出す役割が期待されていると感じる。
これまでの調査報道の実績を振り返ると、ジャーナリストは国民が知りたい事実を掘り起こし、権力や組織の説明を鵜呑みにしない冷静な視点を提供してきた。
発表だけに依存せず、多角的に事実を検証するという点で、調査報道は民主社会に不可欠な営みだと改めて思わされる。
■ 目次
はじめに
第1章 日本初の潜入型調査報道 敗戦直後の岡山で[1945~]
第2章 調査報道のゆりかご時代 1950年代の挑戦[1950~]
第3章 高度成長期の矛盾 調査報道で明るみに出す[1960~]
第4章 1970年代の調査報道 黄金時代へ[1970~]
第5章 調査報道の黄金期 権力中枢に迫る[1980~]
第6章 社会の矛盾を映し出す数々の調査報道 繁栄の裏側で[1980~]
第7章 1990年代の調査報道 多様な展開の一方で「壁」も[1990~]
第8章 それでも社会は変えられる 調査報道の挑戦は続く[2000~]
第9章 「公文書の改ざん・廃棄、非開示」と調査報道[2000~]
おわりに
戦後80年 社会を動かした150の調査報道
■ 著者紹介
高田昌幸 さん
ジャーナリスト/東京都市大学教授。
北海道新聞・高知新聞で調査報道に携わり、北海道庁公費乱用問題や北海道警察裏金問題の取材で新聞協会賞・菊池寛賞などを受賞。現在は調査報道グループ「フロントラインプレス」代表。
